決勝トーナメント準々決勝 VS.東京代表③ いざ、準々決勝へ
嵐が通り過ぎたように落ち着きを取り戻すと、とりあえず結姫が口を開く。
「え~と、新条さんの言葉を鵜呑みにするなら、みーくんは3番席に座って、石崎君の相手をすることになるけど…………みーくんはいいの?」
「いや、好都合だ」
「みーくん……?」
「昨日も言ったけど、チームを勝たせるなんて、偉そうなこと言えないし、できるほどの力はないけど…………でも、やるんだ。そのうえであいつは、石崎の相手は俺がやる」
光輝が覚悟を決めた表情で語気を強めながら言う。
「よっしゃ! その話、俺も乗ったで!」
仙崎が景気よく喋る。
「そ、そうよ! 今なら、東京だろうと静岡だろうと勝てる気がする!」
「そ、そうですっ! 今なら、なんだってできる気がしますっ!」
山本と森田も仙崎に続くように威勢よく声を発する。
「お前にだけは背負わせへんで。俺らはチームやからな」
「仙崎、みんな…………」
仙崎がそう言って、光輝が周りを見渡すと、仙崎をはじめ、チームメート、後藤先生、読手コンクールに出た殿山も理解のある顔をして光輝を見ていた。
「ありがとう、みんな。俺のわがままに付き合ってくれて……」
「お前がおらんかったら、ここまで来れてへんやろうしな」
こうして、東京代表の試合の勝利をめざして、出場選手と席順を決める話し合いが行われる。
先ほどの青森代表との試合で渡辺の調子が悪かったため、前日の試合で勢いのあった高山と才木のどちらか一人を選ぶことにした。ここは山本と同じ桜女でチームメートでもあり、3年生というのを優先し、高山が選ばれた。
「よっしゃ、行こかぁっ!」
仙崎が景気よく発し、試合に選ばれたメンバーが意気揚々と体育館スペースへと向かう中、光輝が一人、立ち止まり、結姫のもとへと駆け寄った。
「ゆき姉」
光輝が結姫に呼びかけ、彼女も次に続く言葉を待つ。
「行ってくる」
さっきまでの覚悟を決めたような思いつめたような表情ではなく、いつもの穏やかな表情を浮かべながら言った。
「みーくんに何があったのか知らないけど、私はいつでもみーくんの味方だからね」
「うん、そうだよな。ありがとう」
「行ってらっしゃい、みーくん。心配してる私の顔、時々でいいから見てほしいな」
「気が向いたらな」
やや表情はいつもより硬く、どこか重圧を自分に与えてるような感を受けたが……
(大丈夫、何が起きたって関係ない。もう、みーくんはこの大会で勝ち負け以上に大事なものを手に入れたのよ。それに気づいてくれるだけでいい…………)
結姫はそう自分に言い聞かせて、光輝を見送った。




