総文祭2日目 予選リーグ第3試合 VS.山口代表③(試合前ミーティング)
「まー、いいけどねー。みーくん、一色さんと取るの楽しそうだもんねー。私なんかより!」
「ったく、なんなんだよ、さっきから」
結姫はやや棘のある言い方をして、拗ねた態度を見せると、光輝もそれに対し、文句をぶつけるも結姫はそっぽを向くだけだった。そんな二人の様子を微笑ましく見る現役女子高生の後輩たち。
「四条君、鈍いわねー。四条君が美人で可愛い女子高生と楽しくかるた取ってるのに、自分は今日は取れないから、寂しくて拗ねてるのよ」
「ちょっと、山本さん! 何言っちゃってるのよ~!」
山本にそう言われ、結姫は顔を赤くして慌てふためいた。
「1日、取れないぐらいで寂しいとか、ゆき姉も弟離れできてねーなー」
「だから、そんなんじゃないってばー!」
いつかのお返しとばかりに光輝が少し厭味ったらしい口調で言うと、結姫が顔を真っ赤にしたまま、可愛らしくポカポカと光輝の体を叩く。それに光輝は「あー、わかった、わかった」と宥める。
「それに千里にはさっきの試合で借りがあるからな」
「借り?」
「さっきの試合、上村が初戦に千里の独特な感じとやらで狂わされた影響が残ってて、束勝ちできたようなもんだと思ってるからさ。そのアシストの借りは返さないといけないなと思ってるんだよ」
もちろん、千里はそんなつもりは毛頭なかったのだが、光輝は殿山の読みも含めて、複合的な要因で大勝できたのだと勝手に感じていた。
「なんか、上手く誤魔化してるような気がするんだけど……」
「ダメかな?」
「うぅ…………」
光輝が少し寂しそうかつ澄ました顔で結姫に尋ねる。
普段は結姫が断れないように上目遣いで瞳をうるうるさせるビームを放つが、あまり自己主張をしない光輝が時折、見せる「頼むよ、ゆき姉」光線の破壊力に参る。
「わかったよぅ…………あっちは今大会、最後の試合みたいだしね」
「ごめんな、ゆき姉、みんなも。俺とあっちのわがままに付き合ってくれて」
他のメンバーも「仕方ないな~」という面持ちで光輝を暖かい目で見ており、千里の誘いに乗ることに賛同した形だ。そのうえで段位や級位で同等か勝る他のメンバーで勝つ方針で行くことになった。
「それにみーくんと一色さんの試合は私以外にも見るの楽しみにしてる人もいそうだしね。みんなも見といた方がいいよー?」
目黒さやかクイーンが不在の今大会において、今年の高校選手権個人戦の王者・四条光輝と全日本選手権、女流選手権の四大大会のうち2つのタイトルホルダーの一色千里による対決は高校生の大会において最高峰の対決といえるものだ。実績だけで見るなら、千里は今大会、ナンバー1の選手といえる。
「そうなると、俺は2番席に座りたいな。さっさと勝負付けて、光輝と一色さんの試合、隣でゆっくり見てみたいで」
仙崎がわくわくしたような口ぶりで言うと、仙崎が2番席に座るならと真ん中の3番席に名乗りを上げたのが金城大付で主将をこなす渡辺、その隣の4番席に後輩の1年生・才木を置き、余った5番席に高山が入るといった感じで席順がすんなりと決まった。




