一時帰還
「影丞さんっ!!この街(に影丞さんがいるの)は危険過ぎます。今すぐに帰りましょう」
宿屋のトイレからオレが出てくると雅美ちゃんが真剣な眼差しで話しかけてきた。
副音声を隠そうともしない打ち解け具合にオレはもう泣きそうです。
否定できないのがつらいが、その日を境に彼女たち(・・・・)の姿を見たというものは誰もいない…。
…いや、ほとんどの人が彼女たちが来ていた事すら知らないみたいなんだけどさ。
◇
「…それで、先に帰って来てるってどうゆう事」
一晩あけて、大将とマリアンさんに事情を話し逃げるように浜辺に戻ると、何事もなかったかのように海の家がありました。
「だって寝床が…」
「寝床どころか、寝ようとした形跡がねえよな…」
いつも寝床にしていた客席はまたエラく散らかっていた。
かなり大きな木材を削っていたからか大鋸屑と呼ぶにはおおきな木片と作りかけのカヌーらしき物体。
どうやらオレたちと別れて浜辺に戻った二人は、カヌーを作って過ごしていたようだ。
「最初は、木材探して山ん中歩いてたんだけど( ̄∀ ̄)」
どうやら、倒木の中にダブル薙刀(※)に似た木が合ったそうで、それを有効利用するには船が必要だ―と。
雅「いっつあ、ふりーだむ。」
健・真「ざっつらーい」
雅美ちゃんが呟いても作業の手を止めない二人。因みに、今削ってたのは四艘目で夜通し削ってたんだってさ。
目の下にクマまで作ってるよ、どうにかならないかなと考えてたら雅美ちゃんが「影丞さんも同じですよね?」だって…。
否定できないなぁ。
健「…これが…あれば、タダで海を渡れ…」
真「…賊王に…っれは…なるっ」
そんなフラグを立てながら、カッコンカッコン木材を削る二人を後目にオレたちも家の中に入る。
どこ行くつもりだ二人とも(笑)
「我が家が一番落ち着きますね」
客席の隅で脚を伸ばした雅美ちゃんがそんな言葉を零すから「自宅ちゃいますぜ?」と言いかけて止める。
散乱する道具になぜか生活感(洗い物)に溢れた台所、“あぁ、これ自宅だ”と納得する他ないわ。
カコンカコン鳴り響く作業音、賃貸とか借りたら数日ももたずにおん出されそうだよね。
オレたちはこのままでいいのかも知れない。
◇
カコンカコンという音からシュカシュカ、ザザッ、と削るや磨くと言った感じの音が響く。
健たちは仕上げに入ったようだ。
オレは台所で洗い物。
マンガみたいにドンブリが積み上げてあるんだけど、デザインが筋肉万に出てきたようなドンブリなんていつ作った?そして何を作って食べた。
牛丼ならいいけど、不味くて食べるのをやめた食いかけの骨付き肉とかまでシンクの中に入れてくれるなよ。
「鰹節…どうなったかな」
「永久にみない方がいいんじゃないですか?」
なんとなく気になって呟いたら雅美ちゃんが料理をしたまま返事をくれた。
「箪笥も竹取物語みたいになってますから、死ぬまで(・・・・)開けない方がいいと思いますよ」
いや、竹取物語はお爺さんが光る竹をきると竹の中から赤ちゃんが~て話なんだけど、死ぬまでって、オレがシムまでって意味だと思いたいよ。
「中身です」
雅美ちゃん!?




