大阪代表ラストミーティング② 3年生組の挨拶(高山愛、山本渚、四条光輝)
次は六将の高山愛。
「私は今回、ほとんど貢献できなくて、最後も情けない試合をして、本当にすいませんでした。でも、桜女が今年の近江神宮の団体戦を逃してた中で最後に渚と並んで団体戦できてよかった。本当に結果は情けなかったけどね」
隣にいる山本に向けて言うと、お互い向き合って苦笑いを浮かべた。
「最後に3年生だからって理由で出してもらったけど、荻野さんや才木さんにももっと出てほしかった。来年は上級生として恥ずかしくない選手になってください。ありがとうございました」
悔しさや後悔が残る言葉が並んだ高山が深々と頭を下げて、最後に感謝の言葉で締めると拍手が巻き起こる。次は隣の桜女の山本渚。
「私も最後の試合が情けない結果になってしまって、悔しい気持ちもありますけど、仙崎君や渡辺さんが言ったようにここまで来れたこと、このメンバーに入れたことは誇りだと思っています。でも、今、思うことは…………」
山本が言葉を詰まらせ、ハンドタオルで目元を拭いつつ、顔を上げる。
「朝、教室着いて、授業受けて……放課後、和室にみんなで集まって……練習前にみんなでお菓子広げて食べて……夕方から練習が始まって、チア部や吹奏楽部の音がうるさいな~と思いながら、三枝の詠みを必死に聞いて……練習してる明日を想像してしまいます…………!」
山本がついに涙を堪えきれずに目元だけでなく、顔全体をハンドタオルで覆った。その姿に他のメンバーも目頭を熱くし、ぽろぽろと涙を流し、すんと鼻をすする音が聞こえてくる。
「でも、もう、そんな明日がないんだと思ったら…………寂しいの気持ちしか、思い浮かばないです…………! 愛、三枝、頼りない部長だったけど……最後までついてきてくれてありがとう…………!」
山本が嗚咽を漏らしながら、感謝の言葉を述べると、隣の高山、向かいにいた殿山が駆け寄り、桜女の3人で抱き合う。その光景に自然と拍手が巻き起こった。
「じゃあ、最後に主将の四条君から」
後藤先生からの紹介で光輝の番になる。
「え~っと…………みんな、おつかれ」
先ほどまでのしんみりとした空気はどこへやら。光輝の間の抜けた挨拶でメンバーから笑いが漏れ出た。
「お前、なんやねん、それ」
仙崎がからかい気味に答えた。
「いや、なんとなく…………え~っと、さっきの東京との試合前、あれだけ勝ちたいって言って、当然、負けて残念っていうのはあるんだけど、それよりも自分の中ではここまで行けた達成感みたいなのがあって、後悔とかそういうのはなく、やりきったなーという思いです」
先ほどまでしんみりかつ涙声や涙顔になりながら、しゃべる人がいた中、光輝は本当にすっきりとした表情で淀みなく答える。
「俺は今年の春までこんな舞台に立てるなんて夢にも思わなかったから、5月から今日まであっという間で楽しかった。俺の高校って、活気のある男子校だけど、その分、男ばっかでむさっ苦しいんだよな。男友達とつるむ日々も悪くないと思ってたけど、野球部やサッカー部のみんなが気持ちを思いっきりぶつけて、取り組んでる姿を見てると、なんか羨ましくて…………
この総文祭のメンバーに選ばれてから、ほんの数か月だけど、部活してるみたいで、なんか青春してるみたいで楽しいし、うれしかった。さっき、山上会長にも言ったんだけど、この大会がなかったら、今回のような経験はできなかったから、こんな機会をもらって、自分をこのメンバーに選んでくれて、受け入れてくれて、ホント~~~っにありがとう」
光輝がこのような言葉をつらつらと並べると、結姫が目をうるうるさせ、すすり泣きながら、光輝のスピーチの模様をスマホで撮影していた。
「なんで、ゆき姉が泣いてんだよ」
光輝が「泣く要素なんてないだろ」と呆れたような声で言う。
「だってぇ…………みーくん、今年の春まで高校でのこと聞いても、『普通』としか言わないし、『自分は青春とは無縁だ』とか、そんなことばっかり言ってて…………その頃のことを考えたら、こんなこと言ってる姿なんて、想像できなかったんだもん…………!」
結姫がぽろぽろと涙を流し、顔をくしゃくしゃにしながら言うと、光輝は微笑を浮かべて、結姫のもとへと近寄る。
「そうだよな。俺もこんな日々が送れるなんて思わなかったよ。でも、そんな日々を送れるようにずっと準備してくれてたんだよな、ゆき姉は」
しおらしく言う光輝に結姫は黙って、コクコクと頷く。
「俺との毎日の練習はもちろん、強化練習も付き合ってくれて、この大会も応援に来てくれて、チームとしても俺としても感謝してもしきれないよ。ホントにありがとな」
光輝が優しい口調で結姫に声をかけると、彼女はさらに感極まって、片方の手でスマホを構えつつ、もう片方の手で泣き顔を覆った。
「短い間だったけど、みんな、こんな自分に付き合ってくれてありがとう。俺からは以上」
光輝がスピーチを終えると、気持ち大きめの拍手が起こって、3年生全員の挨拶が終わり、今年の大阪代表のラストミーティングが終わったのだった。




