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決勝トーナメント1回戦 vs.青森代表⑤~光輝の絶妙な声掛け~

 こっちも試合に戻る。その後も光輝(みつき)が61枚目「ちぎりお」、65枚目「ふ」、工藤も67枚目「きり」、69枚目「なにし」と札を取り合い、この時点で光輝2-16工藤。工藤も追い上げを図るが、光輝も着実に札を減らしていき、勝利は秒読み段階。もはや、何枚差で決着をつけるかが焦点となりつつある。工藤としてはチームのムードを作るためにも束負けは免れたいところ。

 しかし、71枚目「みかの」を光輝が守って残り1枚、勝利までリーチをかける。工藤はそこから2枚ほど守るが、75枚目「す」を鮮やかに攻め抜き、14枚差で光輝が工藤とのA級対決を制した。


「大阪1勝」


「ナイス―!」


 もはや、光輝が相手のエースを大差で下し、勝利の報告をして、他のメンバーが「ナイスー!」というかけ声でムードが上がるのも今大会の恒例になっている。

 光輝が1勝をあげた時点で、森田6-8佐々木、渡辺10-4蒔苗、仙崎9-5葛西、山本11-3小比類巻と1番席の森田が格上相手に奮闘しているものの全体的に大阪が劣勢。段位通り、順当に青森がリードをしているといった状況だ。

 このまま、押し切りたい青森だったが、今の副将の工藤の大敗がなかなかプレッシャーを与えてるようで、1番席以外のところが残り5枚を切ってから、なかなか攻めきれず、大阪代表に粘られる。そんな中で3番席に大きな動きがあった。

 81枚目「はなの」で仙崎が相手陣を攻めると、葛西が仙崎陣の「はなさ」を払ってしまいダブル。一気に1枚差まで詰め寄り、まったく試合がわからなくなった。仙崎はこのダブルとここからの出札ラッシュの千載一遇のチャンスを逃さない。攻めの手を緩めず、さらに連取を重ねる。

 小比類巻が10枚差で山本を、蒔苗が渡辺を8枚差で下して、青森代表が先に勝利へリーチをかける。しかし、この時点で1番席が森田1-7佐々木、3番席が仙崎2-6葛西といつの間にか大阪が優勢に変わっていた。1番席はもともと勢いのあった森田に佐々木が気後れし、3番席は81枚目の「はなの」でのダブルが大きく、仙崎が得意の攻めで活路を開けるとさっきまであったビハインドはリードに変わっていた。


「大阪、こ(・)こ(・)からいこうかー!」


「ハイッ!」


 と、光輝がさりげなくかけ声をかけ、それに他のメンバーも大きな声で返す。いわゆる持ち札や決まり字をチームメートに知らせる手段の一つなのだが、実を言うと「これ」が出て、「こころに」が『こ』決まりになったのはもう少し前。このタイミングで光輝が発したのが青森代表は意味深に聞こえてくるが、大阪代表は光輝の目を見て、アイコンタクトで返事を返し、まだ試合中の森田と仙崎は覚悟を決めるようにこくんと頷く。

 そして、光輝が言葉を発して、すぐの89枚目だった。


「こころにも~」


 パアンッ! と、森田、仙崎がそれぞれ抜群の速さで攻め取った。森田が金星で大阪に2勝目をもたらし、仙崎はA級の葛西相手にリーチをかける。

 この二人の狙いすましたかのような会心の取りに光輝は満足そうな、あるいはしてやったりのような笑顔を浮かべる。


(今日はなんか、冴えてるな、俺)

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