第60話:歓喜の都市技師長と、全自動空調ライン
第60話をお読みいただきありがとうございます!
エル・グラードの最高責任者である都市技師長エレミヤが大感動!
スパイラルダクトと24時間全熱交換換気システムにより、魔法技術都市全体の空気環境を一気に劇的ビフォーアフターする爽快回をお届けします!
「お、おおおおおっ……! なんだこの澄み渡る空気はぁぁぁっ!?」
広場にひれ伏す技師たちの間を押し分け、頭髪を逆立てた小柄な老人が弾むように飛び出してきた。
彼こそが、『魔法技術都市エル・グラード』の全インフラを統括する最高責任者、都市技師長のエレミヤであった。
エレミヤは目を限界まで見開き、胸いっぱいに広場の空気を吸い込むと、涙をボロボロとこぼしながら絶叫した。
「数年間悩まされ続けてきた大魔導炉の不完全燃焼熱と、都市内に漂う重厚な魔素毒が……綺麗サッパリ消え去っておる! 脳の奥を刺すようなあの『魔力酔い』が一切起こらん! 一体どのような大禁呪を使ったのだ!?」
「大禁呪なんて使ってませんよ。適切な径の『スパイラルダクト』を通して、『有圧換気扇』で強制排気しただけです」
タクミが工具箱を肩にかけ直し、何でもないことのように答える。
「スパイラル……かんきせん……? 魔法陣の刻印も魔晶石の触媒も使わずに、ただの鉄の曲管と羽根車で空気を制御したというのか……!?」
エレミヤは這いつくばるようにダクトの継ぎ目や有圧換気扇の構造をむさぼるように観察し始めた。
「滑らかな接合部! 空気抵抗を極限まで減らした曲線美! そして吸気と排気の圧力差を利用した流体循環……! 馬鹿な、我らは『魔導力で熱を抑え込む』ことばかりに囚われ、最も基本的な『熱と風の通り道を作る』という発想を完全に失っていたのだ……!」
エレミヤは激しい衝撃に震え上がり、そのままタクミの足元へ深く額を擦り付けた。
「大賢者タクミ様とお呼びしてもよろしいか……! どうか……どうか我がエル・グラード全体を救ってください! この都市には、大魔導炉以外にも個別の研究塔や住宅区画に不快な熱気と魔素が溜まり、多くの民や研究者が苦しんでいるのです!」
「研究室や住宅の空調改善ですね。原因が『給排気の不備』と分かれば簡単ですよ。都市全体のダクト配管と換気システムを整備しちゃいましょう!」
タクミの職人魂が燃え上がった。さっそく【万能資材目録】と【極限加工】を起動!
まずは、各研究塔や住宅区画の天井裏に、軽量で気密性の高い『亜鉛めっき鋼鈑製スパイラルダクト』を縦横無尽に巡らせる。
各部屋の排気口には、汚れやニオイを防ぐ『24時間換気対応・静音給排気グリル』を取り付け、中央の集中換気ユニットには『温湿度・魔素自動検知センサー付き・全熱交換形換気扇(24時間換気システム)』を組み込んだ。
「これでお部屋の温もりや涼しさを逃がさずに、汚れた空気と湿気だけを全自動で外へ排出し続けます。フィルターは半年に一回水洗いすればOKです!」
施工完了からわずか数時間――。
「「「な……なんだこの快適さはぁぁぁっ!?」」」
都市中の研究塔や民家から、歓喜の悲鳴が一斉に湧き上がった!
「研究室にこもっていた毒気と熱気が消えた! 集中力が十倍に跳ね上がるぞ!」
「家の中がさらさらで涼しい! 息をするのがこんなに気持ちいいなんて……!」
「エアコンもないのに、常に新鮮で快適な温度の空気が流れてくる……!」
エルディニア聖王国の最高峰を誇る魔法都市が、タクミの24時間全熱交換換気DIYによって、劇的なビフォーアフターを遂げた瞬間だった。
「素晴らしい……! 魔導技術の最高峰が、タクミ様のDIYによって本当の『住み心地』を手に入れた……!」
アルヴィスが涙ぐみながら、真鍮の万年筆でその歴史的偉業をノートへ猛烈に書き留める。
「ふはは! 見ただろうエレミヤとやら! これが我が弟子タクミ殿のDIYの真骨頂なのだ!」
作業着姿の魔王バアルが、自分のことのように胸を張って高らかに笑い声をあげるのだった。
第60話をお読みいただきありがとうございました!
24時間換気システムと全熱交換ユニットの導入により、都市全体の「魔力酔い」と熱気問題が見事に解決されました。
次回第61話は、快適になったエル・グラードで迎える夜!
魔法技術都市の最高級ホテルすら上回る快適空間での宴と、さらなる高みを目指すタクミたちの次なる目的地への旅立ちを描きます! 引き続き応援よろしくお願いいたします!




