女子部屋での恋バナっぽい話①
「え~! やっぱり、森田ちゃん、仙崎のこと好きなんだ~?」
桜女の高山がそう言うと、こじんまりと正座し、恥ずかしそうに手を太ももの上で組む森田が顔を真っ赤にしながら、こくんと無言で頷く。
「いつから? 正直、最初は森田ちゃんも仙崎君のこと嫌がってなかった?」
桜女の山本が問うと、一呼吸おいて、顔を紅潮させたまま森田が答える。
「た、たしかに最初は嫌な人だな~と思ってました。でも、強化練習の時、結姫さんもなんですけど、かるた部のない高校のあーしや四条さんにチームに溶け込めるように気遣ってもらったり、団体戦のこととか、普通にかるたのこととかわかりやすくアドバイスもらったりして…………もちろん、四条さんはアドバイスなんか必要ないほど強いからっていうのもあるんですけど、あーしには特に気を遣ってもらって…………そのうちにこの人、いいなって…………」
森田が恥ずかしそうに語る姿を見て、色めき立つ女子たち。特に山本と高山は女子校なので、女子同士での恋バナそのものに興味津々のようである。
「でも、仙崎さん、たしか、彼女さんいましたよね~? あの綺麗な人、選考会の時に見かけましたし」
森田が少し切なそうにしつつも照れ笑いを浮かべながら言う。
「あー、仙崎先輩、その人とは別れたよ」
森田と同学年の春日山の荻野がそう言うと、森田含む、全員が「え?」という反応をし、
「なんで?」
森田が荻野に尋ねる。
「選考会で四条さんにぼろ負けしたのが相当、効いたみたい。部活と勉強の両立する時間が足りなくて、彼女と遊んでる暇がないからって別れたの」
「えー、すごいな、仙崎君。私だったら、気持ち冷めてない限りは付き合い続けるわー」
荻野の仙崎が別れた理由を聞いて、金城大付の渡辺がおどけるように言う。
「ていうか、なんで仙崎君って、選考会まであんなイキりキャラだったの?」
山本が荻野に聞く。光輝と結姫も選考会後の仙崎の変化に驚いていたことからも山本の疑問もごもっともだろう。
「去年まで北尾美由紀さんっていうA級の先輩がいたんだけど、その人が妥協しない厳しい人だったんですよ。もともと、仙崎先輩が部内における盛り上げ役だったんだけど、去年の3年生が引退してからは実力や主将としての役割を一人で担うことになって…………」
「そっか~、そういう重圧がそういうキャラに変えたってことか」
「仙崎先輩も無理してたんじゃないかなって思います。少しでもリーダーとして振舞おうとして、見栄張ってたけど……」
「意外と不器用なんだね、仙崎君って」
「で、さっきも言ったけど、あの日、四条君に負けて、これじゃダメだって気づいて、翌日から『俺らしくやるわ』って今の感じになったってわけです。もともと、B級ぐらいの強さはありましたけど、あれからの成長もすごかったですね」
「そうそう。今年の高校選手権の団体戦、近江いけると思ってたもん。そしたら、仙崎君だけじゃなく、他の人も強くなっててびっくりしたよー」
山本がそう言うと、金城大付の渡辺も同意する。たしかに仙崎の強さは警戒すべきだったが、昨年ほどの安定したエースのような強さではなく、実力的にもメンタル的にもムラがあった。
そんな仙崎が引っ張るチームは全体的にバランスが悪いという共通認識だったようだ。しかし、仙崎の意識が変わったことでその相乗効果で他の部員の成長も促し、春日山のチーム全体が上手く仕上がった。
「そう思うと、仙崎君を目覚めさせた四条君の強さって、やっぱりすごいよね」
「あー、でも、結姫さんによると、選考会の時の四条さんって、普段の実力の四分の一も出せてなかったそうです」
渡辺がそう言うと、森田が結姫から聞いた話を明かし、さらに光輝の凄みを感じたのだった。




