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魔境に自分好みの家をDIYで建てたら、居心地が良すぎて「絶対不可侵の神殿」と拝まれていた件  作者: dapon


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【閑話㉘】古びたオルゴールと、亡き母の思い出の丸椅子

閑話をお読みいただきありがとうございます!

聖都での騒動が落ち着き、旅立ちを翌日に控えたある日の夕暮れ。

フィオナが幼い頃に亡くした母との大切な思い出が詰まった「傷だらけの古い家具」を、タクミが【極限加工】と丁寧なリペア技術で蘇らせる、心温まる感動のエピソードをお届けします。

聖都ルミナスの大聖堂がポカポカの温もりに包まれ、街が平穏を取り戻した、旅立ち前夜のこと。


タクミは迎賓館の中庭で、旅の資材の整理をしていた。

そこへ、フィオナが大きな布に包まれた「何か」を大切そうに抱え、おずおずと歩み寄ってきた。


「……タクミ様。夜分遅くに申し訳ありません」


「フィオナ? どうしたの、そんな大きな荷物を抱えて」


タクミが作業手を止めて振り返ると、フィオナは布をそっと解いた。

現れたのは、あちこちが欠け、脚がガタついた古い木製の丸椅子と、表面の漆が剥げかけた小さな木製のオルゴールだった。


「これは……随分と年季が入っているね」


「はい……。幼い頃、母が生前に私によく絵本を読み聞かせてくれた時に座っていた丸椅子と、母が大切にしていたオルゴールです。枢機卿たちの追手から逃げる際、ガルドさんが命がけで大聖堂の倉庫から持ち出してくれたのですが……長年の放置と移動で、すっかり傷んでしまって……」


フィオナは切なそうに目を細め、擦り切れた椅子の木肌を優しく撫でた。


「音の鳴らなくなったオルゴールと、座ることもできないガタガタの椅子……。修復は難しいと諦めていたのですが、タクミ様のあたたかなDIYの手仕事を見ていたら……もしかして、と」


「……なるほどね。大切な思い出の品なんだね」


タクミは真剣な眼差しで丸椅子とオルゴールを受け取ると、そっと手で触れて【万能資材目録】を起動した。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【資材名】聖王国製・ヴィンテージオークの丸椅子&手回し式木製オルゴール

【状態】木部の乾燥による亀裂・ガタつき、内部ギアの錆つき、塗膜の途切れ

【対策】真鍮ダボによる構造補強、天然蜜蝋ワックス仕上げ、精密歯車の防錆オイル研磨

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「大丈夫だよ、フィオナ。木組みの芯はしっかり生きているし、オルゴールの歯車も折れてない。ちょっと手入れをしてあげれば、また元通り使えるようになるよ」


「本当ですか……!?」


フィオナの瞳がパッと輝く。


「よし、さっそくリペア(修復)を始めよう!」


タクミは【極限加工】を発動させ、愛用の工具箱を開いた。


まずは丸椅子だ。

グラグラになっていた脚の接合部を一度丁寧に分解し、古い接着剤を削り落とす。そして、内側に『真鍮製の補強ダボ』を打ち込み、環境に優しい高強度木工ボンドでガッチリと組み直した。


欠けていた座面の縁には、同じ樹種の木粉をブレンドした特殊パテを埋め込み、目の細かいサンダー(やすり)で何度も何度も手作業で滑らかに研磨していく。

仕上げには、植物油と蜜蜂の巣から採れる『天然蜜蝋ワックス』を優しく擦り込んだ。


すると――乾ききって白けていたオーク材が、まるで生き返ったかのようにしっとりとした深みのある飴色の光沢を取り戻していった。


「すごい……! 木が、息を吹き返したみたいです……!」


フィオナが感嘆の声を上げる横で、タクミは次に小さなオルゴールへと取りかかった。


精密精密ドライバーで裏蓋を開け、錆びついた真鍮の歯車とオルゴール管(シリンダー)を『超音波洗浄機』と『高粘度防錆潤滑オイル』で丁寧に磨き上げていく。

カチ、カチ……と、錆が取れて滑らかに噛み合う歯車たち。


「よし、これで組み立て完了だ。フィオナ、ネジを回してみて」


「はい……っ」


フィオナは震える指先で、オルゴールの小さなネジを静かに回した。


ピン……ポロン……♪

ポロロン……ポロン……♪


静まり返った夜の中庭に、透き通った美しく温かな音色が響き渡った。

それは、かつて幼いフィオナが母の膝の上で聴いていた、優しく包み込むような聖王国の古い子守唄の旋律だった。


「あ……あぁ……っ……」


音色を聴いた瞬間、フィオナの大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙が溢れ出した。


「お母様……お母様の曲です……! 本当に……またこの音色が聴けるなんて……!」


「座面も補強しておいたから、座ってみて」


タクミに促され、フィオナが恐る恐る丸椅子に腰を下ろす。

ガタつきは一切なく、蜜蝋ワックスの木のぬくもりと心地よいフィット感が、まるで優しく抱きしめられているかのように彼女を包み込んだ。


「あたたかい……。まるで、お母様の膝の上にいるみたいです……っ」


溢れ出る涙を止められないフィオナの横で、物陰からそっと見守っていたガルドが、目頭を強く押さえながら鼻をすすっていた。


「……よかったな、姫さん。奥様も……天国で喜んでいらっしゃるはずだぜ」


「ガルドさん……タクミ様……! 本当に、本当にありがとうございます……! この思い出と一緒に、私、どこまでも前に進んでいきますわ……!」


フィオナはオルゴールを胸に強く抱きしめ、涙を拭って最高の笑顔を浮かべた。


タクミのDIYは、ただ空間を便利にするだけではない。

傷ついた人の心と思い出までをもポカポカと温かくリフォームしてしまう――。

そんな温もりを胸に、一行は翌朝、新たな冒険の旅へと向けて晴れやかに出発するのだった。

閑話をお読みいただきありがとうございました!

フィオナの亡き母の思い出が詰まった丸椅子とオルゴールを、タクミが丁寧なリペア技術と蜜蝋ワックスで蘇らせる感動エピソードをお届けしました。

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