ついに対決! 光輝VS.千里② 暗記時間に見る似通った二人の仕草
「それでは今から、暗記時間を始めます。こちらの時計で……」
暗記時間に入ると、光輝はいつも通り、安座を組み、後ろに手をつく気だるげかつリラックスした様子で札の配列を俯瞰するように眺めて、暗記を始める。
一方の千里はぺたん座りをして、手をやや真横につきながらの姿勢でこちらも俯瞰するように眺める。
座り方の違いこそあるが、どちらも似たような仕草で暗記を始めた。
そして、大体、試合開始5分前ぐらいだろうか。光輝がこれまたいつも通り、左手を前につき、利き手の右手を後ろに回して、少し身を乗り出す。そこから指を動かし、暗記の最終確認。小さい頃からのルーティンだ。
一方の千里もほぼ同じタイミングで横でついていた両腕を前に突き出し、こちらも身を乗り出すように暗記の最終確認をするように首をこまやかに動かす。
「2分前です!」
運営の人から試合開始2分前の合図が出る。
「「失礼します」」
光輝と千里が互いにそう言って、ほぼ、同時のタイミングで立ち上がる。
光輝は羽織ってるシャツの胸ポケットに忍ばせてる母親の形見でもある薄青色のお守りをポケット越しに握りしめ、目を閉じる。
一方の千里も首からぶら下げているアミュレットのペンダント部分をポロシャツ越しに握りしめて、目を閉じる。
「……大丈夫、味方だから、大丈夫…………」
光輝は昔、母親にかけられて安心した言葉を小声でつぶやき、それを何度も繰り返す。
「神よ、私に栄光を追い求める力と、敗北を受け入れる潔さを与えてください。そして、相手への敬意と、喜びを分かち合うことができますように。私の心と体をあなたに捧げます……」
それに対し、千里の通う高校はキリスト教系の学校だからか、小声で祈りの言葉をつぶやいているようだ。
「Amen」
最後にそう言って、スッとペンダントを取り出し、そこに軽く口づけを交わす。
(なんか、あの子、みーくんと似たルーティンしてるなぁ……)
そんな二人の様子を見た結姫はなにか心のひっかりを覚えた。
そして、1分ぐらい経って、二人とも着席し、軽く素振りを行う。周囲が畳をバンバンと叩く中、二人は静かに手と出札の距離を確認する程度の素振りだ。
無暗に畳を鳴らさないと小さい頃からかささぎ橋の大人たちに叩き込まれた光輝は今もその教えを忠実に貫いている。7年前に小学生離れした光輝の試合を見ていた千里も無暗に畳を叩くような素振りをすることはない。
確かに結姫の見立て通り、二人は試合前のルーティンがとても似通っていた。
いや、小さい頃の光輝にあこがれた千里がそれを参考にし、光輝もそのままだから、似るのは必然だったのだろう。
「それでは、はじめます!」
会場に座ってる全員が「よろしくお願いします」と相手と読手に一礼をして、読手が「なにはずに~」の序歌を詠み始め、試合がはじまった。




