↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
128/157

あたしが、クイーンになりたいって言ったら応援してくれる?

 結姫(ゆき)もこの前、光輝(みつき)の取りのスタイルの変化に関して、「いいか悪いかは私にはわからないわ。でも、前には進んでると思う」と言っていたことからも本質を突いているのだろう。


「まー、そういうお前も並大抵の意識で練習してたんじゃないだろうに……」


「うん、四条くんなら、今はこれぐらいの強さになってるだろうなってイメージしながら、練習してたから!」


 いつ戻ってくるかも、どう強くなってるかもわからない相手を待ちながら練習を続ける日々も途方もないものだろうに…………

 そう思いながら、光輝は感心する。そして、改めて、表舞台から離れていた日々に後悔を覚え、哀愁の表情を浮かべた。


「四条くんにいろいろあったことは昨日、聞いたから…………そんなに自分を責めないでほしいな。こうして、今、戻ってきてくれたんだし」


 光輝が浮かべていた表情の裏を察した千里がそのように告げる。


「あたしね、本当は高校卒業したら、かるたもやめようかなって思ってたの」


「その強さでそれはもったいないだろ。クイーンだって、十分、めざせる」


「あたし、そういうの興味ないんだー。みんなが言うような実績? っていうのも四条くんとかるたできることを夢見て練習してきたついでだから」


 名残惜しそうに光輝が言うが、当の本人はあっけらかんな口調で言い切った。


「ていうかさー。四条くんこそ、その強さで続けないともったいないでしょ」


「え、そうかな?」


「そうに決まってるじゃない。で、高校卒業後は続けるの?」


「うーん、進路決まるまではなんともいえないし、大会とか出るかはわからないけど…………ゆき姉(ねえ)との相手は続ける予定だから、続けるってことになるのかな?」


 光輝がこれまでと変わらず、花山家の離れの広間で結姫と練習する姿を頭の中で思い浮かべるように目線を上げて語す。


(四条くん、さっきの人に花山さんのこと悪く言われて本気で怒ってたし、本当に花山さんのこと大切なのね。いいなぁ、そんなに四条くんに見てもらえてるんだ…………)


 思いを巡らす光輝の姿を目を細めて見つめる千里はどこか物寂しさを覚えた。


「そっか。じゃあ、あたしも続けよっかな? 四条くんもそう言ってくれたことだし」


「なんか、責任感じるなー」


「いいの、いいの。あたしが勝手に決めたことだから。ね、四条くん、別に無理に答えなくていいんだけど、聞いてくれる?」


「ん、なに?」


「四条くんにとって、何番目でもいいんだけど…………あたしが、クイーンになりたいって言ったら応援してくれる?」


 意を決するような顔で千里が光輝の目をまっすぐに見つめて聞いてくる。これは本気の目だ、いい加減な受け答えは許されないと光輝は感じていた。


「もちろん、応援するよ」


「本当?」


「うん。ただ、ゆき姉がクイーンになるのは、俺の夢でもあるから、一番には応援できないけど…………」


「ううん、いいの。四条くんが少しでもあたしのこと、気にかけてくれるなら、がんばれるし、本気出しちゃうから!」


 千里が本気を出したら、末恐ろしい強さになるな……なんて、光輝が思って、ついさっき購入した炭酸の栄養飲料の蓋を開けようとしたが、すでにぬるくなっていた。


「あっ、ぬるくなってら。しゃーねー、部屋の冷蔵庫に入れて、明日の朝にでも取っとくかね」


「あっ、じゃあさ、あたしが買い直してあげる! 朝にモーニング奢ってもらったし」


 そう言って、千里が自販機に早速、小銭を入れた。今回はちゃんと財布を持ってきたようだ。というより、朝のモーニングのお代を返すのも目的の一つだったのもある。


「四条くん、なににする? 同じの?」


「うん、それで」


「じゃあ、あたしはDCレモンにしよっと」


 千里がそれぞれ、自腹で購入したキンキンに冷えた炭酸の栄養飲料を光輝に手渡した。そして、早速、それぞれ蓋の栓を開ける。


「じゃあ、今日のナイスゲームと四条くんの明日の健闘を祈って……」


「俺からも楽しい試合と、千里の今後の健闘に……」


「「乾杯」」


 互いに炭酸飲料かつ、瓶の容器。容器をコツンと軽くぶつけると、キンという音が鳴った。まだ、二人は未成年でお酒やビールは飲めないが、盃を交わすような気分に酔いしれ、ぐいーっと飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。