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高校選手権の後はしばらく大変だった……①

皆さま、ご無沙汰しております。

なんとか、書けたので、次章の総文祭編スタートします。楽しんでいただければ幸いです。

 つい先日、7月下旬ごろに近江神宮で行われた全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会は競技かるたにおける甲子園ともよばれる大会だ。例年は高校生の青春が色濃い団体戦が盛り上がるのだが、今年は目黒クイーンが参加し、緊急で配信をした個人戦が大いに盛り上がった。

 しかし、それ以上に盛り上がりを見せたのが目黒クイーンを破るジャイアントキリングを果たした四条光輝(しじょうみつき)の戦いぶりだった。その模様はマイチューブで配信されていたこともあり、かるた関係者はもちろん、目黒クイーンのファンの視聴者にも注目された。光輝としてはその日限りの出来事で終わるかに思われたが、世間はそうは問屋が卸さない。


「いやー、四条君、ようがんばったな~。この調子で総文祭も頼むで」


 まず、高校選手権の個人戦の閉会式後に大学のかるた会の勧誘以外にも大阪明星会の山上会長夫妻から労いの言葉をかけられた。これぐらいなら、十分にあり得る話だ。そして、競技委員長の新条永世名人からも声をかけられた。


「少し右腕を見せてくれないか?」


「あ、はい……」


「少し失礼するぞ」


 新条からそう言われて、光輝がシャツの袖をめくる。


「これでも医者の端くれなんでな」


 まもなく、後期研修医の期間が終了し、学会の試験に合格すれば、晴れて一人前の医師になるという。実は新条永世名人が10期目を節目に名人戦を辞退したのがこのような事情があったためだ。

 めくった袖から露わになった右腕に触れて、触診を始める。研修医とはいえ、多少のメディカルチェックなら問題なくこなせるほどには診療経験は積んでいる。


「肘ではなく、右の大胸筋か上腕三頭筋あたりに痙攣した形跡が見られる。決勝では本格的に攣っていただろうに……よく、こんな状態で取っていたものだな、呆れたヤツだ」


 そうは言いつつも新条は愉快そうに語った。


「新条さん、彼、大丈夫でしょうか?」


 結姫(ゆき)が新条に問いかける。


「あぁ、正確な診断はできないが、骨や関節に異常はなさそうだ。今はまだ多少は痛むだろうが、その痛みも時間とともに引いていくはずだ。総文祭にはなんとか間に合うだろう。もし、明日になっても痛みが引かないようなら、筋肉になんかしらの損傷が出ている可能性が高いから、念のため病院に行って検査してもらうといい」


「は、はい」


 準決勝で痛めた右腕は軽傷で済んだようで、総文祭も問題なし、という現場に立つ研修医のお墨付きが出たのだった。ただ、翌日まではなるべく安静にしておいた方がいいとも言われたため、結姫とのかるたという日課は1日ほどお休みすることになった。


 大会当日は目黒クイーンに勝ったうえで高校選手権の個人戦で優勝したことのインパクトの大きさを実感することができなかった。それを実感するのは翌日以降になってからだ。

 当然ながら、かささぎ橋かるた会の子どもたちやおばちゃん、おっちゃんたちからも盛大に祝福された。練習の時間が押してしまうほど、光輝への質問攻めが止まらなかった。

 さらにかるた界以外でも翔国高校が光輝の快挙を学校の公式サイトの校内ニュース、SNSで盛大に祝った。二学期の始業式あたりに表彰されるとのことだ。なにより、光輝にとって驚いたのが、普段は空気扱いされてるクラスのグループRIMEでも祝福のメッセージの通知が止まらなかった。

 そして、地元の広報誌からの取材申し込みもあるなど、高校選手権で目黒クイーンを破ってA級優勝したインパクトは日に日に増していくのを実感することになり、これらの喧騒は数日ほど続いた。

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