大阪代表 夜の作戦会議③
『それに伊藤君にもみーくんでいけると安易に考えるのも危険ね。私も最近、気づいたけど、みーくんって、出だし悪いタイプだし、読みの相性でも調子が左右されるタイプなのよ。それはこの前、みーくんに話したと思うけど……』
さすがに光輝のことをよくわかってるだけあって、結姫がつらつらと懸念点を述べていく。会場の読みの環境や慣れない読手のタイプについては以前にも本人に言った通りだ。
「関係ねーな。相手がA級だろうが、E級だろうが、自分の持ってる全力を出して、最終的に勝てればいい。それだけだろ?」
光輝は片膝を立て、もう片方の足を伸ばす姿勢で座りながら、澄ました顔で言ってのける。ただ、声のトーンや指を膝の上でとんとんと細かく動かす仕草から少し気が立っているのが見て取れた。
『まぁ、普段通りにできれば、私の杞憂で終わるかなって思ってるんだけどね。ただ、これだけの大舞台だと、その普段通りにできない可能性もあるから、そういうことも考えておいてってことね』
「花山さん、席順やメンバーは具体的にどうするんすか?」
仙崎が関西弁のイントネーションを効かせて、尋ねた。
『初戦だし、主将と副将の勝ち星は万一、勝敗が並んだ場合の順位に関係するから、みーくんと仙崎君には絶対、出てもらうとして、山本さんと森田さんのC級二人で手堅くいきたいところね。残りの一人は渡辺さんか荻野さんがいいんだけど……』
「この前の強化練習の調子見てると、渡辺がよさそうやけど……」
『個人的に渡辺さんは爆発力がある反面、暗記が残ることが多いから、できれば2戦目の宮城県チームにとっておいた方がいいかなと思ってるの。なんだかんだ言っても、宮城県チームの試合が正念場になるでしょうし。ただ、そこが初戦っていうのは気になるところだけど……』
「それなら、荻野で決まりか」
『じゃあ、初戦はみーくん、仙崎君、山本さん、森田さん、荻野さんの5人ね』
そして、初戦の北海道代表戦に出場する5人が決まった。続いて、席順を決める。1番から5番席まであるが、その中に誰を入れていくかを考えていく作業に入る。
「たぶんですけど、俺が伊藤に当たるのが最悪の想定ですよね?」
と、仙崎が自身でシミュレートしたことを結姫に尋ねる。
『うん、そうね。まあ、当たっても他で勝てれば問題ないんだけど、けっこう際どい勝負になるんじゃないかな。伊藤君はみーくんか荻野さんに当てることができればいいんだけど……』
「なんで、俺か荻野さんなの?」
『言い方は悪いけど、荻野さんが伊藤君に当たれば捨て駒になる分、他の人の勝率が上がるって感じかな。実際に伊藤君のかるたを見たわけじゃないけど、みーくんなら、たぶん、普通にやれば勝てると思うから、そんなに変わらないかなとは思うけど』
なるほどと光輝は納得し、団体戦ってそういうことなんだなと今更になって実感した。
『それで、伊藤君のいる札幌北稜が今年の近江の団体戦出た時の席順見てみたら、大体、奥にいることが多いの。4番か5番席』
「1番席はない感じですか?」
『今回は混成チームだから、絶対とは言い切れないけど、1番か2番席の可能性は低いと思う。真ん中の3番席はまずないわね。だから、仙崎君は全体を見渡せて、周りに声もかけれる真ん中の3番がいいと思う』
「じゃあ、春日山で一緒にやってる荻野も近くに付けた方がいいっすね。さっきの花山さんの法則通りなら、伊藤が配置される可能性が高い4番がええな」
『じゃあ、みーくんは奥の5番席ね。ここも伊藤君が来る可能性が高いから』
このように競技者としての経験値が高い結姫と春日山で団体戦経験豊富な仙崎でとんとん拍子で話が進んでいく。残ったところに1番席に森田、2番席に山本を置くことにした。




