強化練習から帰宅後の練習にて(前編)
そして、合同強化練習初日を終えて、金城大付高校から地元に戻ってきた光輝と結姫は早速、花山家の離れの町家の和室で練習を行った。
試合をした光輝は体力的にもちろんだが、練習全体をずっと見るだけだった結姫も精神的な疲労はかなり大きい。それでも2人にとっては日課であるため、多少ハードであろうが、こなさない理由がない。結姫は明星会の日曜練習でがっつり4、5試合取ってから、光輝と取る日もある。これぐらいで音をあげるほどやわではない。
さて、試合はと言うと、クイーンに勝った光輝が圧倒したのだろうか。
「図が高い! 控えおろう!」
「すいません。今日もわからせられました……」
結姫が3枚差で光輝に勝利し、土下座する光輝に結姫が言い放った。実は高校選手権後、結姫は光輝相手に無敗である。ただ、光輝が本領を発揮できない理由もあった。
「いやー、やっぱり、ゆき姉にはまだまだ敵わねーわ」
と、光輝が言うが、負けていてもそれほど悲壮感はない。明らかに2人の取りの内容が違ってきているからだ。
「みーくん、わかってるかもしれないけど、もう、私、みーくん相手じゃ余裕ないんだからね」
「うん、わかってるよ」
多少、取りのスタイルや作戦を変えることはあっても、かなりガチ目に取っている。それは光輝にも伝わっており、以前のように互いに相手に合わせるようなかるたではなくなっていた。
「あと、最近になってわかったけど、みーくんって機会の音声だと感じがあんまりよくないわね」
と、結姫がアーリーこと自動読み上げ機・ありあけを見ながら言う。
「自分では自覚ないんだけどなぁ…………」
「これは私の推測だけど、無意識に読み手の特徴を聞き分けてるか、音が発する空気っていうのかな。それを感じてるのか、大会とかだと普段よりも反応がいいって思う札が何枚かあるわ」
結姫にそう言われ、「言われてみれば……」と思い返す。たしかに一部の1字や2字札などは非常にいい反応で取れた感覚があった。
「それで注意してほしいのは、総文祭の会場ってドームみたいな体育館に畳を敷いて行うみたいなの。たぶん、マイク越しの読みになると思うから、音の聞こえ方や抜け方が違うはず。最初はみーくん、読みと取りがしっくりこないんじゃないかなーって」
「あー、たしかにマイク越しの読みって経験したことないなー」
「私が経験したのだと、子音が弱めの読手だと『たま』が『あま』に聞こえたり、『う』とか『む』がこもったように聞こえたりすることもあったりね」
「あとは『か』が『た』に聞こえたりとかか……」
『かくとだに』の札が『たくとだに』に聞こえるのは競技者の中ではあるあるな話のようで、結姫も読手をやってる身としては耳が痛い話だ。
「それと関東の人は読みのリズムが気持ち早いから、関西離れたことのない出不精のみーくんはちょっと戸惑うかもね」
「え? そんなに違うの……?」
「もちろん、全日協の読手のテキスト通りのリズムや余韻に合わせて読んでるんだけど、決まり字までのタイミングが若干違ったりするのよ。その読みのスピードの違いに最初は少し違和感覚えたりするんじゃないかなって」
「こればかりはやってみないとわからないかなー」
「感じがいい人ほど、お手つきしたり、反応が狂う人が多いから、あえて遅く取るのも手ね」
「あー、様子見しながら、読みに合わせるって感じか。それなら普段通りだな」
(みーくん、本当に自分の強さ、自覚してないんだなぁ……)
結姫は光輝のそんな様子に呆れながら、そんなことを思うのだった。ただ、抜群に感じがいいわけでもなく、速さがないのも事実なのは結姫も認めるところである。光輝の強さは速さとは別の部分である。
そして、その強さの部分で変化した部分もあった。
「そういえば、みーくん」
「今度はなんだよ」
「高校選手権の後から、なんか取りが少し変わったよね」




