総文祭2日目 予選リーグ第2試合 VS.宮城代表⑤
だが、今の31枚目の1字決まりの「ゆら」を光輝が守ると、光輝は相手の上村にどこか違和感を覚えた。
(上村、どうした? 前やった時よりも攻めが甘い。今の『ゆら』だって、本調子なら取ってくるんじゃないのか?)
なぜだ? 光輝は上村を相手にしつつ、クエスチョンマークを浮かべる。
上村自身もここまで光輝相手に接戦も、どこか取りが冴えない。実際、しっくり来ていないのか、たびたび首を傾げる仕草を見せている。
すると、光輝はあるものが目に入る。それは向かい側で試合をしている千里の姿だ。山口チームは北海道チームと対決しているが、千里は鈴木と対決。先ほど、森田相手に金星をあげたが、さすがに千里相手では厳しい。その千里は格下相手ということもあってか、ぱっちりとした目は糸目で表情もだらしなく、全体的にゆるい雰囲気で取っている。
(千里、露骨にこの試合、やる気なさそうだなぁ……)
そう思って、向かいで試合をしてる千里を眺めていた光輝だったが、その視線に気づいた千里がにへら~と笑って、ひらひらと手を振り出した。
(試合中だぞ。あいつ、何やってんだ? 本当につかみどころのないヤツだなぁ…………)
こっちはそれどころじゃないっていうのに、と光輝は半ば呆れ気味な台詞を心の中で喋る。
しかし、今、光輝が千里に感じた『つかみどころのないヤツ』と試合前に結姫が言っていた『一色さんの独特な感じを苦手にしてる人って多いのよ』という言葉を思い出す。その時、光輝の中で何かがつながった。
(そうか……! 上村、さっきの試合で千里の感じに狂わされた感じがまだ戻ってないんだ!)
そして、もう一つ、すぐ隣でこの試合の読手を務める殿山の存在だ。
(さっきの関東の読みの方が上村や宮城の人たちは慣れてて、逆に俺たちには聞き慣れてる殿山さんのこのゆったりした読みのテンポが合ってないんだ。だから、他の人も少し取りがおかしいのか……)
これらが一つにつながり、光輝の中で引っ掛かっていた違和感が見えてきた。
(上村は取りも崩れてて、読みの波長も合ってない。なら、それが合わさって、調子が上がりきる前に!)
34枚目「ひさ」からは4枚連続で出札が生まれる。その出札を光輝が4連取。やや相手の上村陣に出札が偏りがある中、さらに送り札に選んだ札も上村陣で読まれ、光輝は攻めのリズムを作っていく。調子の上がりきらない上村を引き離しにかかる。
(俺にとっても、チームにとっても、ギアを上げるタイミングは…………)
心の中で「ここだっ!」と叫び、それに自分で呼応するかのようにスピードをもう一段階、上げていく。さらに連取を重ねて、なおも上村を引き離しにかかる。それに引っ張られるように隣の渡辺、奥の仙崎、森田も抜け出し始めているのが見えて、
「大阪、押し切ろう!」
光輝の口から自然とそんな言葉が飛び出した。それに試合に出ているメンバーが「ハイッ!」と威勢よく答えて、ムードは最高潮になる。
一方でエース格の上村が劣勢に立たされ、自分たちも余裕のない試合展開で宮城チームは空気が重苦しい。
この光輝が発したかけ声は両チームの現在の試合展開における心理状況を表す場面だった。数字上の枚数差だけでなく、心理面でも大阪チームが優位に立ち始めた。
(へ~、四条くん、ちゃんとキャプテンやってるね~)
と、向かいの席からその様子を見た千里が自分の試合そっちのけで感心しながら思っていた。
(すごいな、みーくん。狙ってやったわけじゃないでしょうに)
結姫は今の様子を見て、ほとほと感心した様子で眺めていた。
(エースが倒れれば、相手の士気に影響する。このまま、大差で勝てたら、すごい大きいんだけど……)




