総文祭大阪選抜チーム 強化練習開始!①
週が明けて、月曜日。総文祭の強化練習の初日は金城大付属高校で行われた。そこに集結した大阪府選抜メンバー8名と指導役兼光輝の保護者枠の花山結姫。さらに監督役の春日山の後藤先生も来ている。
「知っている人とかもいると思うけど、改めて、皆さんで自己紹介しましょうか。では、まずは主将の四条君からどうぞ」
「え? 俺っすか?」
後藤先生から自己紹介を促されると、光輝は虚を突かれたように気の抜けた返事をする。
「そりゃ、そうでしょー。あの目黒クイーンに勝った人なんだから」
結姫がジト目で煽るように言った。それに対し、光輝は「くっそ、後で覚えてろよ」と捨て台詞をつぶやいてから、メンバーの方へ向き、自己紹介の挨拶に入る。
「え~っと、今回、大阪府の選抜チームの主将をさせていただきます。翔国高校の四条光輝です」
一呼吸置いてから、結姫の方を横目で見て、再び口を開く。
「先ほど、花山大先輩様からも紹介がありましたが、先日の高校選手権で目黒クイーンに勝って、A級の部で優勝しました! 偉そうですいませんが、今回も自分の持てる力を発揮して、チームに貢献したいと思ってますので、皆さん、よろしくお願いします! ゆき姉、これで、いいかな?」
「うん、変によそよそしくされるよりもいいでしょ? 緊張もほぐれたんじゃない?」
「うん、まあ……」
光輝がややむくれつつも結姫の言葉に納得の意を示した。
「というわけで、みんな、拍手!」
光輝の自己紹介が終わり、結姫がいい感じ(?)に締めて、パチパチと和室に拍手が鳴り響く。
「ハイハイ! 四条に質問あるんやけど!」
その中で割り込むように勝手に質問タイムを始めたのは春日山の仙崎。
「おー、なんだ? 言っておくが、クイーンにどうやって勝った? とか聞き飽きたから、それ以外で頼む」
本当に光輝は食傷気味なのか、心底うんざりしたような感じで言い放つ。
「俺らも花山さんみたいに…………『みーくん』って呼んでええか?」
仙崎が意を決してそう言うと、一同、笑い声が巻き起こる。
「アハハハ! 仙崎君、それいいアイデア!」
結姫が愉快そうに笑いながら言うと、他の女子も「私もー」と続く。
「どう、みーくん? あなたたち、チームなんだからお互い愛称とかつけるのはいいと思うんだけど?」
結姫からの提案に対し、光輝はやや困り気味な表情で「う~ん……」と唸っている。
「なんか、やだな」
そう光輝が答えると、仙崎が「ガーン!」と思いっきりをショックを受けたような表情をして、そこでもみんなからの笑いを誘った。
「なんや! 初対面の時に俺が嫌な態度取ってたからか!?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど…………」
光輝がそう言うと、チラッと結姫の方を見る。そして、頭を搔きつつ、
「それ、正直、恥ずかしいから…………俺のことは普通に名前で呼んでほしい」
光輝が少し照れ気味で言った。
「え? それじゃ、私もみーくんって呼んじゃ、ダメ?」
すると、結姫が捨てられた仔犬のような表情で少し寂しそうに言った。それを見た光輝は肩をすくめる。
「そう呼んでいいのは、ゆき姉だけだよ」
光輝がぶっきらぼうにそう言うと、結姫は目を見開き、顔をボッと赤くして、口元を抑えながら顔を逸らした。
その様子を見た女子一同は尊いものを見るかのように静かに盛り上がった。
顔を逸らした結姫はどこかに旅立ったように意識が飛んでいるが、当の光輝はなぜ彼女がそんな反応をしているのかが理解できず困惑気味。
「じゃあ、シンプルに光輝はどうや?」
この話題を振った仙崎もいたたまれない空気の中で、静かにやり取りを続ける。
「あー、それなら、学校やバイト先でも呼ばれてるし、いいぜ」
と、光輝が淡々と返し、周囲の女子がまだ盛り上がってる中で二人で話をまとめた。
「じゃあ、次は副将の仙崎君」
なかなか、落ち着かない空気を振り払うように後藤先生が自分が受け持つ春日山の生徒である仙崎を指名する。
ちなみに自己紹介の言い出しっぺで進行役であった結姫は両頬に手を当てながら、「ゆき姉だけだよ……」という言葉をぶつぶつとつぶやき続けていた。光輝が結姫の顔の目の前で手を振って、ようやく、俗世に帰ってこれた。
そして、仙崎の自己紹介が始まった。
「はい、えーっと、副将の仙崎拓也です。主将に比べると、数段実力落ちるけど、去年も経験してるんで、そういうところでチームに貢献しようと思ってるで。高校選手権でB級優勝して、A級に昇級したかったけど、できんかったから、その悔しさをこの総文祭にぶつけたいと思ってます。みんな、よろしく」
仙崎がしおらしい自己紹介をし終えると、こちらも拍手が鳴り響く。本当につい3か月前ぐらい前のことを考えると、本当に謙虚になったものだなと光輝と結姫は感心する。この後、桜花女子や今回の練習会場である金城大付属の部員などによる自己紹介がつつがなく行われた。




