↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
155/157

総文祭 準決勝と決勝の結果

 大会も佳境に入った総文祭も準決勝と決勝を残すのみとなった。準決勝は先ほど大阪代表に勝利した東京代表は京都代表と、もう一つは準々決勝でかるた強豪県の静岡代表とカリスマ性の高い星央高校・相羽世那主将を擁する埼玉代表との顔合わせとなった。

 格下と思われた大阪代表相手への苦戦に加えて、さやかが帰った影響で主将の石崎が気落ちし、それがチームにも伝わったか。安定感があり、チームバランスのいい京都代表に敗北し、連覇は夢に消えた。静岡代表と埼玉代表の試合は地力に勝る静岡代表が埼玉代表を圧倒し、ストレートで勝利して決勝進出を決めた。

 3位決定戦は東京と埼玉の関東勢の対決になった。東京代表が有利と思われたが、大阪戦の時と同様、序列の低い選手を起用し、打倒・東京に燃える埼玉代表は主将の相羽がムードを作り、終始、優位に試合を進めてノーシードから3位に輝いた。逆に東京代表は準決勝以降、気落ちした石崎がムードを作ることができず、らしくない戦いで敗戦となった。


「相羽センパーーーイ! おめでとうございま~~す!」


 観客席から星央だけでなく、埼玉代表の高校の女子部員からも黄色い声援が飛ぶ。それに相羽は前髪をかき分けつつ、爽やかな表情を振りまきながら、「ありがとう」と手を挙げて返す。その対応に女子たちは「キャー!」とさらに甲高い黄色い声を出す。

 この相羽という男、ただしイケメンに限るという色物ではなく、もともと爽やかかつ謙虚で人当たりもいい。今大会、予選リーグで試合した人たちには段位や級位、力関係などなしに敬意を表して、試合後に握手を求める光景が印象に残っていた。

 普段から、このような振る舞いをするため、噂によると、県内のかるた部には『世那くんFC』なるものがあるそうだ。光輝(みつき)とはまた違うタイプで人を惹きつけるカリスマ性を持つ。その力が見事に発揮された3位決定戦だった。

 一方の3位決定戦に敗れた石崎からしてみれば、この相羽の対応が癪に障り、屈辱だった。相羽が爽やかに求める握手にも拒否の反応を示す。


「なにあれ、感じ悪~い!」


 当然ながら、それを見た相羽ファンの女子集団は石崎に対して、悪印象を抱いてしまう。当の相羽本人は「負けたばかりで悔しいんだろう」と気にしていない様子だが。


「私は石崎君がちょっと可哀そうだな……」


 結姫(ゆき)はその様子を見て、むしろ、石崎に対して同情の声をぽつりとつぶやいた。


「いや、自業自得だろ。あんな態度見せられたら、誰だっていい気しねーだろ」


 昨晩、石崎本人から結姫を下げる発言を聞かされ、彼の人間性を疑う光輝は結姫が石崎を庇う言動に不満を覚えた。


「彼の態度がよろしくないのは確かだけど、前年優勝して、大型チームを率いる主将ってだけでも相当、重圧あったでしょうし。なにより、慕ってる目黒さんに途中で帰られて、寂しそうだった。さっき、新条さんや一色さんとかにも言ったけど、目黒さんとチーム組んでこの大会に出たかったんだろうな……って思うと、私は彼を責めることはできないかな」


 千里から昨晩の話を聞かされた上で結姫はつとめて大人の対応を見せる。光輝も昨晩の石崎の言動を人づてに聞かされたのを察したようである。


「それなら、クイーン様に直接、文句や不満の一つや二つでもぶつけろってんだよ。俺やあいつにぶつけてきて、こちとらいい迷惑だよ」


「まぁ、それもそうね」


 結姫はさやかと石崎の家の事情も先ほど聞かされて、そんな単純な問題じゃないことも認識してはいるが、それこそ光輝からしてみれば「知ったこっちゃない」という事情である。そんな光輝の態度を見て、結姫は肩をすくめて同意するしかなかった。


 もう片方の決勝は強豪県の静岡代表が優位に立つ展開で進む。主将の獅子崎里華子が光輝相手では機能しなかった低い抑え手を中心とした守りがるたで主導権を握る。二つ名となっている二木の城郭を炸裂させ、守りからチームのリズムを作っていき、京都代表の攻めを封じていく。劣勢の中、京都代表は主将の杉本が一矢報いるが、終始、優位に試合を進めた静岡代表がそのまま優勝を決めた。


「静岡、優勝ですわ~~~!!」


 里華子がそう叫ぶと、彼女を中心に歓喜の輪ができる。控えどころか、代表のメンバーから漏れながらもついてきた二木学園の部員や里華子の取り巻きもその輪に加わった。その輪の中で里華子は歓喜の涙を流しながら喜んでいた。

 先ほどの東京代表の石崎もそうだが、里華子も名門・二木学園とかるた強豪県の静岡県の代表チームの主将として、その重圧と戦っていたのだ。その重圧から解放された里華子は高飛車な態度を脱ぎ捨てて、仲間や普段は県内のライバルたちと喜びを分かち合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。