【閑話㉗】ガルド過去編③:男の背中と、継承される絆
【閑話】ガルド過去編の完結話をお届けします!
タクミが渡してくれたDIY道具で大斧を手入れし、不器用な手でフィオナのマントを縫い直すガルド。前国王への報告と、タクミが作る「居場所」を守り抜くという男の新たな誓いを描く、エモーショナルな完結編です!
静まり返った夜のログハウス。
ふかふかのソファで安らかな寝息を立てるフィオナの姿を確認し、ガルドは静かに外のデッキへと出た。
月明かりの下、焚き火の爆ぜる音だけが響く。
ガルドは腰を下ろすと、膝の上に置いた手元を見つめた。
刃こぼれし、血と泥に塗れた無残な大斧。
そして、その傍らに置かれているのは、先ほどタクミが『ガルドさん、これ使ってみてください。道具の手入れ用です』と無造作に手渡してくれた道具一式だった。
【万能資材目録】から出された『超硬度ダイヤモンド砥石』と『高耐久マジック補修テープ』、そして『極上メンテナンスオイル』。
「……ハッ、見たこともねえ上物じゃねえか。あの小僧、どんだけ底が知れねえんだ……」
ガルドは自嘲気味に笑うと、ゴツゴツとした不器用な手で砥石を握り締め、静かに大斧を研ぎ始めた。
シュッ……シュッ……。
静寂の中に響く、規則正しい刃研ぎの音。
ダイヤモンド砥石の圧倒的な研磨力によって、凶悪な魔獣の骨をも砕いて痛んだ刃先が、みるみるうちに鋭い銀色の輝きを取り戻していく。
補修テープを巻き直した柄は、まるで自分の手に吸い付くような抜群のグリップ力を発揮した。
「……よし。これなら、どんな奴が来ようがぶった斬れる」
完璧に蘇った大斧を前に、ガルドの視線は、もうひとつの『手入れ』へと向かった。
ログハウスに入る際、タクミが用意してくれた『高耐久補修糸』と大きな針。
ガルドは小さく息を吐くと、フィオナが羽織っていた破れかけたマントを手にとった。
太く硬い指で、不器用に針と糸を扱う。
何度も自分の指を刺しそうになりながら、それでも丁寧に、一針一針、ほつれた生地を縫い合わせていく。
「オヤジ……聞こえてるか」
夜空を見上げ、ガルドはポツリと呟いた。
「あの小僧は凄えよ。俺たちが血を流して戦ってきた絶望を、あっさりと温かい笑顔に変えやがった。……俺のこのごつい手じゃ作れねえ『居場所』を、あいつはいとも簡単に作ってみせたんだ」
最後の一針を縫い終え、糸を固く結ぶ。
不格好ではあるが、しっかりと補修されたマントを手で撫でながら、ガルドの目から熱いものが一筋流れた。
「俺はこれからも、叩き割ることしかできねえ男だ。だがな……あの小僧が作る『温かい日常』と、あんたの娘の笑顔だけは……この命が尽きるまで絶対に守り抜いてやる」
涙を拳で雑に拭うと、ガルドは静かに立ち上がり、蘇った大斧を背負い直した。
夜明けの光が、男の背中を力強く照らし出していく。
前国王との約束と、タクミがくれた新たな希望を胸に、大剣士ガルドの心は二度と折れることのない確かな鋼となったのだった。
【閑話㉗】までお読みいただきありがとうございました!
フィオナとガルド、それぞれの過去と絆を深掘りした【閑話】シリーズはこれにて一旦完結となります。
次回第57話からは、再び本編へと戻ります!
オアシス都市を旅立ち、『魔法技術都市エル・グラード』を目指すタクミ一行が緑豊かな街道で繰り広げる「ポータブル薪ストーブ&絶品野営飯DIY」をお届けします! 引き続き応援よろしくお願いいたします!




