第61話:魔法都市の極上ホテルと、聖王国への決意
第61話をお読みいただきありがとうございます!
『魔法技術都市エル・グラード』の空気環境改善を完璧に達成したタクミたち。
今回は都市一番の最高級ホテルをさらに快適空間へと劇的ビフォーアフターする大宴会と、フィオナの過去の因縁が眠る『エルディニア聖王国』へ向けた新たな決意を描く節目の回をお届けします!
大魔導炉の不完全燃焼熱と魔素毒を見事に払拭し、都市全体に『24時間全熱交換換気システム』を張り巡らせてから数日。
『魔法技術都市エル・グラード』は、これまでにない清々しく澄み切った空気に包まれていた。
「おお……なんという軽快な目覚めなのだ! 長年悩まされていた朝の頭痛が、嘘のように霧散しておる……!」
「研究塔の集中力が段違いだ! これもすべて大賢者タクミ様のおかげだぞ!」
街のあちこちで技師や魔術師たちの歓声が上がり、市場には活気があふれている。
その日の夜、都市技師長エレミヤの肝煎りで、エル・グラード最高峰を誇る水晶建築の超高級ホテル『グランド・クリスタル』の最上階フロアが全館貸し切られ、タクミたちの偉業を称える大感謝宴会が催されていた。
「大賢者タクミ様、そしてご一行の皆様! 都市の命を救っていただいたこと、全市民を代表して心より感謝申し上げます! 乾杯ーーっ!」
「「「乾杯ーーーーーっ!!!」」」
エレミヤの音頭とともに、豪華絢爛な大ホールに割れんばかりの歓声が響き渡る。
テーブルには、魔法都市特製の冷製魔導料理や、真空パックで港町ポート・ヴィルから届いた新鮮な魚介類の絶品料理が所狭しと並べてあった。
「ガハハ! この冷えたエールと、絶品の魚料理! エル・グラードの空気も美味くなったし、最高の気分だな、バアル殿!」
「うむ! 街の過熱が治まり、我が作業着もサラリと着こなせる。実に快適な宴だ!」
ガルドと作業着姿の魔王バアルが豪快に杯を交わし、セナは口いっぱいに極上スイーツを頬張って「おいしいーっ!」と目を輝かせている。
だが、宴の途中、ふと客室フロアへ戻ったタクミは、職人としての血が騒ぐのを抑えきれなかった。
「うーん……外観は豪華な水晶造りだけど、ベッドのマットレスが硬いし、大理石の床は素足だと冷えるね。それに照明が少し眩しすぎるかな」
「ガハハ! 小僧、さっそくホテル室内の『快適ビフォーアフター』か!」
後ろからついてきたガルドが愉快そうに笑う。
「よし! せっかく泊まるんだし、僕たちの部屋を完璧な『極上スイートルーム仕様』にプチDIYしちゃいましょう!」
タクミは【万能資材目録】と【極限加工】を同時起動!
硬いベッドには高密度低反発ウレタンを重ねた『多層体圧分散マットレス』と羽毛布団をセット。床には足元を温かく包む『洗える防音ラグ』を敷き詰め、照明には調光・調色機能付きの『間接LEDライト』を取り付けた。
さらに、バスルームには足裏の水滴を一瞬で吸い取る『珪藻土バスマット』と『三面鏡システム洗面台』を突貫で増設!
