第57話:街道のポータブル薪ストーブと、熱々のダッチオーブンシチュー
第57話をお読みいただきありがとうございます!
オアシス都市『アル・シャハル』を後にし、次なる目的地である『魔法技術都市エル・グラード』へと向かう街道の途中。
夕暮れとともに冷え込んできた野営地で、タクミのDIYスキルが爆発! ポータブル薪ストーブとダッチオーブンで作る絶品の野営飯回をお届けします!
オアシス都市『アル・シャハル』の巨大噴水を復活させ、市民たちの温かい見送りを受けながら旅立ったタクミ一行は、中央領域へと続く緑豊かな街道を進んでいた。
日中は心地よい陽気だったが、日が傾き、標高が上がるにつれて周囲の空気が急速に冷え始めてくる。
「うぅ……だんだん寒くなってきたね。なんだか息が白くなってきたよ」
セナが砂漠用の軽装の上に上着を羽織り、両手を擦り合わせながらブルッと身を震わせた。
「そろそろ日没ですね。今日の野営地は、あそ子の木立の脇にしましょうか」
御者台から振り返ったタクミが、街道沿いの開けた平地を指さす。
馬車を停め、テントの設営に取り掛かる一同。だが、冷え込む夜の寒さを凌ぐには、ただの布切れのテントでは心もとない。
「よし、今夜は一段と冷え込みそうだし、身体の芯から温まれる『ポータブル薪ストーブ』を作っちゃいましょう!」
タクミの掛け声とともに、【万能資材目録】と【極限加工】が同時起動した!
周囲に落ちていた堅木を拾い集め、耐熱性の高い黒皮鉄板と組み合わせて、あっという間にスタイリッシュな箱型のストーブを組み上げる。前面には炎のゆらめきを楽しめる『耐熱ガラス窓』、上部には鍋を置けるフラットな天板、そして煙を綺麗に逃がす『軽量ステンレス煙突』をスルスルと組み立ててテントの天井から突き抜けさせた。
「はい、薪ストーブの設置完了です!」
タクミが内部に乾燥した小枝と薪をくべ、マッチで火を灯すと――ゴォォッと心地よい燃焼音が響き、あっという間にストーブの側面が赤みを帯びて周囲に柔らかい熱を放ち始めた。
「「「あ……あたたかい……っ!」」」
テントの中に一歩足を踏み入れたフィオナやセナ、アルヴィスたちが、ほっと息を吐きながらストーブの周りに集まる。
「さらに、このストーブの天板を使って……極上の野営飯を作ります!」
タクミが取り出したのは、厚手の鋳鉄製『ダッチオーブン』だ。
ゴロリと大きめに切った根菜と鶏肉、たっぷりのトマトとコンソメスープを放り込み、蓋をして薪ストーブの天板にドスンと載せる。
さらに、余った小麦粉をその場でこねて作った生地をスキレットで焼き上げ、香ばしい『焼き立て丸パン』を仕上げていく。
――ことこと、ぐつぐつ……。
薪ストーブの柔らかな赤外線と、ダッチオーブンの遠赤外線効果によって、食材の旨味が極限まで引き出されていく。テントの中には、バターとハーブ、そしてトマトシチューのたまらない香ばしい匂いが充満した。
「お待たせしました! 具だくさんトマトチキンシチューと、焼き立てパンです!」
木製のスープ皿にたっぷりと盛られたシチューが各自に手渡される。
ふうふうと息を吹きかけ、熱々のシチューを一口含んだフィオナの瞳が、驚きで見開かれた。
「――っ!? お肉が……口の中でホロホロとほどけて、野菜の甘みと旨味がスープにぎっしり溶け込んでいます……! この冷えた体に、温かいシチューが染み渡るぅ……!」
「パンにつけて食べると、さらに美味しいよ!」
「ほんとだ! 外はカリッ、中はモチモチのパンと、濃厚なシチューの相性が抜群すぎるよーっ!」
セナが夢中でパンをちぎってシチューに浸し、頬をリスのように膨らませてモグモグと平らげていく。
バランドも「ガハハ、野営でこんな極上の温かい飯が食えるとはな! ストーブの炎を見ながら飲む酒もまた格別じゃ!」と豪快に笑い声をあげた。
パチパチと薪の爆ぜる音と、温かな薪ストーブの熱。そして美味しい野営飯に囲まれた賑やかな夜。
ふと、テントの隙間から外の夜空を見上げると、その地平線の向こうには、星空とは異なる人工的な青白い魔導の光の柱――いよいよ近づいてきた『魔法技術都市エル・グラード』の巨大な魔導結界の光が、うっすらと夜空を染め始めているのだった。
第57話をお読みいただきありがとうございました!
冷え込む街道での野営にて、ポータブル薪ストーブとダッチオーブンシチューで心も体も温まるアウトドア回でした。
いよいよ次回第58話では、『魔法技術都市エル・グラード』に到着! 門前でのエリート魔術師たちとの遭遇、そして魔王バアルとアルヴィスによる最高のマウント&勘違い劇が幕を開けます! 引き続きお楽しみに!




