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追放された雑用係、如何にして最強に至ったのか?  作者: 藤原 智


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八話 悲報

 それから、四年の歳月が流れた。


 長いようでいて、振り返ればあっという間だった気もする。

 国を渡り、海を越え、見知らぬ街に辿り着いては働き、戦い、学び、また次の土地へ向かう。そんな日々を幾度となく繰り返すうちに、季節は何度も巡り、俺たちの姿も少しずつ変わっていった。


 背丈も、体つきも、旅立った頃とは違う。

 剣を握る手には固い皮が重なり、頬には風と陽に晒された旅人の色がついている。


 エリシアもまた、少女らしさを残しながら、それでも昔とは比べものにならないほど凛とした空気をまとっていた。


 そして何より変わったのは、俺たちの中身だった。

 旅立ったばかりの頃、俺たちは復讐のためだけに歩いていた。

 あの日の炎を忘れないために。

 奪われたものを取り返せないなら、せめて報いだけは与えるために。

 それが俺たちの全部だった。


 けれど、四年という時間は、少しずつ、確かに、その形を変えていった。

 エリシアと共に過ごす日々は、俺の胸の奥に凝り固まっていた復讐心を、知らぬ間に薄めていった。

 忘れたわけじゃない。

 捨てたわけでもない。

 それでも、以前のように、それだけが自分を動かす唯一の火ではなくなっていた。


 朝、目を覚ました時に隣にエリシアがいること。

 長い仕事を終えて宿に戻り、他愛もない話をしながら食事をとること。

 新しい剣術を覚えた時、真っ先に彼女へ見せたいと思うこと。

 傷を負った時、彼女が眉をひそめながら手当てしてくれること。

 そんな何気ない時間の一つ一つが、復讐とは別の熱を俺の中に灯していた。


 気づけば、俺は“魔王を討つために強くなる”のではなく、“エリシアを守るために強くなる”ようになっていた。


 もちろん、そのことを俺自身ははっきりと自覚していたわけじゃない。

 ただ、剣を握る理由が、いつの間にか少しずつ変わっていたのだ。

 危険な土地へ入る時は、まず彼女の立ち位置を確認する。

 戦いになれば、無意識に彼女を背に庇うような動きをしている。

 知らない街で不穏な気配を感じた時、最初に浮かぶのは自分の身より彼女のことだった。

 それを、俺はただの癖だと思っていた。

 旅の相棒として当然のことだと、そう考えていた。


 だが、エリシアだけは気づいていたのだと思う。

 俺が今も剣を学び、鍛え、血の滲むような修練を続けている理由が、もう昔とは違っていることを。

 彼女はそれを口にはしなかった。

 けれど、俺が誰かの前へ半歩出るたび、危険から彼女を遠ざけるように動くたび、ほんの少しだけ嬉しそうに笑うことがあった。

 その微かな表情の意味を、当時の俺はまだ深く考えなかった。

 ただ、そんなふうに笑う彼女を見るたび、胸の奥が静かに温かくなるだけだった。


 いつの日か、セレス達との約束を話してくれた事があった。

 きっと、エリシアにとっては、それが一つの答えだったのだろう。

 クロードとの約束を果たせたのだと。

 アルトが復讐心だけで剣を握るのではなく、誰かを守るために剣を握るようになったのだと。

 そしてそれはきっと、セレス先生の言葉への答えでもあった。


 復讐だけの人生ではなく、その先を生きる。

 誰かを愛し、誰かと共に歩む。

 そんな生き方を、少しずつでも選べるようになってきたのだと。


 もしあの先生が今の俺たちを見たなら、少しは安心してくれるのかもしれない。

 そんなことを、エリシアは時折、ひそかに思っていたのかもしれなかった。


 その日、俺たちは北方の小国にいた。


 石造りの家々が肩を寄せ合うように並ぶ、灰色の街だった。山から吹き下ろす風は冷たく、夏の終わりだというのに、朝晩は外套が欲しくなるほどだった。

 俺たちはその街で、数日だけ滞在し、港へ運び込まれる荷の仕分け仕事を請け負っていた。


 重い木箱を運び、伝票を照らし合わせ、倉庫へ積み上げるだけの単純な仕事だ。

 危険は少ないが、体力は使う。

 日銭を稼ぐにはちょうどよかった。

 昼を少し過ぎた頃、ようやく短い休憩が入った。

 俺は倉庫の裏手に腰を下ろし、水袋を傾ける。


 エリシアは少し離れた木陰で、同じように小さな休息を取っていた。


 その時だった。


