第8話:投石機を弾き返す、透明な膜と網目の柵
第8話をお読みいただきありがとうございます!
今回は、前回返り討ちにした悪徳貴族が懲りずに重兵器を連れて襲撃してくるお話です。
ホームセンターの「防犯フェンス」と「防犯フィルム」が、異世界の攻城兵器を過去のものにします。
「おのれぇぇぇ……! あんな怪しい館に、この私がコテンパンにされるなど……っ!」
数日後の昼下がり。
前回の夜襲で大恥をかいたバルカス子爵は、私財を投げ打ってかき集めた『私設軍隊二百名』と、巨大な『投石機』三台を率いて、再び樹海のログハウスへ押し寄せていた。
「ハハハ! いくら強力な魔法結界があろうと、物理的な巨大岩石の質量攻撃には耐えられまい! 跡形もなく叩き潰してくれるわ! 放てぇッ!」
ガコンッ! と鈍い音を立てて投石機が作動し、家ほどもある巨大な岩石が、放物線を描いてログハウスへと飛来した。
――ズドンッ!!
凄まじい衝撃音が樹海に響き渡る。
だが、岩石がログハウスに直撃することはなかった。
「な……なにぃぃぃッ!?」
バルカス子爵の目が点になる。
巨大な岩石は、ログハウスの敷地を囲むように設置された緑色のシンプルな金属フェンス(メッシュフェンス)に衝突した瞬間、まるで巨大なトランポリンに叩きつけられたかのように「びよ〜ん」と跳ね返り、そのまま子爵たちの陣地へと転がってきたのだ!
「ひぃぃっ!? か、岩石が跳ね返ってきたぞ!? 避けろぉぉッ!」
慌てふためく子爵軍。
彼らを驚愕させた緑の網目――それは、タクミが【極限加工】で敷地の周囲に張り巡らせた、ごく普通の『スチールメッシュフェンス』だった。
しなやかで強靭な構造が、物理的な衝撃を完璧に吸収・拡散・反発させたのである。
「ば、馬鹿な……! あの細い網目の柵はなんだ!? 投石機の衝撃を全てエネルギー変換して跳ね返したというのか……!?」
「ええい、ならば窓を狙え! あの建物の軟弱な硝子窓なら叩き割れるはずだ! 大型クロスボウ隊、シュート!」
子爵の命を受け、鉄の矢先を備えた巨大な矢が一斉に放たれ、ログハウスの二重サッシへと一直線に飛んでいく。
――バチィィィンッ!!
甲高い音が響いたが、窓ガラスは割れなかった。
それどころか、矢はガラスの表面にペタリと張り付くように弾かれ、虚しく地面へ落ちていく。
「な……ガラスが割れない……!? 傷一つついていないだと!?」
タクミが窓ガラスの内側に貼っていたのは、台風や空き巣対策用の『高透明・防犯用ガラスフィルム』だった。
【極限加工】によって分子レベルで窓に密着したフィルムは、鉄の矢の貫通力すら完璧に無効化していた。
パタン、とサッシが開き、中からマグカップを手にしたアルヴィスが顔を出した。
「ふむ……外で害虫が騒いでいると思えば、投石機ですか。タクミ様、あの窓に施された『透明な無敵被膜(防犯フィルム)』と、敷地を覆う『可動式衝撃拡散陣』……物理攻撃すら完全に無効化するとは、まさに鉄壁ですね」
「いやあ、やっぱり敷地境界にはフェンスがないと防犯上不安ですし、窓ガラスの割れ防止フィルムは基本ですからね」
タクミは縁側で、庭のフェンスを感心そうに眺めていた。
「おのれ……おのれぇぇぇッ! 全軍突撃ぃぃぃッ!」
半狂乱になったバルカス子爵が剣を抜いて突撃しようとした、その時――。
「――静かにしろと言っているだろうが、愚か者め」
ずしん、と地鳴りが響き、門前に立ちふさがったのは、スリッパを履いた剣聖ガルドと、神聖な気を放つ大聖女フィオナだった。
ガルドが大斧を一閃させると、真空波が子爵の率いていた投石機三台を一瞬で粉砕した。
「「「ひぃぁぁぁぁぁッ!!」」」
「神聖なる神殿を兵器で汚すとは、万死に値します」
フィオナの冷ややかな眼光と、ガルドの圧倒的な威圧に、子爵と軍隊はもはや戦意を完全に喪失。
「ご、ごめんなさぁぁぁいッ!」
彼らは武器も防具もすべて投げ出し、裸足同然で樹海の彼方へと逃げ去っていくのだった。
「……ふぅ。これでしばらくは静かになりそうですね。さ、みんなで昼食にしましょう。今日は自家製ピザですよ」
「「「ピザ……!?(新たな神の賜物……!)」」」
今日も今日とて、タクミの無自覚なDIY防犯によって、ログハウスの平和と居心地の良さは完璧に守られたのだった。
第8話をお読みいただきありがとうございました!
メッシュフェンスと防犯フィルムの超優秀な性能によって、異世界の攻城兵器すら手も足も出ずに全滅(退散)してしまいました。
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