決勝トーナメント準々決勝 VS.東京代表⑨ 緊迫の試合終盤へ、見えてきた大金星
今の光輝の取りを見たギャラリーの皆さんはと言うと、
「四条くんなら、あれぐらい当たり前よね~。あたし、まだ決められたことないから、一度、近くで見てみたいな~」
「みーくん、攻めの渡り手は得意なのよね。あれだけは私も敵わないなー」
千里が憧れのようなワクワクした様子で言うと、結姫は見慣れたようなノリで言う。
「あの相手陣での高速の渡り手、まさに四条の父・四条悟元名人譲りの取りだな。あれだけじゃない。音に対する反応、払い手の精度も高校生離れしている。よくぞ、あの若さで斯界の最高峰ともいえる技術を身につけたものだ。惚れ惚れすると同時に末恐ろしいぜ」
末恐ろしいなどと口にしながらも新条はどこかうれしそうで、感心した様子で語る。
「そういえば、目黒との試合でも潮目が変わったのは『かぜそ』と『かぜを』の渡り手だったな」
「あの時はただ感じが速いだけ。今の方が渡り手としての技術と精度は高いですの。わたしでもあんな取りをされたらお手上げですの。石崎が手も足も出ないのも仕方ありませんの」
珍しいほどにさやかが他人のかるたの取りに関心を示し、それを見た3人が「ほぅ」や「へぇ~」という反応をする。
「でも…………それ以外の札を取れば問題ないですの。たぶん、単独札ならわたしの感じの方が上…………」
と、同時にさやかはそう付け加えた。
試合の方に戻ると、空札を1枚挟んで、「はなの」の次に詠まれた66枚目はまさかの友札である「は(なさ)」。これも光輝が光速の攻めで取り、石崎18-2光輝と1勝目を視界に捉えるが、1番席では20枚差で東京代表の高田が勝利を決めた。68枚目「わび」で新堂がお手つき、ここで仙崎がついに10-10とタイにつける。その直後の69枚目「やえ」では東京代表の4選手全員の取り。2番席の草野が山本を下し、東京代表が2勝目をあげて準決勝進出に早くもリーチをかける。3番席の主将対決は光輝が俄然、優位な状況に変わりないが、他の席は大阪代表に簡単に主導権を渡さない。
そして、直後の71枚目「あけ」で森田がお手つきをして、柳田がじわじわと差を詰めていく。柳田が粘り、新堂が仙崎との一進一退の攻防を演じている間に光輝が14枚差で石崎を下した。
「大阪、1勝」
「ナイスー!」
今のところは光輝が東京代表相手に一矢報いるという形。光輝の勝利の報告の呼びかけに山本と高山も反応するが、大敗と王手をかけられてる状況で声に覇気がない。
試合も終盤に入り、柳田がようやくA級の力を発揮して猛追するが、逆転にまでは至らない。この大会を通して成長した森田が粘り、4番席の新堂と仙崎の試合は相変わらず新堂が僅差のリードを保ったまま一進一退で進む。81枚目「あさ(ぼらけう)」の時点で柳田6-4森田、新堂4-6仙崎とどっちに転ぶかわからない試合展開だ。
2枚の空札を挟んで、84枚目「お(く)」で新堂は攻め取るが、柳田が痛恨のダブルを犯してしまう。柳田は気を取り直して、86枚目「こ(れ)」から3連取して、盛り返すも89枚目「き(みがためを)」は森田がこの夏で磨き上げられた渾身の攻めで抜き、A級相手の大金星にリーチをかける。さらに時を同じくして、仙崎も3連取を決めて、試合をついにひっくり返し、柳田4-1森田、新堂3-2仙崎と森田個人だけでなく、大阪代表が前年優勝の東京代表を下す大金星も見え始めてきた。