 近くで荷運びをしていた男たちの会話が、不意に耳へ入ってきた。


「聞いたか」

「ああ、王国の勇者どもだろ」

「まさか、全滅とはなあ」


 その言葉に、俺の手が止まった。

 水袋の口から、一滴、石畳へ雫が落ちる。

 離れた場所にいたエリシアも、同じ言葉を拾ったのだろう。

 こちらを振り向いた顔が、目に見えて強張っていた。


「魔王城の近くでやられたって話だ」

「いや、城にも届かなかったとか何とか」

「どっちにしろ、勇者カイル一行は全員死んだって噂だぜ」


 男たちは、そこまで言うと大したことでもない雑談みたいに肩をすくめた。

 けれど、その何気ない口調が、かえって現実味を薄くしていた。

 俺は立ち上がる。


「今の話」


 思わず声をかけると、男たちは少し驚いた顔でこちらを見た。


「ん? ああ、噂だよ。南の方から来た商人が話してた」

「勇者一行が魔王軍にやられたってな」

「ま、どこまで本当かは知らんが」


 どこまで本当かは知らない。

 その一言に、かえって救われた気がした。

 俺は笑いそうになる。

 そんなはずがない、

 あの人たちが、そう簡単に死ぬはずがない。

 ましてや、全滅など。


「嘘だ」


 口から漏れた声は、自分でも驚くほど低かった。

 男たちは気まずそうに視線を逸らした。

 冗談のつもりだったわけではないのだろう。

 ただ、噂話をしていただけだ。

 それでも、聞き流せる内容ではなかった。


 視線を向けると、エリシアが立ち尽くしていた。

 顔から血の気が引いている。

 呆然としたまま、まるで今の言葉の意味を受け止めきれていないようだった。


「エリシア」


 名前を呼ぶと、彼女はゆっくりとこちらを見る。


「アルト」


 その声は小さく、頼りなかった。


「そんな」


 続きを言えず、唇が震えている。

 俺は強く首を振った。


「信じるな」


 言い聞かせるように、はっきりと言う。


「そんなはずない。あの人たちが死ぬわけないだろ」


 言葉にしているのはエリシアに向けてなのか、それとも自分に向けてなのか、わからなかった。


 ただ、信じられなかった。

 信じたくなかった。

 あの人たちは、俺たちが追い続けてきた背中だ。

 いつか追いつくと誓った相手だ。

 そんな終わり方をするはずがない。

 だが、否定すればするほど、胸の奥に嫌な冷たさが広がっていく。


 噂は噂だ。

 けれど、火のないところに煙は立たない。

 もし、万が一。


 そこまで考えた瞬間、喉の奥がひどく乾いた。

 エリシアが小さく息を吸う。


「確かめないと」


 掠れた声だった。

 俺は黙って頷く。

 同じことを考えていた。

 こんな中途半端な噂のまま、旅を続けることなどできない。

 本当か嘘か、自分たちの目で確かめなければならない。


 俺たちはその日の仕事を切り上げると、宿へ戻って荷をまとめた。

 必要なものだけを鞄へ詰め、余計な荷は置いていく。

 いつもより手が止まる。

 無駄のない作業のはずなのに、どこか現実感が薄い。


 エリシアは何も言わなかった。

 けれど、指先の動きだけが少し硬い。

 俺もまた、必要以上に口を開かなかった。

 今は変な慰めも、軽い言葉も要らない。

 欲しいのは事実だけだった。


 宿の主人に短く事情を告げ、俺たちはその街を出る。

 北方の冷たい風が、外套の裾を揺らした。

 進むべき道は一つしかなかった。

 俺たちは、王国へ戻ることにした。 


 数日前、王都では、見張りの兵たちが、奇妙な報せを城へ持ち込んだ。

 飛行する魔物が一体、王城の上空をかすめるように飛び、そのまま何かを落として去っていったのだという。


 挑発か。

 それとも見せしめか。


 落とされたものは、すぐに王のもとへ届けられた。

 それは、兜だった。 


 左のこめかみから頭頂へ走る、二本の赤い線。

 その兜には、乾ききっていない血が大量にこびりついていた。

 王はしばらく何も言えなかったという。


 血も乾いた頃に慌ただしく謁見の間へ駆け込んできた兵士が告げる。


「陛下、アルト殿とエリシア殿が、王都へ戻られました」


 その名に、王はゆっくり顔を上げた。

 今や俺たちは、ほんの少しばかりだが名を知られるようになっていた。

 各地で魔物を退け、護衛を成し、術と剣で成果を残してきた。

 かつて見送っただけの子どもではないと、王にも兵にも伝わる程度には。

 王は一度だけ兜へ目をやると、重く言った。


「通せ」

 

