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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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ついに対決! 光輝VS.千里④ あたしを見せたい!

 送った札の暗記の確認のため、軽く素振りをする光輝(みつき)。その後、視線を上げると、目の前に見えたのはお手付きをして、意気消沈する千里ではなく、どこかわくわくしたような表情をした千里だった。


(やっぱり、四条くんはすごい……! あたしが思ってた通り、あの時と変わらない…………いや、あの時の、あたしが憧れていた四条くんがさらにそのまま成長したような…………)


 背も伸びて、声も低くなった今の光輝は千里の思い出の中のものとは別人のようだが、かるたは変わってなかった。むしろ、憧れていたかるたのスタイルがスケールアップしていたのだ。


(その四条くんと今、試合できてるんだ。夢じゃないんだぁ…………)


 そう思ったら、自然と顔から笑みがこぼれた。

 だが、すぐに気持ちを試合へと切り替える。意を決して構えの姿勢に入ると、向かい合う光輝を上目で鋭く見つめる。


(だから、なおさら負けられない! あたし、四条くんとこの場で対等に試合するために今までかるたを取ってきたんだもの!)


 試合をひっくり返された千里だが、もともと独特の感じを武器にお手を犯しながらも取っていくタイプなだけに一度のお手で崩れるわけでもない。すぐに取り返していく。


(この人に追いつきたい! そして、この試合を通して、あたしのかるたを四条くんに見せたい……! 『これがあたしなの!』って)


 45枚目「もも」を千里が守る。3連取、光輝が1枚の取りを挟んだ後に3連取で千里14-15光輝と千里が再びリードを奪う。


(くっそっ……! 離されてたまるかっ!)


 しかし、光輝もすかさず14枚セームに追いつくと、51枚目「おおけ」、52枚目「わび」と攻め取り、すぐにリードを取り返す。


(不思議…………負けてても、勝っててもかるたを取ってて、こんなに充実した気分になったのなんて初めて…………あたし、ずっと、試合をしていたい。四条くんのかるたを一番、近くで見るんだっ! そして、あたしのかるたも四条くんに見て、感じてもらうの!! この、あたしを……っ!!)


 千里は光輝を期待しながらもどこか試しているような感じがあった。

 しかし、そこにはすでに一人のA級選手として自分と渡り合い、自分以上の技術の高さを見せる。そんな相手だった。

 

 こんなしびれる試合ができる相手と当たったのはいつ以来だろう。

 

 不思議な感覚を持ったまま、驚くほどの集中力を発揮する千里の取りはこの日、いや、ここ数年で一番といっていいほどだった。

 光輝にリードを許した後、千里は3連取で三たび逆転。ただ、そんな千里と渡り合う光輝の取りはもはや誰もA級デビュー戦なんて思えないほどのパフォーマンスを見せている。

 この後も取ったり、取られたりをお互い繰り返すまさに一進一退の攻防。試合は文字通り、一歩も譲らないシーソーゲームでほぼ同点で後半へと入っていく。


(相手の千里の方が明らかに格上のはずなのに、自分でもよく取れている。この研ぎ澄まされる感覚はなんだ?)


 光輝も必死に千里相手に取っていく中で不思議な感覚に包まれていた。


(…………まるで自分じゃないみたいだ。でも、こういうときほど、お手付きとかのミスが起こるんだよな。落ち着いて取る感覚を忘れるなよ、俺!)


 自分じゃないというのもいい意味で、だ。

 気分は高揚しているのに不思議と落ち着いている。集中はできているのにテンションは高い。

 光輝と千里にとっては久しく忘れていた感覚。いや、この場にいる選手全員がそうだったのかもしれない。ただ、今、高校選手権の最高峰の準決勝を戦っている一組だけは格段に違った。


『『かるたって、楽しい!!』』


 光輝と千里はそんなことを思いながら、充実の表情で一進一退の試合を演じている。お互い出せる実力を出し惜しみなしにぶつけ合う。

 間違いなく、今大会のベストバウド。この先、こんなおもしろい試合をできることなんてあるだろうか。

 そんな試合を取るため、見せるためなのか、お互い離さず、離されず、白熱した一戦が繰り広げられている。

 だが、試合の配信は大量リードで勝利が見えてきた目黒クイーンが中心で、浦安の間にいるギャラリーも奥の目黒クイーンの試合をメインに追っているか、部員の応援で自校の選手を見ているためか注目度が低い。そんな白熱した一戦を複雑な表情で見ているものが一人。


(なんだろう……? この間に入り込めないような感じ……)


 結姫(ゆき)はなんとなく、二人のシンパシーのようなものを感じ取った。


(みーくん、私と取ってる時でもあんなに楽しそうに取ってくれたことあったっけ……?)


 ほぼ毎日、光輝と取ってる結姫も楽しそうに取っている姿は何度も見たことがある。ただ、あれほど純真に楽しそうにしている姿は記憶にない。


(みーくん、なんで…………?)


 クイーン候補にも数えられる実力者の千里とまともに戦って渡り合う。それだけでもうれしいはずなのに…………

 それ以上に光輝が結姫以外の人とこれほど楽しそうに取って、いつも以上の冴えた試合をしている姿を見るのが思いのほかショックだった。

 試合を見るのに集中できなくなった結姫だが、奥に見える目黒クイーンが札を片付けて、立ち上がる姿が見えた。順当に先に決勝進出を決めたようだ。その姿を見た結姫が我に帰る。


(何考えてるの、私。今はみーくんをちゃんと見守ってあげないと……!)


 両側の頬を軽く両手で叩くように、気合を入れるように視線を二人の対決へと向ける結姫。

 試合は68枚目「ひとは」が読まれた時点で千里7―7光輝とまったくの互角の展開。先に17枚差で勝利し、目黒クイーンの試合が終わったため、配信のメインは残った試合にカメラが向けられるようになった。そうなると、目黒クイーンの決勝の相手を決める残ったもう一組の準決勝の試合が注目の試合となる。

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