大阪代表 夜の作戦会議①
ホテルのロビーで千里との歓談を終えてから、光輝はミーティングが行われる女子部屋に向かった。
コンプライアンス的に女子部屋で密室でミーティングを行うのは気が引ける面もあるが、広々とした和室で座る位置に困らない点が大きかった。男子部屋も個人単位では広いが、床面積が狭く、10人規模で集まるには向かない。
光輝は部屋の前に立ち、ドンドン、ドンドンとノックをする。しばらくして、金城大付の渡辺がドアを開けて、出迎えてくれる。
「ごめん、遅くなった!」
光輝が一声あげて、部屋に入ると、そこには針のむしろのように正座して座り込んでいる仙崎と、それを囲む仁王立ちした女子グループ。光輝はなにかトラウマのようなものが蘇るが……
「こ、これは何事で、ございましょうか?」
思わず、へりくだったように尋ねる。
「聞いてよ、四条君! 仙崎君ってば、他県の男子連中とつるんで女風呂覗こうとしてたのよ!」
と、事の経緯を少しムッとした感じで言うのは桜女の山本渚。主に主導してたのは滋賀の百合澤と京都の杉本だ。ノリでついていき、犯行現場を見つかってしまった仙崎はご愁傷様としか言いようがないなと光輝は思った。
百合澤と杉本もチームでは女子の比率が多めで男は肩身が狭いみたいだから、今頃、立つ瀬がないところだろう。
(さっき、ロビーから露天風呂、覗けるところを見つけたことは黙っておくか…………)
これは墓場に持っていく話にしよう、と光輝は胸にしまい込んだ。
「とりあえず、仙崎先輩には盗撮してたかどうか調べるのに、スマホの中身を見させてもらいました!」
そう元気に言うのは春日山の後輩にあたる2年生の荻野。これで覗きは結局、未遂でお咎めなしということになったようだが、その代償がスマホの画像の中身を全女子に見せられてしまうという羞恥プレイ。
光輝は直接の実行犯ではなかったが、あの後、偶然にも千里に見つかってしまったので、一歩、間違えれば我が身だったと思うと、ゾッとした。それこそ、光輝のスマホの写真アプリの中には高校生が閲覧するにはふさわしくない代物が1000枚以上はある。
光輝は今の仙崎を見て、スマホの『お宝』と書かれたアルバムのファイルをこの総文祭の期間中は一律で非表示にすることにした。
そして、解放された仙崎も加えて、予選リーグの他府県の代表チーム相手に誰を選んで、どの席順にするかの作戦ミーティングが行われる。ここにいるメンバーの他に光輝はRIMEのビデオ通話を起動して、結姫につないで参加してもらうことにした。
『みんなー、元気―?』
「は~~~い、元気でーす!!」
結姫の呼びかけに元気よく答える女子陣。一方でやけに情けない表情を見せているのが仙崎と光輝の男二人である。
『なんか、男の子たちが元気ないように見えるんだけど……』
「き、気のせいだよ! ちょっと、疲れてるだけだって! 俺なんて、朝早かったしさ……」
「なんで、四条さんが慌ててるんすか?」
光輝があたふたした様子で言うと、森田が疑問に感じて言う。それを光輝は「しぃっ!」と人差し指を口に当てて、静かにと促す。その様子を結姫はきょとんとして見ていたが、特に気にしてはなさそう。
『ごめんね、みーくん。今日、朝早かったもんね』
思えば、朝練に付き合った結姫も昼間にレポート提出のために大学に向かい、夕方に塾講師のバイトもこなすというハードスケジュールである。
それにも関らず、満面の笑みでハキハキとしたトーンで言うものだから、『この人、なんで、こんな元気なんだ?』って一同が思った。
『今日はみーくん、早めに寝ないとだから、さくっと済ませちゃおっか』
結姫がそう言うと、本格的に作戦ミーティングがスタート。




