女子部屋での決勝トーナメントミーティング
ピンポンパンポーン。
と、話を落ち着かせようとしたところで部屋のインターフォンが鳴った。おそらく、噂になっていた光輝と仙崎、後藤先生の男組だろう。今まで聞き役に徹していた才木がドアを開けにいく。
「おー、邪魔するで~」
仙崎がそのように言って、部屋に入ると、山本や渡辺はじめ、女子たちは仙崎と光輝の二人を見てニヤニヤしていた。
「な、なんや…………今日は覗きとかしとらんで」
仙崎は昨日とはまた違った女子たちの反応に身構えながら言う。女子たちはまだ笑いがこらえきれない感じだが、森田だけは顔を赤くしたまま、ただでさえ、小柄な体をさらにこじんまりさせて座っていた。その様子を見て、仙崎がすかさず駆け寄る。
「おい、森田。お前、体調大丈夫か? 顔赤いで!」
仙崎は今日の第二試合のこともあったのだろう。純粋に森田の体調を心配している。そして、紅潮した顔を見て、熱があると思ったのかよりにもよって、森田のおでこに手をあてる。
「ひゃうっ!」
森田がびっくりして、軽い悲鳴のような声をあげる。
「おー、ごめんな。熱はあらへんか……」
「だ、大丈夫っす! ちょっと、熱いだけです!」
仙崎が意外と天然たらしなどという感想を抱いた女子たち。
結果的に仙崎の隣に座ることになった森田が少し幸せそうな笑顔を浮かべる。
「どうでもいいけど、さっさと始めて、さっさと終わろうぜ~。俺、さっさと寝たいからさ~」
そんな空気はお構いなしに光輝がぐで~っとした顔でそう言うと、決勝トーナメント1回戦のミーティングが始まった。すると、メンバー全員の顔つきと空気が変わった。
ちなみに結姫はホテルにチェックイン後、すでに就寝したようである。光輝曰く、結姫はスマホをスリープモードにして寝るタイプなので、RIMEの既読がつかないってことは朝まで起きないから、連絡しても無駄だろうとのことで、今夜は結姫不在でミーティングが行われた。
内容としては青森代表は予選リーグで戦った宮城代表に近いチーム構成で、席順や選手構成も同じ感じで行くことが話し合われた。A級2人というのも宮城代表と似通っているが、上村望のような絶対的エースがいないので、最悪、仙崎がA級に当たっても勝ちを狙えるのが違う点だ。席順はまた朝に微調整をすることなどが話し合われた。
もし、勝って8強入りした場合は東京代表、千葉代表の勝者が相手となるが、どちらもメンバー8人全員がA級の巨大戦力のため、勝ち目が薄い。ここで出番の少なかった選手たちを起用する『思い出出場』の試合にすることにした。
とりあえず、これでお開きという流れになったのだが、光輝は準々決勝の方針に納得しかねる表情だった。
「光輝、どうした?」
仙崎がそんな光輝を尋ねる。
「あ、あぁ。その、俺のわがままだし、無謀だとは思ってるんだけど、もし、準々決勝の相手が東京になった場合、俺は勝ちにいきたい」
「光輝……?」
「四条君?」
先ほどまで寝そうなほどの顔をしていた光輝だったが、仙崎や渡辺が何かあったのかと思わせるほどにクールな表情ながらも、ハートに熱いものがこみ上げていたのが表情から読み取れた。
「ちょっとな。思うことあってさ」
東京の主将・石崎に結姫の強さをバカにされたこと、東京代表の候補選手だったであろう目黒さやかクイーンに因縁づけられていることなど、負けられない理由が光輝にはある。しかし、それは光輝個人の問題なので、皆にまでそれを話す必要はないと言葉を飲み込んだまま、立ち上がって、女子部屋を後にしようとする。
「じゃあ、俺たち、もう戻るから」
「では、皆さん、明日は今日よりもスケジュールが早いので、今夜は明日に備えて、すみやかに寝ましょう。では、おやすみなさい」
後藤先生がそう言うと、女子たちから「おやすみなさい」という声が一斉に響き、光輝と仙崎、後藤先生の3人は女子部屋を去って、自室の部屋に戻った。実は光輝も仙崎も前日の夜は寝つきが悪かったのだが、今日は試合の適度な疲労や決勝トーナメントに進出したプレッシャーもなかったからか、すんなりと就寝することができた。




