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究めよ

健には作業よりも《そぼろ》を渡して人魚の子守をさせる事にした。


とりあえず、煮蒸した鰹は骨を抜いてから燻すで正解のはず。

生で抜こうとしたら抜けなかったからね。


因みに、作業中は匂いに釣られた幼人魚がフラフラ歩いて来る。そんなだから、健にエサ(鰹のそぼろ)を渡して人魚の気を引かせているのだ。


大事な仕事です健や幼女に対して無視を決め込んでいるわけではない。

今は余計な事を考えず、ただ作ることだけに専念したいだけだよ。


そして、オレは真ちゃん雅美ちゃんの三人とひたすら無言で骨抜きをしている最中です。


「…影丞さんコレ難しくないですか?」


「…うん。」


何しろ、煮た鰹が軽く触っただけで形が崩れるほど脆いんだ。

お風呂から取り出す時点で形が崩れてしまっていて何個かがもう《そぼろ(確)》となってしまっている。

現在真ちゃんが新たなる技‘※水中骨捕り’という器用な技を開発し真ちゃん一人で綺麗な半身が大量に確保出来つつある。


※実際にそうやって作る工場も多いそうです


雅美ちゃんも結構上手なんで、一人でそぼろを増やしている状況が憎い。

もう、二人に全部任せてもいいんじゃないかと思えてきた。


…でも負けない。


「…なぁ、手が空いてからでいいから、おれの話を聞いてくれないか」


「来るな気が散る」

容赦なく突っぱねる。健の腕の中ではピチピチと元気に跳ねる幼人魚。くそっ、魚屋さんとか漁師さんが大物抱えてるみたいな事しやがって、物凄い気になるんだけど、余所見して作業なんかしたらソッコーで崩れんだぞ、オレのそぼろ生産量世界一をさらに更新させたいのか?


「影丞さん…、少しくらぃぁああっ!崩壊したっ!?」


骨を抜いた形で悲鳴を上げる雅美ちゃん。…っ、だからあれほど気を取られるなといったんだっ!


ほんの少しの手元が狂うだけで形が崩れる。

あの木刀みたいな形が出なければ削れないと思うから無駄口は控えていたというのに、とんでもないキラーパスを出してくれたな健よ。


だけど、冗談抜きで集中してないとヤバい。

骨抜きをすると言う事がアスリートと同意義な気がしてくるよ。

きっとそうに違いない。


大量の骨の山とそれ以上のそぼろがオレを更にストイックな気分にさせる。


影「宣誓、僕たち私たちはスポーツマンシップに則り、正々堂々と骨抜きする事を誓います」


雅「…影丞さん、気持ちはわかりますけど今はやめてくださいぃぃ…」


オレの呟きに動揺したらしく崩れ落ちるなまり節を前に雅美ちゃんが力無くうなだれる。


雅美ちゃん、被弾。


鰹節なんて日本にいたら密封されたパックで買って終わりだからねぇ。作るどころか《削る》機会もあんまないから得難い経験をしているんだろうね。

「影丞さんお醤油下さい」


「うぃっす」


―小腹が空いたらそぼろを食べればいいじゃない。


マリーアントワネット様もびっくりするようなツマミを口にしながら作業は続く。


いやマジ旨いです。


でも、やっぱり鰹のタタキも作りゃ良かったね。全部なまり節にしてから思いついたんじゃ仕方がないけどさ。


因みに、お昼に刺身で頂いた所むっちゃ箸が進みました。


飯についた醤油(※)が旨いのなんの。※鰹でなくとも進むわな。


こっちで生魚といえば薄切りにしてドレッシングをかけてカルパッチョがせいぜいだからね

塩やドレッシングじゃこうも飯と調和しないからね醤油で刺身できるなんて最高。


でも、あえて言うなら白米が…銀シャリが欲しいです。赤米でも十分美味しいけど、そこらへんのどっかに生えてないかなジャポニカ米。



閑話休題


大量に出た鰹の骨は、物は試しで佃煮にする事になりました。鰹の骨よ鯖缶のようにやわらかくなれっ!


いよいよ、燻す。


…どんくらい燻したらいいのかまったく解らない。

とりあえず燻製肉を作る要領で燻す事に。


ふぁいやー。


しゅーりょー、と行きたい所だけど今更ながら塩辛の仕込みを…。


「くっさ。」


あら大変、バケツの中で、腐ってた。


「…傷んでますね」


「影ちゃん、夏場に内臓を放置しちゃダメだよ」

処理もしないで桶の中が内臓でタプンタプンになってたら当然そうなるわ。


「下の方は大丈夫そうなんだけど」

…どうする?とみんなの判断を仰ぐ。のるかそるか?


「素直に捨てろ影丞」


即座に答えたのは真ちゃんだ。


「健さん!?あなた達はそこまでしなくちゃ生きてかれない環境だったんですか?」


「いや、正直そこまでしたくない。

ほらみろ、影ちゃんがおかしな事言うから雅美ちゃんが変な誤解始めただろうが。」


塩辛に挑戦するのはいいけど痛んだものだけは諦めろと怒られた。

でも、夜中にこっそり塩漬けにしてみようと思うんだ、塩辛は無理でもひょっとしたら魚醤ならいけるんじゃね?


燻製の火の番の最中に作ればいいやと、捨てにいくふりをして底のにあった方の内臓をこっそりアイテムボックスに写して置いたのは内緒だ。


でも、オレが火の見張りをしていと、静かに健が起きて来て目を離してくれない。


「筒抜けか」

「その通りだ」


―見張られている。

書き直して確信した。前回の56話はらしくなかった。コイツはコウでないと…

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