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総文祭2日目 予選リーグ第1試合 VS.北海道代表④

(よし、四条君にもここまでついていけている……ここから、一気に引き離したいところだが、この嵐の前の静けさはなんだ?)


 ここまでリードを奪っている伊藤だが、ビハインド展開でも落ち着いた取りを見せる光輝(みつき)のほとばしるオーラを不気味に感じていた。


(全体的に相手陣右の攻めが速いな。札へ手を伸ばした位置と状況を見ながら、取れるところは仙崎や森田さんと違って、さすがはA級ってところだな。だけど…………)


 光輝は伊藤との対戦でそんな印象を持っていた。


(そろそろ、この人の読みの波長にも合ってきた)


 続く29枚目、


「うらみわびー」


 場に「うか」はあるが、近藤が読んだ札は空札。

 伊藤が『う』と聞いて、手をスッと出し、自陣右中段の「うか」の札の上を通過しようとした時だった。


 シュッ!!


 バンッ!!


 そんな切り裂くような音とともに伊藤の手の下と「うか」の札の間を光輝の高速の払い手が通過し、空振りした右手で畳を叩く。その動作をクッション代わりにして乗り出した身を支える。


(は? なんだ、今の払い…………こいつ、お手つきや手がぶつかるのもおかまいなしかよ…………!)


 今、「うらみわび」の「う」に反応して、先に手を出したのは伊藤の方だったが、「うら」と聞いて、先に空札と判断して「うか」の札の上を空過したのは光輝の右手だった。しかも「うか」に対して先に手を出していた伊藤の手の下をかすりもせずに搔い潜ったのである。


(いや、ちがう…………今のは意図的に俺の手の下のわずかな隙間に手を入れた…………? だとしたら、マジでバケモンだろ、四条光輝って…………)


 この空札の反応と払いだけで伊藤にさらなるプレッシャーを与えるには十分だった。光輝が31枚目「いま(は)」を攻め取ると、エンジン全開。ここから、4連取、伊藤が1枚を取り返すも再び怒涛の6連取。3番席の仙崎が変わらず優位に試合を進める以外は他は中盤で停滞気味。その展開の中で光輝は残り10枚を切り、着実に札を減らしていく。

 その後、なかなか差を詰められない伊藤が焦ってお手つきをするなどして、その差はさらに広がり、いつの間にか光輝の残り札は5枚とカウントダウンが始まっている。序盤は光輝がビハインドの展開だったのが遠い昔のようだ。


「大阪、1勝!」


「ナイス―!」


 17枚差と大差で仙崎が大阪に1勝目をあげる声が響く。ムードメーカーの仙崎が勝った影響は大きく、初戦を戦う大阪チームの重苦しい空気を振り払う。

 特に大差のビハインドをつけられている北海道のエース・伊藤が劣勢を強いられている影響が大きい。他の3組はそれなりに勝負になっているのだが、伊藤の苦戦がそのままチームの苦境になっている。

 光輝はそのまま伊藤相手に握った主導権を離さず、13枚差で勝利した。


「えーっと…………大阪、2勝!」


 光輝が「こんな感じでいいの?」みたいな口調でチームの勝利を口に出した。それにメンバーも「ナイス―!」と返事をする。


(あ、これ、悪くねーな)


 光輝は自分の勝利がチームメートから称えられて、少しこそばゆい感覚を覚えた。試合を終えて、あとは残ったチームメートの試合を見るだけなので、自分もしっかりチームメートの勝利は心から祝福してあげたいと思ったのだった。

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