【インターリュード】息子と弟子の戦いを見終えた父と師
遠く離れた関東の地。劇的な試合を演じた男子高校生の父親と女子高生の師が配信越しで見ていた試合について語り合っていた。
「すごかったわね…………あなたの自慢の息子」
「いやー、あれほどとは思わなかったなー。しかし、みっちゃんの教え子もだいぶ我流が入ってるが、思ったよりもまともな取りをする。確かにあれはかなり慣れないと取りのリズムが狂わされるだろうな~。光輝には通用してなかったみたいだけどな」
「わたしは何度も取ってるから、慣れてるけど。それにしても、あの子の力を引き出したのは紛れもなく光輝くんだわ」
「はっ、買い被りすぎだろ」
「そうでもないわよ。さっき、すぐにあの子からメッセージが来てね。『あたし史上ベスト3に入る試合でした』だって。わたしも長年、あの子の試合を見てきたけど、こんな結果で負けたのが悔しいなと自分が思ったぐらいに最高の取りだったと思うわ。あれなら、目黒さやかにだって……」
そして、いつかはクイーンにも……
まだ、クイーンを目指す立場の美都子にとっては複雑な感情もあるが、もう、教え子たちの成長や大成を喜べるほどには年を取っている。
「いや、あの二人には名人、クイーンへの執念が足りないだろ。特に光輝は何年もそういう世界から離れていたからなぁ。そういうのを目指すって感覚がまずないのかもしれない」
「そうね。あの子も気まぐれや無欲で結果を残してたに過ぎないしね。本気でクイーンを目指すってなった時に今のような取りができるかどうか……」
名人、クイーンになるということ、その難しさは元名人、元クイーンの二人がよく痛感している。
「ま、まずは現役のクイーン相手に光輝がどこまで取れるかどうかだな」
「勝算は?」
美都子が少し嫌味っぽく聞くが、
「ほぼ0だろう。大半の人が目黒さやかが束勝ちすると思ってるはずだ。俺もそう思ってるが……」
悟が少し、間を置いてから、
「今の一色千里との試合であいつも何かをつかんでいればいいんだがな。それ次第では上回れるかもしれないぞ、現役のクイーンをな。せいぜい、0%が1%になるぐらいだがな」
タバコをふかしつつ、不敵に笑うのだった。だが、試合の最後の瞬間を思い出し、
「でも、あいつ、さっき変な倒れ方して、右手を気にしてる仕草してたんだよな~。取りに影響しなきゃいいんだがな」
さらりと言う悟だったが、タバコをふかす頻度は無意識に増えていた。




