大阪代表 夜の作戦会議④
続いて、宮城代表戦の席順もなかなか難航する。基本的にメンバーは荻野から渡辺に変わるだけだが、初戦で山本か森田のC級2人の調子が悪かった場合に六将の高山、八将の才木を入れることも考えた。ちなみに光輝と仙崎はよっぽどのアクシデントがない限りは予選リーグではまず外さない。
宮城県チームは主将の上村望をはじめ、副将の佐々木大喜もA級で、さらにB級も4名と先に述べた通りこのグループ内では最も戦力が充実している。そして、ここでも最悪なのは相手エースの上村を仙崎に当てられるケースだ。
『ここは当日の初戦の試合を見て、決めてほしいの。端に座るとしても奥の方に座るタイプなのか、読手に近い手前に座るタイプなのか……』
「そこは私が初戦で見ておきますよ。上村君や佐々木君がどういう風に団体戦を取ってるのかも」
と、金城大付の渡辺が得意げに言う。実際、偵察は下級生時代によくやっていたそうでこのような役割はお手の物といったところだ。
『仙崎君は最悪、佐々木君に当たっても展開によってはいけるんじゃないかと思うの。B級は4人いるけど、強さはかなりピンキリみたいだから、山本さん、森田さん、あるいは渡辺さんまで勝てるチャンスはあると思う』
「え、私もですか?」
てっきり自分は上村か佐々木相手の捨て駒役だと思っていた渡辺は虚を突かれたような反応を見せる。
『たしかに渡辺さんを上村君に当てるのが理想的ではあるけど、どちらにせよ、誰かが一つは格上相手に勝たなきゃいけないことには変わりないから、渡辺さんもB級の人と当たった場合は勝つつもりで。それに2戦目は殿山さんが読んでくれるから、それは絶対にうちに有利に働くはずよ』
そうなのだ。読手コンクールも兼ねている予選リーグは2戦目が殿山の担当なのである。強化練習の他に読みのクセも慣れている点は大きい。
『みーくんはできれば、佐々木君に当たるのがベストかな……』
「上村は一度、勝ってるけど、次も勝てるかって言われると微妙なところだなぁ……」
『ただ、相手はみーくんにA級2人を当てないようにしてくると思う』
「え、なんで? 上村は俺と当たりたいとか言ってたし……」
「いや、考えてみればわかるやろ。うちが俺と光輝で2勝するのを計算してるみたいにあっちもA級2人で2勝を計算に入れてるんや。そしたら、2勝を計算しやすいB級以下に当てる方が得策やろ?」
「あ、そっか」
光輝は団体戦の経験がないのもそうだが、今回、あまりにも自分と対戦したい人が多く、その圧に毒されたか、エース格の選手は自分と対決するものなのだと勝手に解釈していた。
『パフォーマンスか本音かはわからないけど、チーム方針としては仙崎君の言うとおりね。席順は初戦と同じ考え方でいいと思うんだけど、上村君の位置によってはみーくんを1番か2番席に配置ね』
「りょーかい」
宮城代表との試合については仮のオーダーを組み、当日に修正していく方向で話がまとまった。
3戦目の山口代表は一色千里以外はC級以下ということもあり、正直、予選リーグ突破か敗退が決まっていれば、ここまで出てないメンバー優先でいいんじゃないかという話だった。
「あいつ、俺と取りたい執念がすごいんだよなぁ……」
光輝はげんなりしながらつぶやく。あいつとはもちろん、千里のことだ。
『もし、当たったとしてもちゃんと受けてあげなさいよ』
「えー、やだなー」
『なによ。高校選手権では一色さんとあんなに楽しそうに取ってたのに。ふーんだ!』
「それはそれ、これはこれ。ていうか、なんで、怒ってんだよ」
結姫は少しムッとした様子で言うが、光輝はなぜ彼女が機嫌が悪くなったのかわからない。ちなみに周りはきょうだい喧嘩始まったわ、みたいな感じで生暖かい目で見ていた。
3戦目はすぐに話がまとまり、当日まで判断保留の分も含めて作戦会議はとりあえず終わった。
「結姫さん、遅くにありがとうございました!」
『ううん。こっちこそ、遅くまでごめんね。みんなも今夜は早く休んで、明日に備えてね。みーくん、ちゃんと、夜更かししないで早く寝るのよ』
「誰かさんが朝早くに起こしたせいで今すぐ寝れるっつーの」
『じゃあ、みんな、おやすみなさ~い』
「おやすみなさ~い!」
女子一同がおやすみの挨拶を言って、光輝がビデオ通話を切った。
光輝、仙崎、後藤先生の3人は女子の大部屋を出て、自室に戻り、すぐに就寝の準備に入り、それぞれベッドに潜り込んで、明日に備えて眠りに就いたが、緊張と重圧からか思いのほか寝つきが悪く、ぐっすりとはいかなかった。