 王都へ入った時、街の空気がどこかおかしいことに、俺たちはすぐ気づいた。


 活気がないわけではない。

 人は行き交い、商人は声を張り上げ、兵は巡回している。

 それでも、何かが沈んでいた。

 噂が街の底に沈殿しているような、重い気配だった。


 兵士が俺達の姿を見るや、兵は顔色を変え声をかけてきた。

 それからすぐに奥へ走り、戻ってきた時には、俺たちは王に会う様に言い渡された。


 エリシアがちらりと俺を見る。

 俺も頷く。

 嫌な予感は、もう隠しようがなかった。

 案内された謁見の間は、以前よりもずっと広く、ずっと冷たく感じられた。

 王座の前まで進み、俺たちは頭を垂れる。


「顔を上げよ」


 王の声は、いつもより掠れて聞こえた。

 俺たちが顔を上げると、王はしばらく何も言わなかった。

 ただ、その視線はひどく重かった。


「戻ったか」

「はっ」


 短く答える。

 だが、その後が続かない。

 王が言葉を選んでいるのがわかった。


 嫌な汗が背を伝う。


 やがて王は、傍らに控えていた兵に目配せした。

 兵が、布に包まれた何かを両手で抱えて前へ出る。

 その歩みの遅さが、かえって胸を締めつけた。


 布が外される。


 現れたものを見た瞬間、息が止まった。

 兜だった。

 赤い二本線、見間違えようがない。

 カイルの兜だった。

 黒ずんだ血が、べったりと付着していた。

 乾いた部分と、生々しく濃い色を残した部分が混じり合い、金属の表面にこびりついている。


 見た瞬間、膝から力が抜けた。

 声にならない息が漏れる。

 隣で、エリシアが崩れ落ちた。

 俺も同じだった。

 石の床へ膝をつく。


 目を逸らしたいのに、逸らせない。

 これは、噂ではない。

 誰かの無責任な与太話ではない。

 目の前にある。

 あの人のものが。

 あの人の血が。


 喉が潰れたみたいな音しか出なかった。

 胸の奥から何かが込み上げてきて、うまく息ができない。


 エリシアは口元を押さえたまま、おえつを漏らしていた。


 肩が震えている。

 涙が止まらない。

 俺も同じだった。

 信じたくなかった。

 だが、信じないではいられなかった。


 王は俺たちを見下ろしていた。

 いや、見下ろしてはいなかった。

 その場にいる誰よりも深く、落胆していたのだと思う。

 俺たちの崩れ方を見て、確信してしまったのだろう。


 この兜は本物であり、そこに付いた血もまた、疑いようのないものなのだと。

 謁見の間には、誰の嗚咽も、やけに大きく響いた。

 

