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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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ついに対決! 光輝VS.千里① 「今日はあたし史上、最高の試合になると思うな」

「組み合わせ、きめまーす!」


 準決勝の組み合わせ抽選が始まる。残ったA級の4人の心持はそれぞれ。目黒クイーンが千里をやや警戒するように睨み、その千里は視線に気づいてないのか、ただただ、そろそろ光輝(みつき)と当たらないかと期待の眼差し。その眼差しに腕を組みながら困惑気味の光輝。田中はここまで来れば誰が来ても一緒だと目黒クイーンが控えていても臆する様子はない。

 準決勝の組み合わせが決まった。


 目黒さやか(東京文化大付・東京)×田中知佳(越前南・福井)

 一色千里(桜光女学園・山口)×四条光輝(翔国・大阪)


 目黒クイーンとの対決が決まり、緊張感の中に気合いも入る田中。

 ついに千里にとっては待望となる光輝との対決に。それに決勝をかけた大一番だ。俄然、テンションが上がらないわけがない。

 光輝も千里ほどの実力者に試合をしたいと言われて、悪い気はなく、光栄なことだと感じていた。光輝がライバルを見るがごとく、彼女の方に目を向けた。

 すると、彼女は明らかに目は笑っていたのだが、なんか結んだ口元が引きつっている。気を引き締めようにも、うれしさを抑えきれず、笑いをこらえているのか、そういった気持ちを悟られないようにしているのか、なんともいえない顔をしていた。


「…………」


 それに対し、光輝もなんともいえない反応しかできなかった。とりあえず、二人は申し合わせたかのように浦安の間に入って、自分の席へつく。光輝はいつも通り、マイ座布団を置いてからポスっと座る。


「そういえば、座布団使うようになったのねー」


 さっきまでニマニマしてるのかしてないのか複雑な表情をしていた千里が光輝の前にぺたんと座り込んで口を開いた。そして、光輝はそのセリフに違和感を覚えた。


「前は使ってなかったのにね」


 やはりだ。彼女は昔の自分のことを知っている、光輝はそう確信した。

 だが、当の光輝には心当たりがない。おそらく、小学生時代、同学年では大勝続きで敵なし。その時に対戦した有象無象のうちの一人だったのだろう。


「ふふ、なんで知ってるんだって?」


 すると、千里は光輝の心を見透かしたように言う。


「四条くんは覚えてないかもしれないけど、7、8年前? あたしが小4の時、小・中学生大会の1回戦でいきなり当たったのが四条くんだったの」


「あぁ、俺が最後に出た時か……」


 光輝はそれを聞いて、そういえば1回戦の相手が女の子でそんなこともあったなぁとおぼろげながら記憶を引っ張り出した。ただ、今、目の前にいるのは小4の10歳ぐらいの女の子ではなく、17、18歳の女子高生。記憶の中の姿、形は一致しない。


「やっぱり、それが最後でしたか。あれから、めっきり名前、聞かなくなったもんね。その時は25枚差で負けちゃったけど……」


「当時はガキだったっていうのもあるけど、我ながら大人げない……」


 と、光輝は苦笑しながら言うが、


「ううん。あたしね、うれしかったの。あの頃のあたし、すごい弱かったから。そんなあたしにも本気で札を取りに来て、勝負してくれて…………

 絶対に勝てない相手なのは明らかなのに、そんな相手から1枚だけでも取れたの、うれしかったな~。今でも四条くんの陣にあった『いに』を抜いた時の取りは一番の取りだと思ってるんだ~」


 その話を聞いて、光輝もはっきり思い出した。決して、暗記が抜けていたわけでも、反応が遅れたわけでもなく、純粋に速さ勝負で自陣の札を取られたのだ。この記憶だけは鮮明に残っている。


「そのあとに四条くん、『また、やろう』って言ってくれたの。ぼろ負けだったけど、あたしも楽しかったから、今度はもっと強くなって、対等に試合できたらなって…………そしたら、四条くんもきっと楽しいよねって」


「…………」


 しみじみと語る千里は先ほどまでの気だるげな感じやだらしない笑顔を浮かべていた様子とは一変。充足感に満ちた表情を浮かべながら、その眼差しはしっかりしていた。


「その思いだけで、今日まで取り続けてきた。いつか、四条くんと試合ができる日が来るって信じて」


 千里の思いの詰まった告白に光輝は息を呑むしかなかった。何年も大会の表舞台から去っていたことを申し訳なく思った。


「今日も朝一番で近江神宮の神様にお願いしたの、四条くんとかるたが取れますようにって。あたしの学校、ミッションスクールなのにね。神様、ケンカしないか心配だったけど、ちゃんと、願い叶っちゃった。アハハ」


 先ほどの千里の告白に空気が重たくなったのを察してか、千里は軽く笑って場を和ます。それを受けて、光輝は、


「でも、あの頃とは立場が逆だ。今じゃ、千里の方が実績も強さも上だからなー。ご期待に添えるようなもんじゃねーよ」


 気だるげな口調で返事をする。


「そうかもしれないね。でも、強さだけは上かどうかわからないよ。今まで大会に出てなかっただけで、かるたをやめてたわけじゃなかったんでしょ? でなきゃ、ここまで勝ち残れないし、あんな取りできるわけない」


「む…………」


 千里はどこかつかみどころがないようだが、見るところは見ている。先ほども試合終盤のみだが、しっかりと光輝の取りは見ていたようだ。


「それでは、札を並べてください!」


 会場にいる役員から声が上がり、場に座っている人が一礼をして、まずは試合用に組まれた50枚を一斉に混ぜる。それに合わせて、千里も口を一旦、止めて視線を落とすと、言い忘れてたかのようにぼそっとつぶやく。


「今日はあたし史上、最高の試合になると思うな」


「…………」


 A級で対決もしたことない自分がなぜ、ここまで買い被られてるのか。

 そんな疑問を抱く光輝。こう言われて、最高の取りをしないわけにはいかない。光輝も静かに闘志を燃やした。

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