ついに対決! 光輝VS.千里③ 序盤の攻防
場所は戻って、近江神宮。
試合は1枚目は空札だったものの序盤からまあまあの出札ラッシュ。A級の準決勝は読手に近く、観覧席からは奥側の目黒クイーンと田中の試合はクイーンが幸先よく取っていき、序盤から優位に試合を進めているようだ。
一方の観覧席手前の光輝と千里の試合は一進一退の攻防。光輝にとっては得意な試合パターンではあるが、千里がややリードという展開。15枚目、光輝陣の右上段にあった「かぜそ」を千里が攻め取った時点で、千里19-22光輝。
(独特な感じを生かした破天荒なかるただと思ってたけど、こうして見ると、大胆さと丁寧さも兼ね備えてる。さすがに今原さんが見ているだけはあるわね)
手前の光輝と千里の試合を見る結姫が千里の取りを見て感じたことだ。もう少し感じの速さを生かした雑な取りをイメージしていたが、意外にもそつのないかるたを取るのだ。
(今の『かぜそ』は最初の『か』で反応して、決まってから上手く払い取った技ありの1枚……そして、あの最初の感じが一色さんの独特な感じの正体かしら?)
いつかクイーン位予選で当たるかもしれない相手でもある。取り方の癖、特徴などの観察も怠らない。
また、丁寧に取れるだけでなく、序盤の「よを」「たち」と短い2字札もきっちりとドンピシャで反応する噂通りの速さもある。
そして、千里は17枚目「いまは」を戻り手できっちりと守る。
(上手い……! ゆき姉や舞さんとは違う。上手いだけじゃない、決まり字で手が伸びる速さや動きがやばい。なんか、上手く言えねーけど、とにかく、やばい。こんなタイプは見たことねーな……)
少しばかり、光輝は千里の独特な感じに対応しきれてない感じだ。
(四条くん、あなたもここから感じを消されて終わるの?)
だが、光輝は千里の取りに翻弄されてるわけでも感じを消されたわけではない。
(だが、読みと取りの波長は少しわかってきた)
(四条くん、ここからよね? あたしをがっかりさせないでよね)
その期待通り、2枚空札を挟んだ後に光輝の取りが冴え始める。
20枚目の「わたのはらや」、これは千里陣に「わたのはらや」、光輝陣に「わたのはらこ」が分かれていたという状況だった。
「わたのはら……」
読手が読み上げた瞬間、光輝は自陣の右中段の外側にある「わたのはらこ」を囲う。一方で千里も光輝の囲う「わたのはらこ」にゆっくりと手を伸ばしつつ、自陣左中段内側にある「わたのはらや」に戻る準備もする。
「やそしまかけて……」
「入ったっ!!」
「!?」
光輝の気勢とともに千里の左中段にある出札を抜き去った。
通常、自陣から相手陣より、相手陣から自陣へと戻る方が素早く動ける。自陣から相手陣は手を伸ばす運動が間に挟むためだ。
そんな動きができたのは光輝の自覚のない速さと自他ともに認めるリーチの長さ。相手陣に伸びきってない戻り手で取ろうとする千里の手をかいくぐった。ちなみに光輝はこの試合、初めての相手陣での取り。よって、送り札も初めて。特に長考することなく、スッと「ひさ」の札を送る。千里は送られてきた「ひさ」を自陣右側の中段の外よりの真ん中に置いた。
「ひとにはつげよ~、あまのつり~ぶね~」
余韻3秒、空白1秒、
「あしびきの~」
「てぇーーーーいっ!!」
「!?」
パァーンッ!!と、光輝の再度の気勢とともに身を乗り出し、手を伸ばして出札1枚だけ弾き飛ばした会心の取り。出札は千里の右側中段の外側。先ほど送った「ひさ」の近くにあったこともあり、光輝としては狙いやすい位置にあった。まるで1字札を取るかのような速さで普段は選手の感じを狂わす千里も虚を突かれた。
気、音、体への反応が充実してきた光輝はここから、さらに連取を重ねて、30枚目「みせ」が読まれた時点で千里19-17光輝といつの間にか逆転していた。
千里は確かに波が激しいタイプではあるものの、この日は比較的、安定感のある取りを見せている。とにかく、この日がA級デビュー戦とは思えない光輝がA級入賞実績の豊富な千里を凌駕しているのだ。
「あっ……!」
そして、32枚目、「ひとは」で光輝は自陣を拾うが、千里はたまらず「ひさ」に触ってしまう。これで千里20-16光輝と先ほどまでのリードとビハインドがそのまま逆転した。