 その夜、俺たちは王城の一室を与えられた。

 以前、保護されたばかりの頃に世話になった部屋より、少し広く、少し静かな部屋だった。

 けれど、どれだけ整っていても、どれだけ寝台が柔らかくても、心が休まることはなかった。


 泣き続けていた。

 もう涙など出ないと思っても、次から次へと溢れてくる。


 ガレスの笑い声。

 ソフィアの困ったような微笑み。

 セレスの静かな目。

 クロードの低い声。


 あの人たちの顔が、次々に浮かんでは消える。

 追いつくのだと思っていた。

 いつか並び立つのだと信じていた。

 あの背中を、ずっと追いかけてきた。


 それなのに。

 その先に待っていたのが、あんな形の別れだなんて、誰が思う。

 窓の外はとうに暗くなっていた。

 部屋の中には、小さな灯りが一つだけ揺れている。

 向かいの寝台で、エリシアが顔を伏せたまま泣いていた。


 俺は何度も口を開き、閉じた。

 喉がひりつく。

 胸の奥が痛い。

 でも、聞かなければいけない気がした。

 もう、逃げてはいけない気がした。


「エリシア」


 掠れた声で呼ぶと、彼女がゆっくり顔を上げた。

 泣き腫らした目が赤い。

 俺は自分の手を見つめたまま、恐る恐る言った。


「俺と一緒に死ぬのは、嫌か?」


 その瞬間、エリシアの動きが止まった。

 目を見開いたまま、何を言われたのかわからないような顔をしている。

 たぶん、本当に最初は理解できなかったのだろう。


 沈黙が落ちる。


 自分でも何を言っているのか、半分わかっていなかった。

 けれど、心の底では、もう決まっていたのかもしれない。

 このまま終わるわけにはいかない。

 あの人たちの無念を、このままにはできない。

 そして、その先に待つものが死だとしても。

 俺はもう、一人で死ぬ気はなかった。


 エリシアはしばらく瞬きもせずに俺を見つめていたが、やがて、ふっと笑った。


 泣きはらした顔のまま。

 それでも、ひどく綺麗な笑顔だった。


 そして、そっと自分の人差し指を持ち上げる。

 そこには、あの日の指輪があった。

 家族の名を刻み、復讐を誓ってはめた指輪。


 俺もまた、自分の人差し指を見せる。

 同じように、父と母の名を刻んだ指輪が、灯りの下で鈍く光っていた。


 エリシアは頷く。


 その小さな動きだけで、言葉以上のものが伝わった気がした。


 俺は立ち上がり、それから、彼女の前まで歩み寄った。

 膝をつく。

 ちゃんとした指輪なんて、まだない。

 花もない。

 祝福する人もいない。

 それでも、今、言わなければいけないと思った。


「ちゃんとした指輪はないけど」


 自分でも情けないと思うほど、声が震えていた。

 一度、深く息を吸う。


「俺と、結婚してくれ」


 エリシアの目が大きく見開かれた。

 次の瞬間、彼女は泣き笑いみたいな顔になって、俺へ飛びついてきた。


「うん!」


 その声は涙で滲んでいた。

 けれど、間違いなく幸福の色をしていた。

 細い腕が、強く俺の首に回る。

 俺もまた、彼女を抱きしめ返した。

 悲しみの底で。

 絶望の真ん中で。

 それでも確かに、俺たちは互いを選んだのだと思った。

 

 翌朝。

 俺たちは王に面会を願い出た。

 通された謁見の間は、昨日と同じ場所のはずなのに、まるで別の場所みたいに見えた。

 もう迷いはなかったからだ。

 俺とエリシアは並んで王の前に立つ。


「陛下」


 俺は頭を垂れ、はっきりと言った。


「俺たちに、行かせてください」


 王は黙っている。


「カイルたちの、あの人たちの無念を晴らしたい」


 言葉にした瞬間、胸の奥が焼けるように痛んだ。

 けれど、声は震えなかった。


「たとえ命を落とすことになっても、俺たちは行きます」


 隣で、エリシアも静かに頭を下げる。


「どうか、お許しください」


 王は長いこと、何も言わなかった。

 その沈黙の重さに、広い間がさらに広く感じられる。

 やがて、王は深く息を吐いた。


「止めても、行くのだろうな」

「はい」

「ならば、もはや余が縛ることもできまい」


 その声には、諦めだけではない何かがあった。

 覚悟に対する、王としての応答。

 そんな響きだった。


「行くがよい」


 短い言葉だった。


「必ず此処に戻ってこい」


 俺たちは深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


 礼を述べ、謁見の間を後にする。

 その足で、俺たちは城に置いていた荷をすべてまとめた。


 もう戻らないかもしれない。

 そんな思いがよぎらなかったわけじゃない。

 それでも、立ち止まる理由にはならなかった。


 城を出た俺たちは、王都の通りをまっすぐ進み、やがて一軒の店の前で足を止めた。


 あの時の貴金属店だった。


 あの日。

 寮へ入る前、俺たちが指輪を買った店だ。

 扉を押して中へ入ると、覚えている匂いがした。

 磨かれた金属と、古い木の匂い。

 店主は年をとっていたが、店そのものは何も変わっていないように思えた。


「指輪を」


 俺が言うと、店主は静かに頷いた。

 選んだのは、あの時と同じ、飾り気のない簡素な指輪だった。


 高価ではない。

 今度は、表側に文字を掘ってもらった。

 俺は自分の名を。

 エリシアも、自分の名を。

 互いが、互いの名前を身につけるために。

 指輪を受け取り、店を出る。


 向かったのは、人通りの少ないあの路地裏だった。

 まだ若かった俺たちが、復讐を誓い合い、人差し指に指輪をはめた場所。


 陽の射し方まで、どこかあの日に似ていた。

 俺たちは向かい合う。

 あの時は自分で、自分の指にはめた。

 けれど、今度は違う。


「左手」


 小さく言うと、エリシアは少し照れたように頷いた。

 俺は彼女の左手をとる。

 何度も触れてきた手なのに、今日は妙に緊張した。

 細くて、温かい指。

 その薬指に、ゆっくりと指輪をはめる。

 彼女も同じように、俺の左手を取った。

 少しだけ手が震えていたが、指輪はまっすぐ薬指へおさまった。

 お互いの名を刻んだ指輪が、淡く光る。

 しばらく、どちらも何も言えなかった。

 やがて、エリシアがぽつりと呟く。


「私たちの人生、復讐から逃れられないのかしら」


 その声には、疲れも、悲しみも、諦めも、全部少しずつ混じっていた。

 俺は彼女を見て、ふっと笑った。


「さあな」


 昔なら、もっと鋭く答えていたかもしれない。

 けれど今は、そんなふうには思えなかった。


「でも、逃れられなくても」


 一歩、彼女へ近づく。


「一人じゃない」


 エリシアがゆっくり目を上げる。

 その瞳に映る自分の顔は、きっと昔より少しだけ穏やかだった。

 俺たちはそのまま路地を出る。


 王都の空は高く、どこまでも青かった。

 懐かしい街並みを背に、俺たちは歩き出す。

 もう、戻れない道だ。

 それはわかっていた。

 それでも、隣にエリシアがいる。

 なら、それでいいと思えた。

 俺たちは王国を後にした。


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