【閑話㉕】ガルド過去編①:孤高の大斧と、王が遺した背中
ガルド視点の深掘りストーリーを全3話の【閑話】としてお届けします!
第1話となる【閑話㉕】は、ガルドがなぜ独り身を貫いてきたのかという悲しい過去と、前国王との深い絆、そしてフィオナを守ると誓った不器用な男の決意を描くエピソードです。
大剣士ガルドの右腕には、今も消えない大きな傷痕が残っている。
若かりし頃、荒くれ者の冒険者として名を馳せていたガルドにも、背中を任せ合える仲間や、未来を誓い合った女性がいた時期があった。
だが、魔獣の大群との死闘の中、自分の無力さゆえに目の前ですべてを失った。
血と泥に塗れた戦場で一人生き残ったあの日、ガルドは己に固く誓ったのだ。
『誰かを背負う覚悟もねえ奴が、家族だの仲間だのを持つんじゃねえ。俺の人生は、この大斧一本で叩き割り、一人で死んでいくためのものだ』と。
それ以来、家族も持たず、一族を構えることもなく、流浪の「孤高の大斧」として依頼をこなすだけの日々。
そんな荒んだ男の生き様を、一目で破って見せたのが——前国王だった。
『ハハハ! 相変わらず愛想のねえツラだな、ガルド! さあ飲め、今日の酒は美味いぞ!』
王城の密室。本来なら一介の冒険者が足を踏み入れられぬ場所で、前国王はガルドを「一人の男」として迎え、豪快に酒杯を交わした。
王宮の飾られた騎士たちには見えない、泥臭くもまっすぐなガルドの不器用な優しさと男気。それを見抜いていたからこそ、王はガルドを心から信頼していた。
『オヤジ……俺みてえな流浪の荒くれ者に、なんでそこまで良くしてくれるんだ?』
酔いに任せて尋ねたガルドに、前国王は少しだけ寂しそうな顔を浮かべ、遠くを見つめた。
『国という巨大な器を守るには、時に冷酷な政治が必要だ。……だがな、ガルド。余の自慢は、あの小さく心優しい娘……フィオナなのだ。あの子の無垢な一歩だけは、政治の毒に汚させたくない』
王はガルドの太い肩を叩き、静かに視線を合わせた。
『もし余やこの国に万一のことがあったら……ガルド、余の代わりにフィオナの『居場所』を守ってやってくれまいか。これは国王としてではなく、一人の父親としての頼みだ』
『……ケッ、柄じゃねえ言葉を吐きやがる。……まあ、酒の代金代わりに覚えておいてやるよ』
そっぽを向いて答えたガルド。だがその胸には、血の滲むような重い誓いが刻まれていた。
そして訪れた、あの凄惨な政変の夜。
裏切り者の刃に倒れた王の遺言を胸に、ガルドは大宮殿を突っ切り、冷たい石牢の扉を大斧で叩き割ったのだった。
【閑話㉕】をお読みいただきありがとうございました!
ただの護衛ではなく、前国王との確かな「男の約束」があったからこそ、ガルドは命を賭してフィオナを守り続けていました。
次回【閑話㉖】(ガルド過去編②)は、死の樹海で繰り広げられる地獄の逃避行と、「刃を振るうことしかできない自分の大きな手」に対するガルドの葛藤を描きます。引き続きお付き合いいただけますと幸いです!




