総文祭2日目 予選リーグ第1試合 VS.北海道代表③
初戦を託された5名がそれぞれ指定された席についた。そして、席に着いた選手たちがそれぞれの自分の定位置に札を並べる。普段はここから、15分の暗記時間に入るところだが、この初戦だけは報道用に撮影時間が設けられ、3、4枚ほど読まれ、指定の位置の札をそれぞれ払って見せる。この撮影時間が終わり、札を再び並べ直したうえで暗記時間が始まった。
ここで、大阪代表と北海道代表の組み合わせを改めて確認しよう。
※左が北海道、右が大阪 数字は学年
1・四将 鈴木すみれ(釧路海洋②・E級無段)×七将 森田奈月(りんくう佐野ウイング②・C級二段)
2・三将 高谷直子(札幌北稜②・D級初段)×三将 山本渚(桜花女子③・C級二段)
3・副将 平川健介(帯広東③・E級無段)×副将 仙崎拓也(春日山③・B級三段)
4・五将 斎藤浩二(札幌北稜③・D級初段)×五将 荻野真美(春日山②・D級初段)
5・主将 伊藤大地(札幌北稜③・A級四段)×主将 四条光輝(翔国③・A級四段)
蓋を開けてみれば、1番席以外は将順通りの対決となった。
ただ、北海道は主将以外は将順通りの実力というわけではない。その点では試合展開が読みづらく、将順、段位や級通りの勝敗にならない試合も生まれそうだ。
読手コンクールも兼ねる予選リーグの1試合目は埼玉の北上尾高校3年の近藤直美が担当する。審判長から試合開始の宣告と試合が終わったところはどの札を上にするかのおなじみの説明をして、読手の近藤が読み始める。
「なにわずにー、さくやこのはなー、ふゆ、ごもりー…………」
(なるほどな。たしかに殿山さんや他の西の方で聞く読手に比べると、気持ちリズムが早いな。今のところは聞き取りにくいってほどではないけど…………)
事前に結姫から聞いていた通り、たしかに関東の高校生の読みは気持ち早く感じた。そういう心の準備をしていたからか、戸惑いなどはなかったが、試合が進んでいくうちに違和感を感じる部分も出るかも……なんて、思っていると、
「宮城ファイト―!」
「京都ファイト―!」
「東京ファイト―!」
序歌の読みとともにそんな声が周りからも響いてきた。
(おっと、いけね。忘れてた)
光輝はそう思いつつ、少し他からワンテンポ遅れて、
「大阪ファイト―!」
「ファイトォーー!!」
光輝のかけ声とともに一同が握り拳を作って、ドンっと畳を叩いて、一斉に返事をする。
試合は1番席の森田、5番席の光輝が序盤はやや出遅れるが、仙崎はじめ他の3人は快調に札を取っていく。ここらは段位通りの実力を発揮しており、団体戦の経験もあるためか、多少の慣れも有利に働いている。
光輝はどちらかというと、スロースターター。この日は慣れない会場とマイクでの読みに加え、読みのリズムも違う環境下で相手も初見。いつもよりも様子見で無理に取りに行っておらず、序盤はやや劣勢で一進一退のいつもの展開だ。
心配なのは1番席の森田だ。初戦かつただでさえ慣れない団体戦、なにより、この本格的に全国から集まった大会独特の緊張感が重苦しさを感じさせている。時折、聞こえる「ナイスー!」や「押し切るよー!」など団体戦特有のかけ声にドキッとしたりして、集中が続かない。
光輝はそういう独特なかけ声などの大会の空気も合わせて様子見してる余裕があるのだが、森田にはそれがない。そもそも、彼女はこの前の高校選手権の個人戦でC級に昇格したばかり。公認大会ではないもののいわばC級デビュー戦といえる。
また、森田自身以外にも問題があった。相手の鈴木が森田と互角か上回るような取りを見せている。結姫が危惧していたいわゆる無段爆弾が鈴木だった可能性が高いのだ。
28枚目「あまつ」が読まれた時点で鈴木14-森田20、高谷19-15山本、平川23-11仙崎、斎藤21-13荻野、伊藤15-19光輝と森田と光輝の二人が劣勢だが、他の3組は大阪チームが試合を優位に進めている。
「大阪、押し切るでー!」
「ハイッ!」
特に3番席の仙崎がかなりのハイペースでリードを得る。ムードメーカーでもある彼の好調は大きい。昨年や近江神宮の全国の舞台も経験してるからか、空気に流されるどころか支配できている。




