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総文祭2日目 予選リーグ第3試合 VS.山口代表⑦

 千里の最大の課題はモチベーションだった。光輝(みつき)という存在のおかげでこの数か月はモチベーションがずっと持続し、最大の課題が解消されている。もともと、実績と実力のある選手なだけにどれほどの強さを身に着けるのだろうか。

 県のかるた関係者は期待と夢を膨らませるが、本人はそんなものはどこ吹く風だ。


(だけど、まずはこの試合ね。今日は負けないんだからっ!)


 あくまでも目の前の一戦、光輝との勝負にこだわる。勝負にこだわり、集中力が高まった千里の強さは凄まじいものがあるが、それについていく光輝もたいしたものである。光輝は一応、チームの勝利が決まるまでは安心できない立場なので、多少のプレッシャーもある。


「大阪、1勝!」


「続いて大阪、2勝!!」


 すると、隣の2番席の仙崎、奥の5番席の高山が勝利の報告の声をあげる。あと、1勝すれば大阪代表の予選リーグの突破が完全に決まる。だが、3番席の渡辺、4番席の才木も勝利まで秒読みといえるほど、大差で試合を進めている。


(あと、1勝すれば俺らの勝ちか…………)


 ふと、映った他の席の様子に光輝は試合中ではあるが、少しホッとする。すると、先に試合を終えた隣の仙崎がグーサインを作り、光輝に「自分の試合に集中や!」と言うように表情で訴えた。光輝もそれに無言でこくんと頷く。


「大阪、押し切るでー!」


 仙崎のかけ声が響き、他のメンバーがそれに「ハイッ!」と叫んで返す。

 光輝だけはただ、黙って上半身をゆら~っと起こしながら構えに入り、心のスイッチを切り替えた。

 そして、61枚目「なげき」を相手陣左に攻め、62枚目「よのなかは」を自陣右上段できっちりと守る。


(あっちがあんなスピードで取ったのなら、こっちも出力を上げるしかない!)


「わすれじのー……」


「もぉらったぁーーーーっ!!」


 63枚目「わすれ」を声を上げて、相手陣右に攻め込んで払い飛ばす。縦横無尽に取って、千里を突き放していく。


(ここで、ギアチェンしてきた……! 四条くん、勝負しかけるの早いな…………!)


 先ほどの「いに」を会心の取りで取られてから、気を取り直して出力を上げてきた光輝の取りに千里は少し圧倒される。

 千里は67枚目「やす」を自陣左で守るものの、68枚目「おと」、70枚目「あけ」を自陣左右に攻め込まれる。


(この出札、きつい~~~!)


 心の中でそんな泣き言を言う千里の陣の出札が多いのもあるが、それを光輝がきっちり攻め取っている。また、攻め取った際に送る札のチョイスもいい。その結果、光輝の攻めのスパイラルから抜け出せず、千里にとってはつらい出札が続く。光輝3-7千里と光輝がリードで終盤戦に入る。


(でも、まだ終わらせない!)


 73枚目「たご」で千里がようやく出た光輝陣を攻め取る。終盤にこれだけ、自陣に出札が偏ると、守りにシフトしそうになるものだが、この局面で攻め取れる千里も然る者である。

 3枚差に迫るが、光輝は自陣を攻め込まれても攻め手を緩めず、78枚目「ありま」、79枚目「たか」と千里陣の左右を攻めて、光輝1-6千里と光輝がリーチをかける。81枚目「かさ」は千里が守り、ここは千里が最後の抵抗を見せる。


「みちのくのー」


 82枚目、千里の陣の左下段に置かれていた「みち」の札を光輝がスパッと綺麗に払って、5枚差で勝利した。光輝と千里がお互いに相手と読手に「ありがとうございました」と礼をして、一呼吸を置く。

 そして、他の4組が早々に勝利を決めて試合が終わっていることに気づく。


「大阪、5勝」


 と、光輝が言うと、メンバーが「ナイス―!」と元気よく返事する。終わってみれば、大阪代表がストレートで勝利し、文句なくグループリーグ予選突破を決めた。

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