「はい、完成です!」
一新された客室に入ってきたフィオナが、ベッドに腰を下ろした瞬間――。
「あふっ……!? ま、まるで雲の上に抱きしめられているかのような心地よさですわ……!」
ぽっと頬を染め、ふかふかのベッドに埋もれるフィオナ。
「うわあぁぁっ! 足の裏が冷たくないし、お部屋の明かりがとっても優しくて目に優しいよーっ!」
セナもラグの上でゴロゴロと転がり回り、大興奮だ。
「建物の外観だけでなく、身体が触れる内装の快適性を追求する……まさにタクミ様のDIYの真骨頂ですな!」
アルヴィスが真鍮の万年筆で、その劇的なビフォーアフターを嬉しそうにノートへと書き留める。
快適空間となったテラス席へ出ると、夜風が心地よく吹き抜けていた。
遠くに広がる街の夜景を眺めていたフィオナの元へ、タクミが温かいハーブティーを手に向かう。
「フィオナ、少し休めた?」
「はい、タクミ様。……ありがとうございます。あんなにも素敵なベッド、生まれて初めてですわ」
フィオナは温かいカップを抱え、夜空を見上げた。その横顔には、どこか静かな決意の色が浮かんでいる。
そこへ、ノートを閉じたアルヴィスと、エールを飲み干したガルド、作業着姿のバアルが歩み寄ってきた。
「……タクミ様、そして皆様。エル・グラードの技師長エレミヤ殿より、隣国に関する重大な情報が入りました」
アルヴィスが真面目な面持ちで口を開く。
「隣国……というと、グランベル王国ではなく、フィオナの故郷である『エルディニア聖王国』のことかい?」
タクミが尋ねると、アルヴィスは静かに頷いた。
「ええ。第2部で訪れたアルフレッド陛下の『グランベル王国』は親同盟国として平和を保っておりますが……国境を接する『エルディニア聖王国』はいまだ深い闇に包まれています。数年前、前国王陛下が暗殺され、フィオナ様に濡れ衣を着せた『悪徳枢機卿派(聖導派)』が実権を握り、いまや過酷な重税と弾圧で民を苦しめているとのことです」
その言葉に、フィオナの胸が小さく痛んだ。
かつて大聖女として、そして前国王の娘として愛した故郷。そこに住む民たちが、いまも黒幕たちの裏切りと独裁によって苦しんでいるのだ。
「フィオナ……」
タクミが優しく呼びかけると、フィオナはすっと背筋を伸ばし、まっすぐな瞳でタクミと仲間たちを見つめ返した。
「タクミ様、皆様……今まで私の我儘に付き合ってくださり、全国の困っている人々をDIYで救っていただきました。……ですが、次は私自身の過去と、故郷の苦しみに決着をつけたいのです。私を……『エルディニア聖王国』へ連れて行ってはいただけないでしょうか」
「何を言うか、姫さん!」
ガルドがドシンと胸を叩いて豪快に笑った。
「俺は前国王陛下から『姫さんの居場所を守る』と託された護衛だ! 偽りの悪徳枢機卿どもをぶちのめし、聖王国に本当の平和を取り戻す時が来たんだよ!」
「ふん、我が師匠タクミ殿の作った『快適な暮らし』を壊し、民を苦する悪党など、この魔王バアルが許さん。我が全軍……いや、我が作業着の拳でお仕置きしてやろう!」
バアルもニヤリと不敵な笑みを浮かべ、セナも「あたしもフィオナお姉ちゃんについていくよーっ!」と拳を突き上げた。
「タクミ様、準備は万全です。聖王国の閉ざされた大聖堂や権威主義の冷たい城も、タクミ様のDIYで劇的に叩き直してやりましょう!」
アルヴィスが頼もしく万年筆を胸に挿す。
仲間たちの温かい言葉に、フィオナの瞳からぽろぽろと綺麗な涙がこぼれ落ちた。
「皆様……ありがとうございます……っ!」
タクミはフィオナの肩に優しく手を置き、力強く微笑みかけた。
「よし! フィオナの故郷を苦しめる悪徳枢機卿の権威なんて、僕たちのDIYと快適さで一網打尽にして、聖王国を劇的ビフォーアフターしに行こう!」
「「「オーーーーッ!!!」」」
夜空に満天の星が煌めく中、仲間たちの力強い誓いがエル・グラードの街に高らかに響き渡る。
無自覚なDIY大賢者タクミと仲間たちの旅は、いよいよフィオナの過去の因縁と決着をつける本筋――『エルディニア聖王国編』へと向けて、新たなる一歩を踏み出すのだった!
第61話をお読みいただきありがとうございました!
エル・グラードでのホテル快適DIY&祝勝会を経て、グランベル王国との違いを整理しつつ、フィオナの故郷である『エルディニア聖王国編』への熱い伏線と決意を描きました!
次回第62話からは、いよいよ新章『エルディニア聖王国編』が開幕!
国境の厳重な検問・聖導バリアの突破、そして重苦しく冷たい聖王国の検問所をDIYで快適空間へとビフォーアフターする爽快なスタートをお届けします! 引き続き応援よろしくお願いいたします!




