総文祭2日目 予選リーグ第2試合 VS.宮城代表⑥
光輝のかけ声が出てから、折り返しとなる50枚目「ちは」が詠まれた時点で光輝6-18上村、渡辺10-14阿部、山本17-7佐々木、仙崎9-15猪俣、森田10-14岸。
1番席と3番席はだいぶ差が開いたものの、それ以外はまだわからない枚数差となっている。しかし、明らかに押しているのは大阪代表の方だ。仙崎が同級対決を抜け出してきた中、試合の行方は格下ながら健闘している2番席と5番席に委ねられたといっていい。
3番席ではA級の佐々木がC級の山本相手に差を広げているのは想定内だが、序盤よりはそのペースは落ちついている。一方の1番席のA級対決は光輝がギアを上げて、マージンを広げるペースは3番席よりも早く、こちらは予想外の大差がつく。
(加速…………っ!!)
このまま、ケリをつけるとばかりに光輝は上村にスピード勝負で負けないようにさらにもう一段、ギアを上げる。劣勢に立たされた上村も守りにシフトして、抵抗を見せるが、そうなったときに限って光輝陣に札が偏り出すという悪循環も重なり、光輝は快調にラストスパートをかける。
そして、71枚目「やまざ」を光輝が抜き去り、16枚差でA級のエース対決を圧勝した。
「大阪1勝!」
「ナイスーーー!!」
光輝が一番乗りで勝利の報告のかけ声をすると、第一試合よりも大きな声で返ってきた。先に1勝をあげられた宮城チームも3番席が間もなく試合の決着がつきそうなのだが、もともと勝ちを計算していた上村が大敗したことで他の選手の重圧は大きくなる。
敗れた上村本人も残ったチームメートの試合を見つめるが、まさかの大差負けに気持ちの整理がつかず、焦点が合っていない。宮城チームの選手たちもそんないたたまれない上村の様子を見ると、気が重くなっていた。それほどにこの1番席の結果が与えた影響は大きなものだった。
仙崎もその後、猛スパートをかけて猪俣を引き離す。その間、猪俣のお手つきなどもあり、順調に差を広げて11枚差で勝利をあげる。
「大阪2勝!」
仙崎が勝利の報告のかけ声を出すと、大阪チームは景気よく「ナイス―!」という言葉を返す。実は同時に宮城チームは佐々木が山本を12枚差で下していたのだが、自分の試合にいっぱいいっぱいのチームメートや大敗に気落ちした上村と息が合わず、かけ声のタイミングがバラバラでムードを作れない。
実際に大阪チームは王手をかけたわけで、追い詰められたことはたしかだ。宮城チームは残りの2番席、5番席の試合を2つとも勝たなければいけない状況だ。
試合は終盤に入り、渡辺2-6阿部、森田2-6岸と大阪チームが優位なのは変わらない。ただ、渡辺も森田も格上のB級相手に終盤に入るにつれて勢いが削がれている。特に渡辺は序盤の攻め疲れもあり、決め手に欠ける取りが出始めている。
87枚目「つく」で森田がリーチをかける。渡辺は攻めあぐねる状況が続き、阿部の追撃を受けるも90枚目「あさ(ぼらけあ)」でここ一番の攻めでこちらもついにリーチをかける。
そこから、阿部と岸は自陣を連取し、B級の意地を見せるが、95枚目「か(く)」を渡辺と森田がそれぞれ守り、2枚差で勝利を決めた。
森田と渡辺が同時に試合を決めたのだが、渡辺が森田にサインを送り、仙崎も小声で「お前が言え」と森田に促す。そして、森田は天井を仰ぎ、スゥーっと息を吸い、
「大阪、3勝っ!!」
予選リーグ突破へ大きく近づくチームの勝利を決定づける3勝目を思いっきり声を張り上げて叫んだ。初戦の不完全燃焼に終わった鬱憤を晴らすかのように。渡辺や仙崎、チームのみんなもそれを知ってて、下級生の森田にその役割を与えた。そして、席に座る選手たちもそれに「ナイス―!」と答えた。
ちなみに渡辺もその後、取ってつけたように「大阪4勝」を口にした。
試合を終えたばかりの宮城の選手たちは顔を両手やハンドタオルなどで覆って、嗚咽を漏らしていた。涙こそ見せていないが、上村も頭を抱えるように顔を覆わせたまま、立ち上がれずガックシとしている。
まだ、もう1試合残っているが、お互い、実質、この試合が予選リーグ突破がかかった一戦だったと思っていたのだろう。それだけにこの試合にかける思いが強い分、それが涙となって流れ出た。
(すげーな、こいつら。かるたに負けて、こんなに泣けるなんて、高校球児みたいだな。まだ、試合残ってるのに…………)
光輝はまだ次があると3試合目に向けて、切り替えていたところに高校野球の最後の夏のような光景を見せられて、なにか不思議な気持ちになった。
(場合によっては俺らがこっち側だったのかもな…………)
今の宮城チームの泣き崩れる姿を見て、光輝は次戦以降も情けない試合はできないなと気を引き締めつつ、控えメンバーや結姫が待つ控えスペースのある観客席へと引き上げていった。




