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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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【インターリュード】父の安堵/そして、閉会式後、大変なことに……

 ***


 配信越しで見ていた父・悟は結果を見届け、煙草を軽くふかし、


「勝ったか…………」


 試合中、気が気でなかったのだろう。吸い殻がたまりにたまった灰皿にポンっと空いた小さなスペースに軽く押し付ける。


「月子、ありがとな……」


 利き腕が満身創痍だったことも気づいていた悟にも光輝(みつき)に舞い降りたあたたかなオーラの正体が画面越しに見えていたのかもしれない。

 亡き妻に感謝の台詞をつぶやくと、戸棚に飾ってある写真の中の月子はやさしい笑みを浮かべていた。


 ***


 表彰式や閉会式後も光輝やその周りは大変だった。

 いろいろな人が光輝に目黒クイーン相手にどうやって勝ったのか、どう取ったのか、なにか作戦があったのか、などを聞かれた。

 また、高校3年の光輝、千里には関西のかるたの強豪である立修館大から勧誘があった。


「あたし、T大、目指してるので興味ないですけど、四条くんが入るなら考えてもいいかな?」


「一色さんがそう言ってるけど、四条くんはどうですか?」


 勧誘に来た立修館大の部員が光輝に問うと、


「いや、すいません。まだ、全然、考えられないです」


 困惑顔で言う光輝はこのような勧誘は予想外だったようで、対応に困っている様子。

 実は立修館大以外にも推薦のある強豪私大が次々に千里と光輝に誘いをかける。千里は慣れてるのか、一貫して「T大目指してるので興味ないです」と返して、あしらう。

 ただ、光輝は一応、話を聞くだけ聞いてる様子。それらが次々に来て、抜けだすタイミングを失っていた。


「みーくん、帰るよー」


 そこに光輝の手を取って、ここから抜けれるように助け舟を出したのがゆき(ねえ)こと結姫(ゆき)である。


「あ、あぁ……」


 結姫に引っ張られて、光輝は「すいません」と言いながら、その場を離れた。すでに帰る準備をしていたのか、自分の荷物だけでなく、表彰状とトロフィー、景品などの荷物を「うんしょ」と持ちあげていた。


「あ、ゆき姉、荷物、俺が持つよ」


「ダメダメ! けが人なんだから、これぐらいは私が持つよー」


「いや、そんな大げさな……」


「何言ってるのよー。すぐに総文祭もあるんだから、ケガが悪化したらダメでしょう? 今日はお姉ちゃんにまかせなさいって」


 結姫がお姉ちゃんモードに入ってしまったため、こりゃ言っても聞かないなと光輝はしぶしぶ受け入れるしかなかった。


「四条くん、その代わり、ちゃんと送っていくんだよ」


 千里がしたり顔で光輝に問いかける。


「え? まぁ、そのつもりだけど……」


「一色さんは? ここ、夜道はけっこう暗いし、危ないし、よかったら、一緒に……」


「いえ、あたしはタクシーでホテルに直行するので大丈夫です」


 結姫の誘いにも千里は満面の笑みで断りの返事を入れる。


「タクシーなら、途中まで相乗りでも……」


「いえ、本当に大丈夫です!」


 重ねての誘いにも笑みを浮かべて断る千里。だが、その笑顔の裏はどこか寂しそうで……


「それに今は、二人の邪魔になるし…………」


 少し二人から顔をそらし、ぼそっとつぶやく。


「そ、そう……?」


 千里のつぶやきこそ聞こえなかったものの寂しげな表情を見逃さなかった結姫は少しひっかかりを覚えながらも千里の断りを受け入れた。


「じゃあね、四条くん。君も総文祭、出るんでしょ?」


「ああ、そうだな」


「そっか。じゃあ、また近いうちに会えるね。また、試合できたらいいな」


「俺はもう当分、千里とは当たりたくないんだけど」


「もう、つれないな~。そこは『もう一度、やろうぜ!』でしょ?」


「いや、正直、しんどい……」


 口を尖らせながら文句を垂れる千里に対し、光輝は心底だるそうに言う。

 アドレナリンが出ていない今は千里という実力者と試合をする面倒さの方が勝る。

 ただ、この日、千里との準決勝はいい感覚で試合をできたのは確かなので、本音は再戦希望も満更ではない様子。その二人のやりとりを隣の結姫が微笑ましく見る。

 少々、ご機嫌斜めの千里だったが、すぐに「四条くんはしょうがない人だなー」といった感じで気を取り直し、


「またね、四条くん。バイバイ」


 千里は無邪気な笑顔を浮かべて、ぶんぶんと手を振る。


「あ、あぁ……」


「バイバ~イ」


 千里のフランクなさよならの挨拶に対して、光輝は不器用に手を振って返して、結姫は笑顔を浮かべて手を振り返していた。

 そうして、二人は近江神宮の勧学館を後にする。最後まで手を振って、見送った千里だが、二人の姿が見えなくなると、笑顔がだんだん曇っていった。


「いいなぁ、花山さんは。四条くんとあんなに一緒にいれて…………」


 不可抗力ではあったが、準決勝で負傷させたことに対する後ろめたさ、なんとなく感じた結姫との絆のようなものに免じて、今日のところは身を引くべきだと感じた。


(でも、次は負けないんだから……! 次こそ、四条くんにあたしを見てもらうためにも!)


 改めて、千里はそう思うのであった。彼女がこの真の感情の意味を知るのはまだ先の話。

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