決勝戦で対峙する現役クイーンと無段のA級
浦安の間にはA級をはじめ、各階級の決勝を戦う人たちとそれを見守るギャラリーも集まった。そして、組み合わせの決まった選手たちもそれぞれ、指定された席へと座る。
光輝がマイ座布団を置いてから、深いため息を吐きつつ、その上にドカッと座る。そして、その前には上下、漆黒の衣装を纏った小柄で華奢な女の子が座っている。
クイーン戦の配信で見る着物姿からは想像できないほど、間近で見ると、その小柄さがよくわかる。肌も白く、少しウェーブのかかった黒髪は人形のような出で立ち。この無機質なオーラが舞や本気を出した結姫とはまた違う圧力を光輝は感じ取った。
「…………お強いのですね」
突然、目黒クイーンが口を開く。
「?」
光輝は一瞬、誰に言っているのかわからず、それが自分に向けられた言葉だと理解するのに少し時間がかかった。
「……俺のこと、ですか?」
「はい」
姿や表情が無機質なら、発せられる言葉も抑揚が少なく無機質だ。からかっていたり、嫌味を言ってるわけでもなさそうだ。せっかく、クイーン直々に会話をしてきたのだから、答えなければならないだろう。
「なにをおっしゃいますか。そちらこそ、現役のクイーン様でいらっしゃるじゃないですか」
光輝は皮肉を込めて返事をした。この決勝まで自分の名前なんて知らなかっただろうにと心の中でも悪態をつきながら。
「ここまで勝ち上がってきたんですもの。強くないわけがありませんの」
なるほど、一理あるな……と光輝は考える。
とはいえ、正直、自分でも今日の結果はできすぎだ。決勝まで残った今でさえ、自分がこの中でも強いなんて思わない。
「俺はただ、人より多くかるたをやってるだけだ。たぶん、この場にいる誰よりもな」
光輝は周囲を見回すように言って、最後に目黒クイーンを見定めた。
「特別な強さなんてないよ。たぶん、すぐ終わる」
「おもしろいことを言いますのね」
「うけてくれたようでなによりです」
「試合が始まれば、きっと、わかることですの」
そういう目黒クイーンに対し、光輝は無言を持って肯定の返事とした。
そして、そのやり取りをやや遠目で見ていた結姫。
(みーくん、目黒さんと何を話してたんだろ?)
会話の内容が気になるが、どうにもモヤモヤしてしまう結姫。今日、この一日だけで、光輝も相当、一目置かれるようになった。
それだけの試合をしているのだから、仕方ないことでもあるのだが。ただ、それがなぜか女子高生の女流選手なのがどうにも気になるようだ。
(どうせ、私は現役のピチピチ女子高生じゃないですよーだ)
心の中でいじける結姫。
「お隣、いーですか?」
と、そこに声をかけられた結姫はハッとして、取り繕う。
「は、はい。どうぞ」
結姫の隣に座ったのは、準決勝で光輝と激戦を演じた一色千里だった。




