決勝トーナメント準々決勝 VS.東京代表⑦ 試合開始! 動揺する石崎
「なにわずに~~~」
(さやかさんがいなくとも、東京は強いというのを俺たちの完全な勝利で見せつけてやる! そして、さやかさんにその戦いぶりを認めてもらう……!!)
そう胸に秘めて、観客席で見守っているはずのさやかの方に視線を移した石崎。
「なっ…………!?」
観客席の方を見ると、石崎は絶句する。先ほどまで無関心そうな表情をしつつも試合を見物していたさやかの姿がなかったからだ。
(そんなバカなっ……! さやかさん、なぜだ? いったいどこへ?)
さやかに土をつけた光輝相手にいい勝負、あわよくば勝利を見せたいと思っていたところにさやかが見限られたと思った石崎は試合開始直後にして、動揺を覚えてしまう。
「大阪ファイト―ッ!!」
「ファイト―!!」
向かいの席から団体戦の戦い方も板についてきた光輝のかけ声とそれを返す大阪代表の選手たちの声が響く。
いつもなら、団体戦強者の石崎の方がここから主導権を握るのだが、さやかの不在に動揺していた石崎はかけ声のタイミングが遅れてしまう。
「あっ……と、東京、ファイトー!」
「……は、ハイッ!」
石崎のテンポが遅れたことで、他の選手もタイミングが合わずちぐはぐなかけ声となってしまう。東京代表は試合開始直後にして、どこか慌ただしくなった。
すると、試合は1枚目「みせ」で石崎の盛大なお手つきからスタートする。その後、2枚目「あはれ」、5枚目「なげき」でそれぞれ取り合うが、その後、10枚連続の空札が詠まれる。この間にこらえきれずに13枚目「かぜそ」で自陣を触るお手つき。光輝が労せずして、4枚のリードを奪う。
(コイツ、あれだけ昨夜、言いがかりつけてきたくせに全然、集中できてねーじゃねーか。コイツこそ舐めてんのか?)
ただでさえ、石崎にもともと苛立っていた光輝はこの試合の態度でさらにカリカリしている。
16枚目「なつ」からは一転して出札ラッシュ。この好機を光輝が逃さないわけがない。17枚目「わがそ」から5連取するなど、着実にリードを広げていく。石崎もついていくが、出だしの2度のお手つきの差が大きくのしかかる。26枚目「たま」が詠まれた時点で高田15-24高山、草野17-22山本、石崎22-17光輝、新堂18-21仙崎、柳田23-16森田。
光輝は石崎がふらふらしている隙を突いて、リードを広げるも他はもともと格上の選手ゆえ、順当に東京がリードを奪う。しかし、ここでも健闘しているのが5番席の森田。10枚連続の空札の間の柳田のお手つきと、先ほどの出札ラッシュで効果的に攻めた森田がA級の柳田相手に大きくリードを奪う。柳田のエンジンのかかりが悪いのもあるが、森田がすでにC級に上がったばかりの選手とは思えない取りを見せている。この大会でさらに一皮むけたようである。
32枚目「やまざ」から東京代表の高田と草野、大阪代表の光輝、仙崎、森田がそれぞれ3連取したあたりで試合が大きく動き始める。高田と草野の二人は淡々とリードを広げるが、新堂は仙崎相手になかなか差を広げることができず、その間に逆転を許したりしてしまう。そして、光輝は取りに精彩を欠く石崎を尻目に札を縦横無尽に淡々と取り、森田もA級の柳田相手に果敢に札を取っていく。柳田も札を取れるようになってくるのだが、自らのお手もあり、差を詰めるまでには至らない。
55枚目「きり」が詠まれた段階で高田3-21高山、草野5-19山本、石崎17-7光輝、新堂10-14仙崎、柳田16-8森田。
依然、大阪代表は光輝と森田がリードを保ったままだが、1番と2番席は東京代表の2人の勝利が秒読み段階まで来た。東京代表にとっては森田の健闘が予想外だが、新堂が仙崎に食らいつかれながらもこのままのリードを保っていければ、東京代表の勝利は揺るぎない。




