総文祭大阪選抜チーム 強化練習3日目①札合わせについて教わる
最終日となる3日目。
昼休憩では2日目と変わらず、結姫が光輝の弁当を持ってくるが、この日は宣言通り、前日の反省を生かして、小分けにして食べれるように俵のおにぎりやおかずなどを保冷バッグの中に分別して入れて、1試合ごとに補食できるようにした。
光輝は慣れない団体戦の試合形式の中でも出場級としては格下のメンバー相手に余裕の試合運びを見せ、10戦全勝。
初日で誰も光輝の取りの心配はしてないという反応があったが、それは団体戦での取りを気にかけながらも圧倒できる実力の持ち主だという答え合わせだ。
一方、他のメンバーも光輝の取りに触発されたのか、わずか3日間で急成長を見せる選手も出てきており、結姫と後藤先生はチームの底上げができている実感を得ていた。
(みーくんを大黒柱に、その次の軸が仙崎君として、森田さん、山本さんのC級2人、渡辺さんがベストメンバーかしら? でも、仙崎君含めて、他のメンバーも級や段位以上の力はある。くじ運や当たり次第ではけっこうおもしろいチームになってきたわね)
仙崎ももともとB級としては上位クラスでA級とも渡り合えるほどの力を持つ。他にはC級に上がったばかりのサノコーの森田二段、D級では金城大付の渡辺初段がめきめきと力をつけており、この辺りは格上相手にもいい勝負ができると結姫は見た。
特に森田はまだ2年生で来年もあるため、間違いなく来年の大阪を背負う存在になるだろうと、結姫は直接対決によるマンツーマンで邪魔にならない範囲で自身の取りのメソッドを彼女に叩き込ませた。
3日間の突貫工事のような強化練習だったが、実に有意義な練習ができたのだった。
「みーくん、森田さん、ちょっと来てー」
最後の試合を終えて、他の部員が後片付けの作業に入ろうとしたところで、団体戦の経験のないかるた部未所属組の二人を呼び出した。
「最後に札合わせを教えるわね。みーくんは聞いたことぐらいはあると思うんだけど……」
「名前だけは知ってるけど、どんなのかは知らない」
「じゃあ、みーくんも一緒に聞こうか。森田さんは知ってる?」
「全然、知らないです」
「仙崎君は知ってるわよねー! 札合わせ!」
3人がいる場所よりも離れた位置で掃除と片づけの指示を出したり、作業をする仙崎が、「はーい」と返事をする。他の桜女、金城大付の部員たちも同様の反応を示した。
「かく言う私も団体戦の経験はそれほどないから、偉そうに言えた身分じゃないんだけどね。まあ、こういうのもあるよーってことだけでも覚えといて」
結姫がそう言うと、光輝と森田がこくんと頷く。
「今回の団体戦は5人1組で行う試合形式で、グループリーグの予選は3チームか4チームの総当たり戦だったかな。予選で福井や静岡みたいな強豪県に囲まれない限りは一度は2組以上が最後まで勝負が決まらないような試合があると思うの。終盤に2組以上が運命戦までもつれるほどの接戦になった場合、勝率を上げるために札合わせっていうのをするの」
と、結姫は2組の取り札から、「むらさめの」の札と何枚かの札をそれぞれ2組分、使って説明を始める。
「あー、そういうことか」
光輝は結姫が今、やろうとしていることを眺めて、これから説明せんとすることをなんとなくだが理解できた。ただ、森田は話も始まってない中でピンと来ていない様子なので、説明を続ける。
「たとえば、5人の内、3人が試合を終えて、今1勝2敗だったとします。で、みーくんと森田さんは残りの持ち札が5、6枚ぐらいかな? それで終盤に入ったわけ。森田さん、ここからチームが勝つには何勝が必要?」
「2勝です」
「うん、そうだね。ここから、2勝する確率を上げるために自陣の持ち札をチームの人に合わせるんだけど…………実際に見た方がわかりやすいか。みーくん、隣に座って」
と、意図を察した光輝が結姫の隣に座る。
「終盤に相手陣を取った時なんだけど、みーくんのところに『む』があるから、私も自陣に『む』が残るようにみーくんの相手陣にある札を相手に送って行くようにするの。それで、最終的に二人が同じ札を持って、自陣を守れば勝ちっていうシチュエーションにするの。これが札合わせ」
森田も「なるほど……」などとつぶやき、なんとなく、理屈だけは理解した様子だ。
後々、知ったのですが、札分けともいうみたいですね。札合わせ。私は札合わせで教わりました。
これも団体戦をバリバリ経験した人なら、もっとうまく説明できると思うのですが……




