決勝トーナメント準々決勝 VS.東京代表④ 試合前、観客席では
決勝トーナメント準々決勝に進んだ8都府県の選ばれた選手たちがレインボードームの畳が敷かれた体育館スペースに集まった。
大阪代表はここで前年の優勝チームで今年も優勝候補の東京代表と対峙することになった。役員から席順が読み上げられ、選手がそれぞれ指定された場所へと着席する。組み合わせは以下のようになった。
※左が東京、右が大阪
1・七将 高田瑠璃(神田川女子大付②・A級四段)×六将 高山愛(桜花女子③・D級初段)
2・八将 草野毅(駒場南③・A級四段)×三将 山本渚(桜花女子③・C級二段)
3・主将 石崎良太(成光③・A級五段)×主将 四条光輝(翔国③・A級四段)
4・四将 新堂幸喜(関東三③・A級四段)×副将 仙崎拓也(春日山③・B級三段)
5・六将 柳田慎吾(成光③・A級四段)×七将 森田奈月(りんくう佐野ウイング②・C級二段)
東京代表はこの準々決勝で新条の予想通り三将・千代田を外してきたが、副将の安田まゆらも温存してきた。将順位の高い選手は主将の石崎を除けば、四将の新堂ぐらいか。とはいえ、東京代表は8人全員がA級でも入賞経験のある選手が揃う。
(まさか、本当に四条との対決が実現するとはな。この男が3番席に来るとは予想外だった。端に来ると踏んだんだがな。だが、四条以外なら普通にやれば勝てる選手たちだ。勝つのは俺たち、東京代表だ……!)
石崎は目の前で対峙する光輝との当たりに驚くも冷静に他の組で対処できる組み合わせだと認識した。もとより、全体的に段位や級位で上回っており、まともにやれば東京代表が絶対的に優位である。
(俺とて、こいつに簡単に勝てるとは思っていない。さやかさんに勝って、A級優勝するようなこの男に粘った末に負けることがこの試合での俺の最低限の役割だ。大阪代表がここまでの躍進を遂げた要因は四条が相手のエース格の選手を大差で下して、チームにムードをもたらし、相手にプレッシャーを与えたからだ。実力的にも空気的にもムードを作れる選手が団体戦では強いんだ)
昨夜、光輝に対して啖呵を切った石崎だが、実力差や大阪がただ不思議の勝ちだけで勝ち上がってきたチームではないことを見据えたうえでの今回の選手起用だ。おそらく、万一、光輝と当たってしまった場合のシミュレーションも想定したのだろう。
(四条には勝てずとも、対抗できるという力をさやかさんに示さなければ…………見ていてください、さやかさん)
と、強く思う石崎がさやかのいる観客席へと目を移す。そこには無関心そうに見ていた彼女の姿が映っていた。
ギャラリーの集まる観客席の方では1回戦に続き、控えメンバーの他に結姫、千里、新条愁永世名人、目黒さやかクイーンが少し離れつつも並んで座っていた。
「本当にあの人、不思議ですの。先ほどの話し合いの場でもいつの間にか中心になってましたし、あの人の一言であんなに盛り上がって…………」
しかし、当のさやかの興味は別で光輝を羨望の眼差しで見ながら口を開いた。
「人を惹きつける何かがあるよね~。四条くんに触れた人なら、みんな、そうなっちゃうんだよ。さやかちゃんも四条くんのカリスマ性にメロメロですか~?」
「だから、そういう風に結びつけるのやめろ、ですの」
足を組み、頬杖を突きながら、揶揄うように千里がさやかに問うと、さやかは表情は崩さず、アイスを舐めながら淡々と答える。ただ、口調の端々には心底うっとうしそうな感がある。
「それにあなたがさっき言った札に愛されてるという、あの言葉。そこにわたしとあの人の差があると感じてますの。でも、今のわたしにはそれがわからない、考えると胸がチクチクと痛みますの…………」
そう言ったさやかに結姫と千里は「え、それって?」みたいな反応をしたのに対し、新条は「ほぅ……」という反応を示した。
「そういえば、不思議に思ったんだけど、なんで、さやかちゃん、東京のメンバーに入ってないの?」
「まず、興味がありませんでしたの。それにお父様の許しが得られませんでしたので…………」
千里がさやかに尋ねると、それ以上の答えが出ないといった空気になり、話が一旦、終わってしまう。ある程度の事情は知っている新条もただ黙るだけで、結姫と千里も込み入った事情がありそうだと察した。




