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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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高校選手権個人戦A級決勝 光輝VS.目黒クイーン⑥ 無段だった男、ついにクイーンを捉える

 光輝6-4目黒と見てる方が緊張感を持ってしまうような展開。配信越しで見ている人たちもこの緊迫した展開に固唾を飲んでしまう。実際に浦安の間にいるギャラリーは唾を飲む音さえ漏らしたらいけない空気感だ。

 そんな中で4枚空札が続き、同会場でやってるB級の決勝はこの空気感に耐えられなかったのかたまらずお手つきで試合が終わったようだ。しかし、光輝(みつき)と目黒クイーンによるA級決勝はそんな緊張感はどこ吹く風、二人だけの世界、いや、それぞれの世界に入り込んで、自然体で試合をしている。

 中盤以降は押され気味でらしくない取りを見せていた目黒クイーンだったが、終盤で決まり字が早くなり、札も少なくなってきたことでスピードも戻ってきた。


「たれをかも~」


 パチンッ!


 73枚目「たれ」で光輝が左下段の内寄りに置いていた出札を切り裂くように綺麗に弾き飛ばし、光輝5-4目黒とこれで1枚差。光輝が自陣で取ったので送り札のやり取りなどはない。ただ、ここで光輝が閃く。


「変えます」


 自陣の右上段に置いてあった「あり」決まりの「ありあ」を今、空いた左下段へと移動する。


「まつもー、むかしのー、ともなら~なくに~」


 余韻3秒の後、空白1秒を置いて、


「ありあけの~」


 パァンッ!


 送り一発ならぬ「変更一発」で光輝が自陣左下段の窮屈なところを上背の高さ、リーチの長さを感じさせず、鮮やかかつコンパクトに払いとばした。

 スピードを取り戻した目黒クイーンでさえ、この最高速の守りと予知能力のような勝負勘を前に少し手を伸ばすだけで精一杯だった。これで、光輝4―4目黒。ついに4枚セームとなり、光輝が目黒クイーンを捉えた。

 しかし、今の変更一発の取りは圧巻だった。ある程度の競技レベルになると、次に何が読まれるかわかることがあるという。

 札が光っているように見えるという者やその札だけ浮いてるように見える者など、様々だが、今の光輝には、


(俺の右手と、あたたかい何かが、札へと導いてくれる…………)


 穏やかに目を閉じ、カッターシャツの胸ポケット越しにお守りをギュッとやさしく握りしめながら思う。

 最大10枚ビハインドをついに追いつき、ギャラリーからはどよめきのようなため息が漏れる。浦安の間は異様な空気に包まれてきた。

 だが、光輝には母・月子の守護霊というべき存在が守っているのか、そんな空気も追いついた試合展開に対しても浮ついた様子はない。

 そして、次の75枚目、


「すみのえの~」


 バァンッ!!


 これも自陣右下段を光輝が守る。守り3連取で光輝が逆転に成功し、ついにあの目黒クイーンからリードを奪う。

 ギャラリーからも「おぉ……!」というどよめきの言葉が漏れ出てしまうが、それは光輝が目黒クイーンから逆転したことではなく、今の取りに対してだ。

 見た人の感覚では、1字札を半音どころか空気を吐く音で聞き分けて反応したように見えた。光輝が痛烈に払い飛ばした後に楠本専任読手の読みが遅れて聞こえたほど、速いを通り越した音速の取りにどよめいたのだ。


(さやかさんがリードを奪われる? しかも同じ高校生で? 今日、A級デビューをしたばかりの奴に? 

 いや、もう、そんなものは関係ないか…………ただ、単純に四条が強い。俺では、さやかさん相手にこんな試合はできない……)


 唯一、目黒クイーンを純粋に応援する石崎が光輝に脱帽する。そもそも、目黒クイーンがこんな終盤にリードを許す展開そのものがこの1年でなかったことである。クイーン戦も含めて、淡々と差を広げて圧倒して勝利する試合がほとんどだ。


(すごい、四条くん! やっぱり、すごい……!!)


 目黒クイーンがまだ中学生だった2年前の山口大会で最後に土をつけた千里が光輝の逆転劇と冴えわたる取りに目を潤ませつつも輝かせる。千里だけではない。目黒クイーン相手に互角かそれ以上の取りを見せる光輝のかるたにギャラリーや配信で見ている人たちが酔いしれていた。


(みーくん…………っ!!)


 結姫(ゆき)は逆転したことや周りの空気に関係なく、おそろいのお守りをギュッと握りながら、ただ、試合の行く末をこの目で見届けている。

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