決勝トーナメント準々決勝 VS.東京代表① 試合前ミーティング、永世名人からの助言
決勝トーナメント1回戦を勝ち抜き、準々決勝の相手は東京代表に決まった。
「皆さん、先ほどは本当にいい戦いぶりでした! 次は前年優勝チームの東京都が相手です。もう、何も失うものはありません。次も胸を借りるつもりで戦いましょう!」
後藤先生が感嘆しながらメンバーに語りかける。もともと、今年は自他共に予選リーグ突破も厳しいという事前評価だった。それが8強まで進んだのだから、快挙と言っていい。
現クイーンにも勝利し、高校選手権王者の光輝がいるとはいえ、この大会は団体戦だ。段位や級位などトータルで見れば、大阪よりも強力なチームは他にもあった。多少のくじ運はあったものの格上相手の金星も多く、決して光輝だけの力で勝ち進んだわけではない。全体的なチームの底上げがこの大会に入ってからもできたのが大きい。
「後藤先生、もしかして、次でもう終わりだと思ってますか?」
光輝が澄ました顔で聞くが、その眼光は鋭い。
「え?」
後藤先生が光輝のただならぬ空気を感じ取って、感嘆とした様子から驚嘆の表情へと変わった。
「でも、次の東京代表は全員がA級で入賞経験もあるメンバーで断トツの優勝候補ですよ。教師としては最初からあきらめろなんて言いませんが、負けてもともとという相手には違いないです」
「わかってます。俺が勝ったところで厳しいってことは……」
光輝がその言葉通り、険しい表情で言う。
「でも、俺はそれでも勝ちたい……!」
「みーくん、どうしたの? 何をそんなに気負ってるの?」
ここまで、勝敗や結果に固執する光輝は最近では珍しい。結姫が普段の様子と違うのを察して、心配そうに尋ねる。
「別に気負ってなんか…………」
「みーくん、なにか怖い顔してるよ」
こうまで勝ちにこだわる元凶が結姫なのだが、光輝は彼女を心配させまいと多くは語れなかった。
「でも、どうしても勝ちたいんだよ! ゆき姉、俺、あのチームに負けたくないんだよ……!」
前のめりな感じで言う光輝の目は本気だった。予選リーグの初戦や大一番の宮城戦でもこれだけ勝ちに対して“欲”を見せることはなかった。
「みーくんの気持ちはわかったわ。でも、どれだけ知恵を絞っても付け焼き刃の博打か気休めにしかならないと思うけど…………」
光輝の思いを汲んだ結姫だが、どう考えてもベストメンバーを組んで、最善を尽くす以外にない。
「そんなに勝ちたいか?」
席順について、悩んでいるところに思わぬところから鶴の一声が入った。




