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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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光輝のA級デビュー高校選手権個人戦⑦ 激突!準々決勝の戦い

 そして、高校選手権個人戦のA級の部の準々決勝の組み合わせはこのようになった。

 

 一色千里(桜光女学園・山口)×石崎良太(成光・東京)

 上村望(仙台共栄・宮城)×四条光輝(翔国・大阪)

 田中知佳(越前南・福井)×池山久美(北浜松・静岡)

 目黒さやか(東京文化大付・東京)×大谷一平(北宇都宮・栃木)


 席は光輝(みつき)と千里が斜めに向かい合う形になった。


「えへへ~。ここからだと、四条くんの取りが見えていいな~」


 千里はだらしない笑顔を浮かべながら言った。


「アホなこと言ってないで、試合に集中しとけよ」


「ハ~イ」


 ぶっきらぼうに光輝が言って、気のない返事をしつつお互いに相手に向き直る。


(チッ、俺のことなんて眼中にないってか、一色千里……! それにこの隣の男はなんだ? 今日がA級デビュー戦らしいが、いきなりポイントを取るとはな)


 石崎は目の前の相手の千里の様子に苛立ちを隠せない。


(さやかさんが苦戦するほどの相手だが、好不調の波が激しいことは知っている。さやかさんが相手をするまでもない。俺が引導を渡してやる!)


 だが、その苛立ちは割り切って、平常心を取り戻すべく試合モードに切り替える。

 しかし、それは千里も一緒だった。試合が始まると、


「これやこの~」


(!?)


 読手が読み上げると、千里が石崎陣に手を伸ばし、「これ」の札を抜き去る。周りもダダダッと畳を叩く音を立てて、それに続く。千里が手を伸ばした、いや、出した瞬間、石崎の手が一瞬止まったような感覚になった。


(なんだ、今の……? 感じを消された?)


 石崎は不思議な感覚に捉われた。音に対して、反応して手を動かそうとすると、千里の手が伸びてきて、それにつられるのか手が伸びなくなるのだ。

 確かに相手の手が自分より速く出ることで感じを消されるということはある。石崎とてその手の相手はA級やそこまでに至る過程の中で幾度も経験している。

 しかし、この手が止まる感覚は明らかにそれとは違う異質のものだと石崎は感じた。


(そうか。さやかさんはこの独特の感じにやられたのか……!)


 石崎は相手の特徴を感じ取ったが、試合中に修正までは間に合いそうにない。

 それどころか相手の感じを上回ろうとすると、自分の取りのフォームを崩してしまう。この千里の独特な感じに振り回されるように序盤からペースを握られてしまった。

 試合は結局、12枚差で千里が石崎を下した。他方では目黒クイーンが順当に大谷を14枚差で下していた。

 ほぼ同じタイミングで試合を決めた二人だが、お互い無関心で試合札を受付へと返しにいき、試合の結果を伝える。目黒クイーンは選手控室の方へと戻り、千里は試合会場の方に戻って、残った二組、早い話が光輝の試合を見にいくことに。


(へ~、あたしがちらっと見た時はセームぐらい(同じ枚数差)だったのに、四条くんは残り2枚かぁ)


 光輝と上村の試合は前半から一進一退の攻防だった。


(この上村ってやつ。ゆき(ねえ)から聞いた話だと、この春の全日本選手権で舞さんに運命戦までいったらしい。ここまで来るだけの実力はあるし、攻めも速く、鋭い感じだ……)


 しかし、序盤から動く試合展開の中、光輝は獲物を狙う獰猛な獣のような目つきをしつつ、抜け出す機会をうかがっていた。


(序盤から出札が多くて、試合が動きやすい展開。まだ、(決まり字が)決まっていない札も多い。なんとか、ここを凌げば…………!)


 上村8―8光輝のところ、「なげ(き)」で上村は自陣にある「なが(か)」を触ってしまい、光輝はしっかり聞き分けて、自陣の「なげき」の札を守る。いわゆるセミダブだ。


「よしっ!」


 抜け出すチャンスが訪れたとばかりに思わず光輝が声を上げる。

 さらに光輝は確実な攻めと堅実な守りでじりじりと上村を引き離し、試合は上村6―2光輝に。ここでちょうど、先ほど試合を終えたばかりの千里が試合会場に戻ってきたというわけだ。

 光輝は試合を決めにかかると、上村陣のまだ決まっていない「はる(す)」「うか」をそれぞれ攻め取り、6枚差で準決勝進出を決めた。


(後半はスピード勝負になったら不利だから、運命戦を覚悟してたけど…………俺にしてはいい感じで攻めることができたな)


 光輝は試合を重ねていくうちに、そして、今の上村との一進一退の試合展開で何かをつかみかけていた。自分でも取りが冴えてきているのがわかった。

 それがなにかはわからないが、この3試合でトンネルは脱したことは確実だった。意外かもしれないが、これまでの2試合は首を傾げつつの試合だった。

 光輝は受付へと札を返しにいって結果報告をした後に、選手控え室へと戻り、水分と糖分の補給をする。


「みーくん、また、よく勝ったね~」


「我ながら、いい感じで取れたと思うんだ。今の試合」


「うん、上村君が相手なら出札によっては厳しいかなと思ってたんだけど……枚数差は少ないけど、今日一番のみーくんらしい取りだったな。スランプは脱したみたいね」


「うーん、調子いいかはわからないけど…………」


 と、光輝は顎に手を当てて考え込むような仕草をするが、


「悪くはないね」


 朝よりもずっといい表情をしていた。悩める時間は終わったかのように。


「ま、ここからは誰が来ても強いんだし、日頃の行いの成果を出すだけだよ」


「…………そうだね」


 一戦、一戦、最善を尽くして取ろうとする光輝。一戦ごとに勝利して戻ってくる光輝に安堵の表情を浮かべる結姫。すでに鮮烈なA級デビューを飾っているが、光輝も結姫も目の前の一戦に集中するだけだった。

 ちなみにもう一試合は越前南の田中が運命戦を制して、準決勝進出を決めた。

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