総文祭 開会セレモニー&交流会①
ホール内の体育館のフローリングの上にはそのスペースを埋め尽くす柔道畳が敷かれていた。いかにも、この後、かるたの大会の会場になるんだなというのがこの場にいる者には伝わった。
そして、それぞれ、都道府県の名前が書かれたプラカードのある場所に将順に座っていき、準備が整い、時間になったところで開会セレモニーが始まった。まず、はじめに全国高等学校文化連盟の小倉百人一首かるた部門の会長の挨拶から始まり、続いて、生徒実行委員長の仲田恵太の挨拶が始まった。
「全国のかるたを愛する高校生の皆さん、観戦にいらっしゃった方々、ようこそ、この清流の国・岐阜県長良川レインボードームへお越しくださいました! 運営委員一同、心より歓迎いたします!」
明るい表情でハキハキとしゃべる仲田の歓迎の挨拶は何百回とスピーチを練習したのであろうが、それ以上に心から歓迎の熱い思いが伝わってくる。
「運営委員会一同、この3日間、大会運営に全力を尽くし、今大会を皆様に楽しんでいただこうと燃えております! 本競技は試合なので、勝負に勝つことをめざすのはもちろん大切ですが、それだけでなく、なによりもこの大会を通じて、同じ百人一首かるたに励むものとして全国に友好の輪を広げ、一人でも多くの友達を作ってほしいと願うのです。私も47都道府県、すべてに友達を作りたいと強く、強く思っていますので、皆さんも気軽に声を掛け合いましょう! それが今大会の成功につながると信じています!」
この仲田の挨拶を聞いて、光輝をはじめ、大阪代表チームのメンバーは強化練習最終日で結姫が口にしたことを思い返していた。
『私も含めて、みんな、ライバルである前にかるたという競技に向き合う、同じ志を持った仲間です! そんなかげがえのない仲間に出会えたら、きっと世界が広がります。私はそれが結果を出すことよりも大事なことだと思っています』
そんな言葉を思い返した光輝は「やっぱ、ゆき姉にはかなわねーよなー」とほくそ笑んで、仲田の開会の挨拶を聞いていた。
大方の説明や役員の紹介などが終われば、交流会が開催され、その後、今大会の抽選に入るようだ。
実は参加者には事前に岐阜の名物や名所が書かれたカードが配られていたのだが、どうもそのカードを持った者同士でチーム分けを行って、自己紹介の時間やチーム対抗でゆるめのゲーム大会などを行うようだ。
さて、光輝が持っていたカードは鳥みたいなものが描かれていた。
「なんじゃ、こりゃ?」
長良川の鵜飼の鵜なのだが、光輝は漢字が読めず、とりあえず鳥としか認識できなかった。
「鳥のチームはっと…………あっ、ここかな」
光輝がカードの絵柄を役員の人に見せると、「これ、鵜飼の鵜なんです」って言われて、「あー、なるほど」という顔をして、鵜グループの集団に混ざった。すでに合流している選手らと軽く会釈する。
「では、皆さん、それぞれのチームに集まったようなので、ここからはしばらくグループ内で自己紹介をしてもらおうと思います。皆さん、どんどん話しかけていきましょうね!」
仲田がそのように言うと、それぞれ、自己紹介タイムが始まった。
光輝のところは10人グループなのだが、お隣さんの京都や北は青森、南は宮崎と東西南北、本当に日本各地から集まっているのを実感する。
適当に時計回りの順でそれぞれ、自己紹介していき、ついに光輝の番が回ってくる。
「ええと……大阪代表の翔国高校の四条光輝です。みなさん、よろしくお願いします」
と、無難な挨拶で済ますが、この名を知ってしまったからには波風立たずとはならず……
「えー! 高校選手権でクイーンに勝った四条君ですかー!?」
「マジですか!? すごーい、本物―!!」
「どうやって、勝ったんですか! なにか、作戦とか、練習法は!?」
「すごーい! 背高い、ほっそい、スタイルいい!!」
100回ぐらいは聞いたであろう質問も多かったが、それ以外のことに対する質問攻めも多く、光輝としてはこの上ない自己紹介となった。




