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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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激戦の準決勝決着! 「やっぱり、四条くんはすごいや」

 すべての試合が終わると同時にようやく、光輝(みつき)と千里による二人の熱戦に惜しみない拍手が送られた。

 試合札を片付け終えて、改めてお互いに一礼をして、勝った光輝が席を立とうとすると、


「ん?」


 頭を下げたまま、わなわなと肩を震わせる千里に気づいた。一体、どうしたのだろうか。あっけない結末に悔し涙でも流してるのか。といっても、嗚咽などの声は聞こえる様子はないが。


「千里……?」


 光輝が呼びかけると、


「すごぉーーーーーーいっ!!」


 すると、がばぁーっと、もろ手を挙げて、目をキラキラさせながら光輝に詰め寄った。どうも、あっけない負け方に関してはノーダメージのようである。 

 その千里の様子に困惑気味の光輝。


「ねぇねぇ? 最後、どうやって取ったの? 確かにあたし、意味わかんないお手しちゃったけどさー。普通、あの位置だと、あたしの腕にも振れるから共お手になるじゃない! それなのに1ミリも触れずに出札だけスパーって取っちゃってさ! なにあれ、芸術的! マジアートなんですけど!」


 すごい勢いで捲し立てる千里に気圧され、少ししどろもどろになる光輝だが、腕を組んで、「うーん」と一呼吸置いてから、当時の状況を思い出しつつ口を開く。


「とりあえず、千里が『いに』を狙ってて、それに自信を持ってたのはわかってたから、右の対角線だけを狙ってたんだよ。そっちが残り1枚になってからは目線は『やえ』に置いて、意識は自陣の右側って感じで」


 うんうんと頷きながら、光輝の話を聞く千里。


「で、千里の言う通り、こっちの左に伸びてくる手と相手の右を攻めた時は交錯しやすい。だから、少し回り込むように右手を持って行って、出札の近くあたりで手首と指ではじくようなイメージだったかな。そんな感じで取った」


「ということは咄嗟にそんな動きをしたってこと?」


「うーん、本当は素直に出札に最短距離で抜き去るイメージだったんだけど、千里の手で少し手が止まったから、野球で言うサイドスローっていうの? そんな感じの動きになったなぁ」


「すごい! すごい! すごぉーーーーーーーい!!」


 千里は光輝の話を聞いて、とにかくはしゃいで語彙力がなくなっている。


「ところで、俺、札、返しに行ってきていいかな?」


「あ、そっか。ごめんね。すぐに決勝だよね。応援してるから、頑張ってよね!」


「ああ、ありがとう。まあ、今から気が遠くなるけどな……」


 そう言って、のっそりと立ち上がった光輝は札を返しに受付の方へと向かうべく、浦安の間を出ようとしたとき、


「四条くん!」


 千里が呼び止め、光輝が振り返る。


「あのね、試合前に言ったよね? 今日はあたし史上、最高の試合になるって」


「あー、そういえば……」


「試合は負けちゃったから、史上最高かはわからないけど……あたし、取っててこんなに充実した時間を過ごせたの初めて! だから……やっぱり、四条くんはすごいや」


「千里……」


「ねえ、四条くんはどうだった? 今日、あたしと取って楽しかった?」


 千里のその言葉を聞いて、光輝が一呼吸置いて、


「そうだな。俺も楽しかった」


 心から出たであろう光輝の言葉を聞いて、パァッと明るい表情になる千里。一方、そのやり取りを近くで見ていた結姫は顔を曇らせていた。


「でも、もう大会で当たるのは勘弁だな~」


「もう、そこは『また、やろうぜ!』じゃないのー」


 千里にそう言われて、光輝は苦笑いで返した。すると、光輝は「あっ、いけね」と札を返しにそそくさと浦安の間を出ていく。その後ろ姿を見つめる千里が小さく口を開く。


「あたし、かるたやっててよかった。こんなに心を動かす取りができる人なんだもの……うん、大丈夫だよ、四条くんなら勝てる。うん、勝てるよ」


 決勝の相手が気が遠くなるといった絶対女王と知りながら。

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