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邂逅逃走

真一と健のいなくなった翌朝は騒がしかった。

人の出入りが激しいし落ち着いて横になれるような感じではなかった。



「なんなのよ、この宿に帰ってくるって聞いてきたのに全然帰ってこなじゃないのっ!」


ヒステリックに叫ぶのは件の新しく街に入った一団だろう。


「エミリちゃん落ち…いて」



宥める声やらも混じるが、どうにもエミリちゃんとやらは感情の抑制に問題がありそうな感じである。


「…なんか、ご飯食べに行きたくないです。」


聞き耳をたてていた雅美ちゃんが、下に降りたくないのだと言う。オレも同じ事を考えていたので干し肉とパンを取り出して雅美ちゃんに渡す。

「なんか、変なのに目を付けられちゃいましたね」


「雅美ちゃんのクラスメートじゃないなら狙いはオレだろうからねぇ」

ガジガジと二人で干し肉をかじる。

下で騒いでいるのは雅美ちゃんの知り合いとは別口らしく、女性だけで10人規模のグループを組んでいるらしい一団だ。


「ロングで黒い髪ですからね、私じゃありませんし」


「探してどうする気か知らないけど探されても迷惑だよねー。」


「こっちはご飯食べれなくて大変ですしねー」


「…ご飯はいいけど、なんでこうゆう時って頻繁にトイレ行きたくなるんだろね?」



「お姉さん、食べてる時に話す事ですか?」


「なら、雅美ちゃんは我慢出来る」


「無理です」

なにげに私は無関係と意思表示をする雅美ちゃんに弁明しつつ時間が経つのをひたすら待つ。

―お嬢さん、探し者は、ここですが?


面倒だから、見つかるわけにも行かないけどね。必死になってる声を聞くとちょっかい出したくなるね。

いっそ、部屋からダッシュで連中の前を駆け抜けてやろおか。ウフフ。


「静かにしてれば何とかなりそうですか?」


「難しいかもね、宿まで嗅ぎつけて居座る位だし。」


不穏な事を考えるのを中断して雅美ちゃんに答える。普段の長家を占拠されてたから会わないですんでいるだけなんだけどね。


「暇ですねー」


「暇だのー」


アイテムボックスの中を漁り着替え用のローブを出してみる。雅美ちゃんが「また、なんか始めましたね」とか言っているが、人をそんな常習犯みたいに言うような娘さんだっただろうか?

ひょっとして思春期の女の子の人格形成にオレたち取り返しのつかない大変な事をしてるのでは?雑草食べさせたり目覚のリバースさせたりしてゴメンな。結局前に集めた野草を健が確認したら春菊ですらないタダの野草だったからね。健も食えないことはないと言うことで、ストックされた在庫は鍋に使う予定だしからなぁ。



「気にしないで下さい、アッチに比べたらいくらかマシです」―オレ言葉に出してませんが…

「そんだけあからさまに考えてられたら誰でもわかりますが…」


困った風に言われたぞ。見たらわかるんだとか顔面筋肉よ活発過ぎないか?


「それより、野草探しはもうやめましょうよ。」


野草じゃなくて野菜探しだぞ?と否定するも棄却された。


「雑草から探すとかどんだけ気長なんですか」


時間はたっぷりあるから、気が済むまで続ける気だぞ。


「雑草ほじくり返して何にもなるんですか。」


「そのうち大根が…」


まぁ、女子会にはなれないから二人でいつもこんな会話してるのさ。


さて、外出するのにローブは役にたつのだろうか。


「うやっ、流石にそれはやめましょうよ!?」


着替えようとしたら雅美ちゃんに止められる。

会話しながら支度してごまかせてたかと思ってたのに案外鋭いねキミ。


「先陣先駆け兵のh…

「華じゃありませんよっ!」



てへぺろっ♪

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