総文祭本番 岐阜へ出発!①
総文祭こと、全国高等学校総合文化祭のかるた部門に出場する光輝は集合場所である新幹線の新大阪駅にいた。開催場所は岐阜だが、一旦、名古屋まで出る必要があるため、新幹線の駅である新大阪駅に一旦、集合となった。
「ふあ~、ねむた…………」
光輝があくびをしつつ、目をこすりながら、つぶやく。
「光輝、お前、めっちゃ眠たそうやなー。昨日、寝れんかったんか?」
「いや、朝がいつもより早かっただけだよ……」
午前10時に集合なので、普段の大会や通学に比べれば、まだ朝はゆったり目のスケジュール。にも関らず、光輝はいつもよりも早い起床となった。
「ゆき姉が寝かせてくれなくてさ」
この一見すると、光輝の爆弾発言に女子たちにぴしゃりと電撃が走った。だが、光輝だけでなく、結姫とも3日間、親睦と理解を深めた仙崎、森田は動じなかった。
「花山さん、光輝が朝起きれないか、心配で起こしに来たんやろ? うらやましいやつやなー」
「それで済むなら、どれだけよかったか……」
一部の人に誤解を与えているようなので、全員に向けて、光輝が事の顛末を話す。
***
時は遡ること、光輝の家、6:00AM。
ブ~~~! ブ~~~!
と、ベッドの上に置いてあるスマホのバイブが作動し、光輝が目を覚ました。
「もう、こんな時間か…………って、あれ?」
眠気眼でバイブを止めようとスマホを手に取ると、それは8時に設定していたアラームではなく、電話の着信だった。スマホの液晶に映った着信者名には「ゆき姉」という文字。
『あ、みーくん、寝てたー?』
「…………今、何時だと思ってんだよ…………」
明らかに寝起きの不機嫌なテンションで発する光輝。
『今から、うちの離れに来て! 朝練するよー!』
「………………なんですと?」
『今晩、みーくんと取れないし、朝に取っちゃおうかなって』
正直、すぐに二度寝を決めたいが、どうせ家の合鍵を持って部屋に押しかけて無理やり起こしに来るから、無駄だろうと思い、光輝は眠い目をこすりつつも渋々と身支度を速攻で済ませて、花山邸の離れへ向かった。
そして、結姫と一試合取ったのだった。ただでさえ、出だしが悪く、寝起きで頭が目覚めきっていない光輝は序盤からリードを奪われ、8枚差で敗れた。
***
「………………」
その話を聞いた仙崎をはじめ、先ほどは浮いた話を期待していた女子メンバーも若干、引いていた。
「え、四条さん、強化練習の時も帰ってから結姫さんと取ってたっしょ?」
森田が呆れたような顔で聞いてくる。
最初は花山さんと呼んでいた森田も強化練習で打ち解けたのか、下の名前で呼ぶようになっていた。
「なんなら、昨日もかささぎ橋の練習後の夜に2試合取ってるよ……」
「四条さんもですけど、結姫さんって相当、練習の虫ですよね」
「いや、マジでゆき姉、体力お化けだから……」
そう言いながら、光輝が頭を抱える。
「それに付き合うお前も大概やと思うで」
仙崎にそう言われて、光輝は「たしかに自分でもよくやってると思うな」と自画自賛するのだった。
ただ、今、光輝がグロッキーな状態なのに対して、結姫は朝いちばんでも身なりもしっかりしてて、一試合取り終えた後もケロッとしていた。その後、レポート提出のために大学に向かったようである。さらに夕方には塾講師のバイトの予定も入っている。
それらもそつなくしっかりこなすため、そこら辺が光輝の言う体力お化けという所以である。その代わりに普段は夜寝るのが早い。
「やあ、皆さん、集まってますね」
そんなやり取りをしていたら、引率役の春日山高校かるた部顧問の後藤先生がやってきた。
「おはようございます!」
後藤先生がやってくるのを見て、全員が一斉に朝の挨拶を返した。
後藤先生が最後だったようで、読手コンクールに出場する殿山含めて遅刻したメンバーはなし。今にも光輝がぐでーっとしてて寝そうなくらいだ。
「四条君、体調、大丈夫?」
「あ、大丈夫っす。ちょっと、寝不足なだけっす」
後藤先生がぐでーっとした光輝を見て、心配そうに声をかけるが、光輝は糸目でダブルピースをして答えた。それを見た後藤先生は余計に不安を覚えるのだった。
そして、乗車予定の新幹線まで少し時間があるので、この後の行程やスケジュールを後藤先生が軽く説明した。
大阪から岐阜市内までは微妙に近いようで遠い。バス移動の方が一本で行けるのだが、10名前後だとコスト面で効率が悪い。この人数なら指定席が比較的確保しやすい新幹線で名古屋まで一旦、出た方が無難と旅行会社の人から勧められたようだ。
名古屋からは在来線に乗って岐阜駅まで移動し、岐阜駅から会場である長良川レインボードームという体育館のあるレインボーパークまで主催者がバスを用意してくれているという。おそらく、大阪以外の他の都道府県の代表も岐阜駅に集まりそうだ。
新幹線では修学旅行のようにテンション高めなメンバーが多く、女子が多数派なためか黄色い声が飛び交う。そんな中で寝不足な光輝は端っこのコンセントのある席を確保して、スマホの充電を行い、名古屋に到着するまでの短期間で新幹線のリクライニングシートに身を委ねて仮眠をとった。




