総文祭大阪選抜チーム 強化練習3日目 結姫が伝えたいこと
片づけや生徒らの着替えも終わり、3日間の強化練習もお開きに。後藤先生が締めの挨拶をする。
「ええ、皆さん。3日間、お疲れ様でした。短い間ですけど、強化練習という名に恥じないぐらい、お世辞抜きでみんな成長して、親睦も深めて、有意義な時間を過ごせたんじゃないかなと思います。1日挟んで、明後日から岐阜に出発しますが、皆さん、体調など崩されないように当日を迎えましょう。特に四条君、ケガしないようにね」
「は、はいぃ…………」
後藤先生に注意を促され、肩身狭そうに消え入る声で返事をする光輝に一同が一笑した。
「特にこの3日間、強化練習を手伝っていただいた花山さんには本当に感謝しかありません。なので、花山さんにも少し激励の挨拶をいただこうかなと……」
「そんな、いいですよー」
「まぁ、そう言わずに」
最初は遠慮がちな結姫だったが、後藤先生に重ねてお願いされて、挨拶に応じる。
「皆さん、3日間、お疲れ様でした」
結姫の少し凛々しくもあどけなさも残る柔和な声が春日山の和室に響き、それにメンバーや手伝いをする春日山の部員たちも「お疲れ様でした!」と元気に返す。
「後藤先生も言われてましたが、この3日間で皆さん、大きく成長したと思いますし、メンバーの仲も深まって、とても雰囲気のいいチームになりました。正直、今年は段位や実力的に厳しく、予選リーグ突破は難しいなんて前評判だったと聞いてました。でも、予選から大きく成長してる人たちもいましたし、本当に3日間でもっと大きく成長した人もいて、高校生の成長のスピードってすごいなって思いました」
結姫はメンバー一人ひとりの顔を見ながら、淀みなく語る。その口調から選抜メンバーには心からそう思っていることが伝わった。
「さすがに優勝は厳しいかもしれませんが、組み合わせによっては予選リーグ突破は十分、狙える…………個人的にはおもしろいチームに仕上がってるんじゃないかなと思ってます」
今の結姫の言葉に後藤先生は「おぉ」と感心する。
「そして、結果を出すことも大事なんですが、普段は大阪府内ではライバルだったり、かるた部に所属してない人だったり、何かの縁で集まったこのチームでかるたができる時間を大切にしてください。一人で、かるたはできません…………」
少し伏し目がちになり、物憂げなトーンで放った結姫の最後の台詞を、光輝は思うところがあったのか神妙な面持ちで聞いた。
「札があって、相手の人がいて、読手の人がいて、練習場所を管理して、提供してくれる方々がいて……そこから、かるたは始まります。その人たちへの感謝を忘れないでください。そして、高校選手権と同じく、総文祭も全国からそんな人たちが集まります。私も含めて、みんな、ライバルである前にかるたという競技に向き合う、同じ志を持った仲間です! そんなかげがえのない仲間に出会えたら、きっと世界が広がります。私はそれが結果を出すことよりも大事なことだと思っています。そのうえで結果もついてきたら最高です。皆さんの健闘を祈ります。私からは以上です」
結姫がそう言って挨拶を締め、一礼をすると、誰がするでもなく、自然に一同から拍手が巻き起こった。
「いやー、素晴らしい挨拶でした。私じゃ、絶対に言えないです」
後藤先生がやや自虐的に言うと、結姫は遠慮がちに会釈をした。すると、結姫は思い出したようにポンっと手をたたいてから、もう一度、メンバーに向き直した。
「あ、そうそう! 何かかるたで聞きたいことや相談したいことあれば、私でよければ、いつでもRIMEしてきてくれていいからねー!」
結姫がそう言うと、主に女子の部員たちが「やったー!」と沸いた。どうも、この3日間で交流を図り、RIMEも交換したようである。
「あと、みーくんが何か悪さしてたら、私に報告すること!」
「はーい!」と女子メンバーが元気よく返事する。
「別に悪さとかしないよ」
と、光輝がやや苦笑気味に反応すると、一同、笑いに包まれる。その様子に後藤先生は本当に明るい雰囲気の仲のいいチームになったとしみじみと感じつつ、解散の運びとなった。短くも濃い3日間の強化練習が終了したのだった。




