決勝トーナメント1回戦 vs.青森代表⑥~劇的な展開の末、決着!~
今のかけ声は光輝なりの「次、『こころに』が出るよ」というメッセージだ。決まり字の変化はもちろん、残り札の枚数、今、何枚目かも把握できる光輝は幼少の頃からの長いキャリアによって培われた勘も相まって、中盤から終盤にかけて、次にどの札が詠まれるのかがわかるときがある。結姫もその精度が異常に高く、強化練習でまざまざと見せつけられた大阪代表のメンバーの結姫や光輝の予知能力の信頼は高く、二人の迷いを消すには十分だった。
しかも今の「大阪、ここからいこうかー!」というかけ声も絶妙だ。
ネタがわかれば、露骨に決まり字の変化や次の札が何を読まれるか教えるというペナルティものな行動である。ところが普通に聞くと、ルールやマナーに抵触しないチームを鼓舞するかけ声にしか思わない。
この勢いのまま、リーチをかけた仙崎は1枚守られるが、92枚目「うか」を相手陣で抜いた。
「大阪、3勝!」
「ナイス―!!」
仙崎が自身、チームにとっても逆転での3勝目のかけ声をすると、いつも以上にメンバーが大きな声で返事をした。今から、歓喜に沸くのが待ち切れないと言った感じだ。
「決勝トーナメント1回戦の大阪代表と青森代表の試合は3対2で大阪代表の勝利です」
決勝トーナメント1回戦の試合がすべて終わり、実行委員の人が勝敗を改めて報告し、一礼をして、正式に試合が終わった。
「よっしゃああああああああ!!」
列が解けて、仙崎が真っ先に両手をあげてガッツポーズをし、雄たけびを上げる。仙崎だけではない。渡辺と山本も金星をあげた森田を二人で抱きしめて、喜び合う。この快進撃の立役者の一人である光輝はその光景を満足げに眺めながら、チームメートや先生、結姫の待つ観客席へと歩を進める。
一方の敗れた青森代表は主将の葛西が泣き崩れて、「ごめん! みんな、ごめん!」と何度も繰り返すだけで、うずくまったまま、その場から動けない。たまらず、控えのチームメートが駆け寄って、抱きかかえて引き上げていく。他のメンバーも嗚咽をもらしながら、会場から引き揚げていく。
そんな勝者と敗者のコントラストが繰り広げられる中、光輝は観客席で待っている結姫と目が合った。
「みーくん、よくがんばりましたー!」
結姫がまだ遠めの位置から大きな声で呼びかけると、それを聞いた光輝は大きな声を出したくないのか、少し気恥ずかしかったのか、ただ黙って頭をかきながら、頷きつつ手を上げて答えた。無言の反応だったが、結姫の思いはたしかに伝わっていたようで、結姫も光輝に微笑みを返していた。




