総文祭本番 岐阜へ出発!②
名古屋に到着し、在来線に乗り換えて、一般客に混ざりながら移動する。そして、岐阜駅に到着すると、合間に昼食の時間が設けられた。昼食後、主催者が用意したバスに乗車し、長良川レインボードームへと向かった。
会場に到着すると、後藤先生が受付に行き、エントリーを済ませる。この後、開会セレモニーと交流会のイベントが用意されている。それまでは大きく離れない範囲で思い思いに待ち時間を過ごす。
光輝は新幹線とバスの車内でひと眠りしたおかげで寝不足の状態がだいぶ、回復していた。今は施設内にあった自販機で購入した眠気覚ましの缶コーヒーをすすりつつ、スマホを眺め、ソシャゲのミッションを消化したり、SNSをチェックしていた。
「見つけた…………っ!」
その光輝を視界に捉えた少女がニヤリと笑みを浮かべ、思わず声を発し、その気配に微塵も気づいていなさそうな光輝の背後へと忍び寄り、ばっと両手で光輝の視界を塞ぐ。突然、視界が塞がれた光輝はビクッと大層、驚く。
「だ~れだ?」
「びっくりしたー…………その声、千里か」
「せいか~い♪」
そう言って、千里が手を放し、光輝の視界が開け、後ろを振り返ると、そこにはしたり顔をした千里がいた。だが、アイドル並の容姿の彼女はそんな顔でさえ整っている。
「びっくりした~? ドッキリ大成功~! ぶいっ!」
千里はご機嫌な様子で両手を上げて、くるりと回ってからVサインをつくる謎ムーブをする。光輝はそんな彼女を見て、相変わらずつかみどころのない女だなーとペースを持っていかれる。
「そういえば、右手のケガ、大丈夫?」
そう言うと、一転してトーンを下げる。
「うん、全然、大丈夫。だから、千里は何も気に病む必要はないって」
「でも……でも……やっぱり、ごめんねって、ずっと言いたかったの」
「俺は気にしてないから、いいよ」
「それじゃ、あたしの気が済まないの! 改めて言うね、ごめん…………」
「じゃあ、ありがたく気持ちだけは受け取っておくよ。これでチャラだぞ」
光輝がそう言うと、千里は安堵の表情を浮かべる。
そして、千里は光輝が飲んでる缶コーヒー、というか缶の上部が被さるように鷲掴みにしている手を見ていた。
「何、飲んでるの?」
「見りゃわかるだろ? 缶コーヒー」
光輝はそう言いながら、缶を被さるように持ちながら、すでに開いているプルタブを人差し指でぐりぐりと引っ張っていた。
「おいしい?」
「うーん…………正直、あまり、おいしくはない」
「おいしくないのに飲んでるのー? なんで?」
「うーん、なんとなく、気分に浸りたいから?」
「アハハハハハ! なにそれ、四条くん、やっぱり、おもしろ~い!!」
何が受けたのか、千里は手を叩いて、ケラケラと笑いながら言った。そんな千里を見て、光輝はやれやれと肩をすくめる。思えば、千里を相手にすると、こういう振り回されるようなやり取りが目立つな、と光輝が思っていると、館内にチャイムが響き渡る。
『開会セレモニーの準備ができました。参加者のみなさんはホールに集合してください』
このような放送が流れだして、館内の人の動きが慌ただしくなる。
「おっ、始まるんだな」
光輝がそう言って、残った缶コーヒーの中身をぐいっと飲み干し、空き缶をリサイクルボックスに投げ入れる。カコンっと景気のいい音が鳴った。
「あたしも行かなきゃだね」
千里もそう言って、ゆっくりとホールに向かって歩き出す。
「ふふふっす。今日の抽選会、楽しみだねー」
と、千里が不敵というか不気味な笑みを浮かべて言う。
「勘弁。そういうフラグ立てはしたくないんだがなー」
もう、すでに試合の駆け引きは始まっているのか。開会セレモニーが波乱の展開の始まりになるのだろうか。




